僕のあまのじゃく#3
ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。
ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくブリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡
前田裕太(まえだ・ゆうた)
PROFILE:1992年8月25日、神奈川出身。グレープカンパニー所属のお笑い芸人ティモンディのツッコミ、ネタ作り担当。愛媛県の済美高校野球部に所属した同級生・高岸宏行が相方で、2015年1月に結成。2人の野球経験を活かした『ティモンディベースボールTV』の登録者数は23万超え。ar web連載『僕のあまのじゃく』では、フリースタイルエッセイを毎週お届け中。
テーマ:「プレゼント」
今年で29歳を迎えました。
ありがたいものでファンの方からのプレゼントが事務所に届いていたりもしていて、着たり食べたり使ったり、相変わらず読者諸兄姉含め応援してくれる人達には助けられています。
ありがとうございます、今後とも御支援お願いしますよ、本当に。
プレゼントでいえば、サンドウィッチマンの富澤さんから買ってもらったプレゼントが思い出に残っている。
富澤さんは粋な手法で後輩へプレゼントをすることがあって、同じ事務所の、わらふぢなるおのふじわらさんと富澤さんが一緒に買い物へ行った時も、「知り合いの若い奴に財布プレゼントしてあげたいんだけど、良い財布選んでくれよ」と言ってふじわらさんに良さげな財布を選んでもらった。
その後、その財布を富澤さんが購入して「これプレゼント」とふじわらさんに手渡したという逸話がある。
カッコ良すぎる。
先輩がお前に財布買ってやる、と言って買い物させては遠慮させてしまうと思っての配慮なのだろうけれど、後輩と買い物する時は躊躇いなくそっくりそのまま真似してやろうと思う。
(きっと私もカッコいい先輩と言われること間違い無いだろう。)
ちらつく僕の下心
そんな富澤さんと私が一緒に買い物するタイミングはふとやって来る。
サンドウィッチマンさんは毎年、全国単独ライブツアーをやっていて、私達は2017年から二年間、ライブの前説兼衣装の手伝いをさせてもらっていたのだけれど、あの時は、名古屋の公演を控えた富澤さんが「革ジャン買いたいからついてきて」と半ば強引に買い物に連れ出されたのだった。
おや、これはもしや、と脳裏によぎる。
さては、買い物したいと言いながら、ふじわらさんのパターンか??と脳裏には良からぬ考えが膨らんだ。
決して、何かを買ってもらう目的で金魚の糞が如くチョロチョロついて回っている訳では無いのだけれど、財政危機を迎えた氷河期ど真ん中の我が国にとって、支援物資を貰えるかもしれない環境は千載一遇の好機。
期待をするなという方が無理だった。
革ジャンのお店に行った後には、私にも買い物チャンスがもしや!と脳内ねぶた祭りが盛大に開催されていたのだった。
ただ、いざ革ジャンのお店へ行くと、素敵なジャケットが揃いすぎて、富澤さんは店内でどのジャケットを買うか長考することになる。
怪しい雲行き
あれ?公演の出番まであまり時間ないよ?と思ったけれど、富澤さんは革ジャンに夢中。
結局、これめちゃくちゃ素敵じゃん!ってときめいたジャケットも、富澤さんのずんぐりむっくり体型では、試着するとパツパツのソーセージみたいになってしまって、あれはあれで可愛かったのだけれど流石に身動きが一切とれないということで、時間だけ浪費して何も買わないことになった。
随分店内にいたようで、気がつくと、間も無く公演の時間が近づいてきてしまっていた。
もう時間もないし、このまま会場へ向かうか、という流れになり、まあ心のどこかで期待していた流れではなかったけれど、そもそも富澤さんの買い物に付き合うのが目的で革ジャンにパンパンに詰められた富澤さんが見れて楽しかったし良しとしよう、と醜くて浅ましい感情に折り合いをつけて会場へ向かった。
仕方ない。
すると、会場に向かって二人で歩いている途中で、富澤さんが唐突に「なんか欲しいものあるか?」と聞いてきた。
大逆転が起きた。
この入りの会話ってもう、そういうことでしょう。
諦めていた何かプレゼントを買ってもらえる機会が急に来た私は「なんでも嬉しいです!ただ、靴とか身に着けるものが欲しいです!」と咄嗟に答えたのだけれど、「じゃあ靴ならこれくらいあれば足りるだろ」と私に5万円を渡して「これで好きなもの買ってこい」と背中を押して富澤さんは会場へ入っていった。
一瞬の出来事だった。
そして、5万円という国家予算並みの大金を手に入れた私は、最強になった。
ふじわらさんに財布を買った時のような粋な演出なんてもうこの際、無くたって構わない。
我こそは、どのお店のどの商品も手に入る、この世の覇王。
自分から靴とか、と言ったものの、5万の予算では選択肢が無限にある。
何を買わせてもらうか、悩みに悩んだのだけれど、せっかく富澤さんに買ってもらうなら、靴は磨耗していつかぼろぼろになってしまう。
富澤さんから頂いた物を、今後も一生身に付けられるようなものがいいという考えに至った私は、最終的には4万9千円の腕時計を買った。
我ながら予算を最大限に使った良い買い物だった。
うんと良い時計を買って、富澤さんに報告すると、「随分良い靴買ったな」と洒落たことを言われたので、「大事に履きます」と返したら「ちょっと何言っているのかわからない」と言われた。
プライベートでもそれ言ってくれるんだ、と関心したのを覚えている。
少し生活に余裕が出てきた今、今度は私から富澤さんに何かプレゼントをしたいと思う。
「売れたら僕からも腕時計、プレゼントします!」と豪語したら「いや、俺腕時計つけないからいらない」と冷たくあしらわれたのだけれど、鶴の恩返しが如く、彼が喜ぶプレゼントをするのが目下の私の目標である。
ー完ー
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