僕のあまのじゃく#43

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:遊園地

別に忙しい自慢をしたい大学生ではないのだけれど、小忙しい。
仕事のない日でも、結局何かしら作業をしなければならないので、結局カフェに篭ってノートに書き込んでいると1日が終わってしまう。
まだ店内に入れないのかよ、と席数の少ないラーメン屋に並ぶ客のように、細かいタスクが列をなして並んでしまっている。
そんなタスク達の列を整理しようとすると、カフェや自宅で作業をしているだけで休みは終わる。

こんな出不精ではいかん、と弾丸でどこかへ旅行へ行ったとしても、飲食店に入ってゆっくりしてしまうと、結局そこでノートやパソコンを広げて作業してしまう。
要するに、どこにいても頭の片隅には仕事があって、少し身を持て余すような時間があると、仕事について考えてしまうのだ。
これは恋だ。
それも儚い恋。

仕事はなかなかこっちを向いて微笑んでくれないので、いつも想いを寄せるだけの片思いの恋だけれど、いつか両思いになって、仕事と実を結べられれば良いなあと思う。
ただ、今の段階では、懇ろな関係になれるにはまだ程遠い。
そんな見向きもしてくれないお仕事ちゃんのことが常に頭の中にあるのはしんどいし、これからも追い続けるためには、時折お仕事ちゃんのことは忘れて、タスクを投擲して遊ぶことも必要なのだと思う。

その点、遊園地は良い。
遊園地に行っている時は、日常の大抵を忘れることができる。
きっと今、遊園地に行ったら、仕事のことなんて何も考えずに楽しめるだろう。

私にもそんな時代があった

昔、毎日のように遊園地に通って、日常を忘れながら過ごしていた時期があった。
あの時は、精神衛生が非常に良かったのを覚えている。
大学生の時、付き合っていた彼女の誕生日プレゼントで、ディズニーランドの年間パスポートを買って、贈与したのだ。
値が張るのに、我ながら頑張った。
加えて、自分の分の年パスも買って、これで二人で気軽にディズニーランドへ行こう、となけなしの預金をカラカラになるまで絞りだして買ったのだけれど、年パスのプレゼントを彼女に渡した二週間後くらいに、別れてしまった。

何故別れるに至ったのか、きっかけは覚えていない。
ただ、手元には、一緒にいくはずだった有効期限がほぼ一年ある年パス、一枚のみが残った。
あんな高いプレゼント、しなければ良かったと幾度思っただろうか。
そこからというもの、私は元を取るように、毎日のように単身でディズニーランドに通った。
大学へ行き、講義が終わるとランドへ行き、特に乗り物にも乗ることなく、ベンチに座って本を読む。
そんな毎日を過ごしていた。
本を読んだり、マーメイドラグーンの中で寝たりして帰るだけなのだけれど、不思議なことに、ランド内で過ごしている時間は、なんだかゆっくりに感じて、まるで、自分が海外で有意義に時間を過ごす、余裕のある大人のように思えた。

遊園地が醸し出す、陽気なエネルギーのようなものを周囲に感じて、非日常の中にいるように思えたのだろう。
周囲がせっせと乗り物の列に並んでいる横で、我関せずと紅茶を啜って本を読む贅沢感と、優越感もあったのかもしれない。
必死こいて乗り物に並んじゃって、なんて典型的な嫌な奴の思考になっていたのかもしれないけれど、独り身で毎日のようにディズニーに通う悲しい男はそれくらい思っていても悪くないだろう。
私の中では、遊園地は、もちろん乗り物を楽しむ場でもあるのだけれど、非日常の時間をゆっくり楽しむ場所なのだ。
常に仕事のことばかり考えてしまう私と同じような悩める子羊がいれば、ディズニーランドへ行って、ただぼーっとするのをおすすめしたい。

ー完ー

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