僕のあまのじゃく#44
ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。
ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡
前田裕太(まえだ・ゆうた)
PROFILE:1992年8月25日、神奈川出身。グレープカンパニー所属のお笑い芸人ティモンディのツッコミ、ネタ作り担当。愛媛県の済美高校野球部に所属した同級生・高岸宏行が相方で、2015年1月に結成。2人の野球経験を活かした『ティモンディベースボールTV』の登録者数は23万超え。ar web連載『僕のあまのじゃく』では、フリースタイルエッセイを毎週お届け中。
テーマ:祝日
芸人の仕事をしていると、世の中から感覚が離れていってしまう。
生活リズムなんてものはないし、曜日感覚もどんどん無くなってしまう。
テレビに出させてもらうようになって、仕事をいくらか貰えるようになってからは、営業なんてのは、基本的に休日に開催されることが多いので、休日こそ働く日だったりする。
だから、比較的世間の認識としてある、土日が休みという感覚も我々には一切ないし、祝日があっても関係のない日常を送っている。
何か国民が祝うべき日がまとまって、ゴールデンウィークだなんだ、と世間が賑わう連休などあっても無縁。
きっと、会社員の人なんてのは、有給を利用してまとまった休みをとって、結構前から計画して旅行なんてしたりするんだろうなあ。
いいなあ。
私も謳歌してみたい。
思えば、昔から祝日は楽しめたことがない。
小学3年生の頃から始めた野球のせいで、土日は野球をしていた記憶しかないし、祝日があったとしても、土日に準じて白球を追っていた。
野球好きすぎるだろ。
まだ幼いんだから、他にも色々と経験しておきなさい!と当時の、工藤公康選手に心を奪われていた前田くんに言ってあげたい。
あと、君の憧れの、その工藤選手はソフトバンクの監督になるよ、ってのもついでに伝えてあげよう。
何を言ったところで、当時の私は変なおじさんだなあ、と思って相手にしないだろうけれど。
中学生に上がりクラブチームに入ると、祝日と相まって3連休なんてあった日には、ほぼ合宿のような練習体制になっていく。
普段の土日の練習よりもキツくなるから、祝日はなんなら忌むべき存在となっていた。
高校になると、ほぼ一年中練習に変わり、もはや祝日は自分とは関係ないイベントとなった。
周囲の子たちは、祝日も加えた連休で「実家に帰ったけれど、帰省ラッシュで混み合ってた」だの、「USJで2時間並んだ」だの、文句を口にしていたけれど、そんなのも祝日の風物詩だろうが、それ込みで満喫しろよ!と怒っていたのを覚えている。
祝日を休日として満喫して、謳歌している人を羨ましいなあ、と思っていた。
誰のおかげで謳歌できるのか
ただ、そんな無縁の祝日という存在だからこそ、あまり考えてはこなかったのだけれど、ふと思う。
その祝日を皆が楽しく祝日に遊べているのは、祝日に働いている人のおかげではないだろうか。
祝日が、祝日たらしめている要因は、その裏で、汗水流して働いてくれている、祝日が祝日ではない人たちの活躍があるからなのだ。
世間一般の祝日を祝日として楽しめている人の裏に、その日、休まずにもてなしてくれている人がいる。
それを、自覚した上で祝日を楽しんでいる人は一体どれくらいいるだろうか。
祝日に働いている人の口から「俺たちのおかげで祝日が充実しているんだ!わきまえろ!」と声を上げているところを、私は見たことがない。
そんな健気に支えている存在がいるのだ。
前田よ、何をお前は、祝日に楽しんでいる人にばかり目を向けて羨んでいるのだ。
ロケで、他の出演者達にスポットライトを当てるだけの仕事がある。
彼らがそのロケ現場で、楽しんだり、謳歌しやすいように整える仕事は、それを見て評価する人はほぼいないし、
私の身の回りでもいない。
別にそれに対して嘆く訳ではないのだけれど、私のような、そんな仕事をしている人間は、真っ先に、その祝日を楽しませてくれている人たちの存在を賞賛すべきではないか。
何を、スポットライトが当たる側を羨んでいるのか。
もっと先に、周りのために尽くしている人達の方向に目を向けるべきだった。
しかも、今日も今日まで、そんなことを考えるにも至らなかった。
情けない。
これからは、祝日というものは「休める日である。だから、休めない立場から見たら羨ましい」と思うのではなく。
「祝日を休めない人たちが、頑張って支えてくれる」と思うようにしようと思う。
全ての、祝日に働く人たちに、光あれ。
ー完ー
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