僕のあまのじゃく#14

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

▷▷これまでのコラムはコチラから◁◁

ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくブリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:「犬」

関西に住む父方の祖父母が昔犬を飼っていた。
中型の雑種で、名前をロッキーといったけれど、シルベスタスタローンのような屈強さは微塵もなく、食っちゃ寝を繰り返して、怠惰にかまけた結果、子供用の自転車くらい大きくなっていた。
あの姿のロッキーを見たらきっとエイドリアンも悲しむに違いない。

当時、小学生だった私は如何なる生き物に対しても興味を強く持っていたものの、祖父母の愛犬であるロッキーは単に臭くてデカい獣という認識しかなかった。
庭に用意された犬小屋の中でぐうたらしていて、今の私が見たら大層羨ましく思えただろう。

おい、ロッキーと声をかけても対して反応もなく、祖父が声をかけると気怠そうに起き上がり「ヴヴヴ」と小声で呻きながら散歩に向かう。
この呻き声が子供の私にはとても怖かった。

身近な、例えば父や母が日頃から「ヴヴヴ」と呻き声をあげながら生活していたら耐性は付いていたかもしれないけれど、知り得る範囲で、そんな音を出しながら動くのはエンジンしかない。
無機物が発する音であって、知性のある生き物がそれを発していると思うと理解が出来ずに恐ろしかった。

生き物がそんな声をあげながら、それも獣の臭いを漂わせて歩いているのは恐怖の対象であって、当時の私からすると、決して愛でる生き物ではない。
しかも、嬉しそうでも嫌がるわけでもなく散歩するロッキーは理解できなかった。

これが僕の決定打


そんな苦手意識を持ったまま小学校4年生まで進級すると、私はまりなちゃんという女の子と仲良くなった。

当時の私が恋心を抱いていたかは覚えていないけれど、たまにまりなちゃんの自宅に招き入れてもらったことを覚えている。
女の子の家だ、というドキドキは当時の私にはなかったけれど、まりなちゃんの家は、室内で家を飼ってた。
しかも、ロッキーよりも大きいゴールデンレトリバー。

苦手だと思っていた犬が家の中にいるのを見てドキドキしていた。
あんな、得体の知れないエンジンを積んだ生き物と共同生活ができるなんて、彼女は勇者なのではないかと思ったのを覚えている。
ただ、この犬なら苦手が克服できるのではないだろうか。

ロッキーと違って、この犬は品性溢れるまりなちゃん一家が育てた訳だし、その犬は、ちゃんとしつけされていて排泄はちゃんとトイレでしていて知性も感じられたからだ。
この子なら大丈夫かもしれない、
そう思っていた矢先、その犬は私の身体を弄るように全身臭いを嗅いできて、手をベロベロ舐め回した。

理解できなかった。
初対面の相手の臭いを嗅ぐなんて、意図が汲めないし、見知らぬ人の手を舐めるなど気が触れたとしか思えない。
それか、余程の変態だろう。
結局、自分の理解ができないものは怖い。

犬ってそういうものだから、だなんて割り切れるほど大人でもなかった。
結局、その手もよだれ臭くなって、不快な思いしかしなかったし、苦手だという意識が変わることもなかった。

ということで、私は犬が未だに苦手だ。

いい歳こいて犬が苦手だなんて他人には言えないので、克服したいとも思っている。
これを読んだ、ベロベロと舐めたりしない適度な距離を保てる、理解のある犬がいらっしゃったら苦手克服の協力を願いたい。

ー完ー

これまでのコラムは▷コチラ◁からチェック!

ティモンディ前田裕太「それってホクロが多いだけじゃねえか…?」【僕のあまのじゃく #13】

ティモンディ・前田裕太「売れても変わらないようにするにはどうすれば?」クレバーすぎる頭のナカ