僕のあまのじゃく#8

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくブリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:「ハムスター」

ハムスターを口に入れたことがある。
正確に言うと、ケージから脱走したハムスターが、寝ている私の口の中に入ってきて、結果としてハムスターを食った状態になった訳だけれど、日頃の様子が可愛すぎて、食べちゃいたいっ!と思ったことがあったので、もう口に入れたということにしている。

ある夜、大学の教授が私の口に手をねじ込もうとしてくる夢を見て苦しんでいたら、実際はキンクマのきなこ君が喉の奥に向かって掘り進んできていて、吐き出して起きた。

無意識の中で噛まなくて良かった、という安堵感よりも先に、口の中がお日様の良い匂いがする、という感想が先にきたのが自分でもゾッとする。
普通はハムスターが口に入った事実に驚くだろうが、私は愛が故に、それを通り越して最初に食レポしてしまうのだ。

彼は、飼い主に似て頭が良く、きちんとトイレで用を足すし、ケージから脱走しても、部屋を徘徊することに飽きたら自分の部屋に戻ってくる。
ペットは飼い主に似るとは言うけれど、特段教えてもいないのに手間がかからない我が子に鼻高々。

本当に偉い。
僕と一緒だね。

ハムスターを飼うことは宿命だった

学生時代、生き物を飼おうと思い立って、まず最初にハムスターに手を出したのは、金銭的にハードルが低かった訳ではない。
私はハム太郎に育てられたのだ。

あれを見た人間が、ハムスターを飼いたいと思わない訳がない。
だから、大学で用賀のアパートに住むとすぐにハムスターを飼った。
それほど幼少期は流行っていたし、ハム太郎の何かしらのグッズをみんな持っていた。

小学生の友人は相槌が「へけ」になり、給食を食べながら「カジカジ」頭をかきながら「クシクシ」
匂いを嗅ぐ時なんて「クンカクンカ」と発していた。

普通に考えると、匂いを嗅ぎながらクンカクンカ、なんて言ってる奴怖すぎるけれど、どれもハム太郎に出てくるハムスター達、通称ハムちゃんズが言っていた言葉であって、それが可愛いしイケてるとされていた世の中だったのだ。

曲を出したら売れるし、ゲームなんて売れすぎて続編まで作られるし。
彼らが芸能界にいたら今頃、間違いなく大御所の立ち位置に君臨していただろうな、恐ろしい。
流行を発信しているのが齧歯類の生き物だというのも情けない話だけれど、あれだけ可愛い生き物なら仕方ない。

我々のような毛無しの裸動物は、厄介な生き物だ。
自分が傷つくと分かっていても、そうなる選択をすることもあるし、何より可愛げがない。

身体の収まりが良い空間を見つけて「へけっ!なんだか良い感じなのだ」と満足できるくらい欲を持たず、目の前の小さな幸せを噛みしめられるそんなハム太郎達のような、いや、ハム太郎になれると、もっと楽に生きれるのかもしれない。

今度はハムスターを飼うのではなく、ハムスターになれるよう心がけたいと思う。

ー完ー

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