僕のあまのじゃく#4

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

▷▷これまでのコラムはコチラから◁◁

ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくブリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:「お風呂」

私は、風呂場で叫ぶ。
仕事が終わって帰宅した後、熱いシャワーを頭に当てていると、自分のミスをした瞬間がフラッシュバックして反射的に「アアァアア!!!」と甲子園のサイレンに近い音が自分の口から流れる。1日を試合と捉えていて、今日も1日よく頑張った!とゲームセットの音としてサイレンが無意識に身体から出ているだけなのかもしれない。

それならばまだ頭がおかしいだけで片付くからいいのだけれど、今日一日で言われたこと、仕事での反省、不平不満、後悔、怒りなどの魑魅魍魎が「クソッタレ!!!」と自然と大きい声で出てしまっているように思う。
頭がおかしい上に精神衛生まで悪いときてる。

病んでいると自分で認めたくないので、この現象を感情エクスプロージョンと呼び、少しでも格好良い名前をつけて呼ぶようにしてる。
ちょっとはマシに感じるでしょう。
なんか必殺技っぽいし。

この現象が、単なる発作であるのは言うまでもない。
番組の雛壇に座っていてMCの人が全員にコメントを振っていく中、自分だけ一度も話を振られないままその日が終わると、私の呼ばれた意味とは・・・と悩むし、その収録も3度4度と続けば、どうすれば良いんだよ!もう!!!と感情を抱えきれず、風呂場で声に出してしまう。

「ヌァ!!」とやり切れない思いを口に出すも、風呂場の反響する環境では虚しく声がエコーするだけ。
これが自宅ならばいいのだけれど、実家に帰った時に声が出てしまった時には、目も当てられない。

「お湯は身も心もむき出しにする」

コンビで仕事に呼ばれたのに、打ち合わせでスタッフさんはずっとオレンジ色の大男に説明をして私とは一度も目も合わせてくれなかった時のことを思い出し、実家の風呂場で「オラァ!!!」と爆発した時には、風呂場から出ると両親が竹にでも火をつけたのかと疑われる目を向けてきた。
精神衛生を心配されるのが嫌で、叫んだのではなく爆竹に火をつけたことにしたのだけれど、それはそれで精神衛生を心配されるに至った。

他にも読者諸姉には想像もつかないようなアンフェアな扱いを多々受けてき続けているのだけれど、その場ではヘラヘラしてやり過ごし、心に澱がどれくらいたまったのか風呂場で分かることになる。
熱いお湯は身も心も剥き出しにするのだろう。
叫んだ後は、特に現実が何か変わる訳でもないので、切なさで胸がいっぱいになるのだけれど、スッキリする訳でもないし、モヤモヤはいくらでも残る。

同じように風呂場で感情エクスプロージョンを起こした読者諸兄姉いるかも知れない。
そんな諸君のために、解決策を提示しようと思う。
これは、最近私が発明した方法で、心がニッチもサッチも行かない時にする奥義である。

その名も、湯船逆立ち。
湯船に浸かり、身体が十分に温まったら、湯船から出て逆立ちをする。
1分ほど逆立ちのまま我慢したら、今度は湯船に入って休憩をする。
これを3セットするだけで、もうすっかりモヤモヤは無くなる。

余計なことを考えなくなるというより、何かを考える余裕すらなくなるのだ。
息が整って回復したあとは、何故か少しは心が軽くなっている。
高校時代、監督にサウナ室の中で筋トレをやらされた経験を元に考えたこの奥義。
特殊な訓練を得ている私だからできる技だが、医学的には危険極まりないだろうし多用するのはオススメしない。
なんなら、読者諸兄姉には、この奥義に手を出さないで穏やかな日常を過ごしてもらいたい。
あと、私が裸で風呂場で逆立ちになっていることはここだけの話にして、他言無用でお願いしたい。

ー完ー

これまでのコラムは▷コチラ◁からチェック!

前田裕太「私の目標は“彼”が喜ぶプレゼント」【僕のあまのじゃく#4】

ティモンディ・前田裕太「売れても変わらないようにするにはどうすれば?」クレバーすぎる頭のナカ