青戸しのさん連載「今日は乙女休みます。」第二回のテーマは生理の憂鬱

女の子の憂鬱に寄り添う、をテーマに始まったarweb の新コラム連載「今日は乙女休みます。」モデルや文筆家として、Z世代に大人気の青戸しのさんが紡ぎ出す言葉に注目です!

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「生理の症状は見えにくい」女の子と男の子、分けられた授業の先は?

常々思うのだが、なぜ生理の症状はこんなにも”見えにくい”のだろうか。
「どうせなら口とか鼻から出血してくれよ…」と何度トイレの中で神様を恨んだことか。
そしたら優先席に座って、誰かに嫌な顔をされることも無くなるのに。
今日は気兼ねなくお休みできるのに。

小学校四年生の頃、男子は校庭でドッチボールをして、女子だけが教室に残された日があった。
運動嫌いだった当時の私は「女の子でよかった〜」と、呑気に先生の話を聞いていたけど、
今になって思う。「男子、ドッチボールしてる場合じゃないぞ!!」
(勘違いしないで欲しいのですが、決してドッチボールをしていた男の子を悪く言いたい訳では無いのです。)

どうしてこんなに重要な授業が女の子だけで行われているのだろう。
私達は将来、女の子だけの世界で生きていく訳では無い。
理解ある環境を作るには、何よりも知識が必要なのに。

厳密に言えば、知識の先にある優しさをほんの少し期待している。

今日は乙女休みます。/青戸しの

”月に三日同じ周期”で休む同級生、女同士ですら分かり合えないこと

学生の頃、月に三日決まった周期で部活を休む同級生がいた。
理由は明かされなかったけど、みんなきちんと理解していたと思う。

ある日のミーティングで女性の先輩が言った。「欠席が多いのが気になります、止むを得ない理由なら仕方ないけど、もう少し対策してください」

シン、と静まり返った教室の冷たい空気が今でも忘れられない。
神様、どうして生理痛には個人差があるのですか…皆、平等であれば争いなど起きないのに…。
あの場で先輩に何か言い返せる訳もなく、心の中で行くあてのない怒りを神にぶつけてみる。
同じ女性同士でも分かり合えないことはあるのだと痛感した。

ミーティングが終わっても、同級生は一人、教室に残っていた。

困ったことに、私は彼女と特別仲が良い訳ではなかった。
過去に何度か遊びの誘いを申し込んでみたものの、結果は全敗。「一人が好きなのかな?」とそれ以降、無理に話しかけるのをやめていた。
そっとしておくべきか、声をかけるか、しばらく悩んだ末に、
「気にすることないよ」と、出来る限り神妙な面持ちで声をかけてみた。
顔を上げた彼女はケロッとした顔で「気にしてないよ」と言った。

「え、本当に?」
思わず間抜けな声が出てしまった。
強がっている様にも見えない。
「こっちはもう何年も生理と付き合ってきてるのに、知り合って一年にもならない人に対策どうこう言われてもね」と彼女は笑った。
間違いない。

今日は乙女休みます。/青戸しの

月に1度、私たちは弱くなる

一週間の総出血量は二十〜百四十mlが正常とされている。

分かりやすく例えるなら紙コップ一杯分の血が毎月、失われているのだ。
もちろん、もっと出血量の多い人もいるし、腹痛、頭痛、腰痛、吐き気、眠気、その他様々な症状が容赦なく襲いかかってくる。

“やむを得ない理由”と呼ぶには十分すぎる苦痛だ。
かく言う私も、現代科学に助けられて、何とか普段通りの生活を保っているが、体に合う薬がなかなか見つからない人もいるだろう。
理解出来ないのは仕方がないけど、せめて口を出さない優しさを持っていてほしい。
それでも同じ悩みを抱えてる人間はここにもいるから安心して、と伝えたくて「駅まで送って行こうか?」と聞いてみたが、「あ、彼氏が迎えにきてくれるから大丈夫」と笑顔で一蹴された。(今思い出しても、なぜかちょっと悔しい)

あの日から、私たちは部活以外でも連絡を取り合うようになって、正式に友人と呼べる仲になった。
彼女は今でも、当時の彼氏とお付き合いを続けている。顔を合わせる度に、優しくて誠実な人だと惚気けてくるから、交際は順調なのだろう。生理は相変わらず辛いようだが、彼がそばにいてくれるなら、私が心配することは何もない。
そういえば、あの先輩は元気にしているだろうか。

月に一度、私達は弱くなる。
体と心のコントロールが難しくなって、自分のことさえ上手に愛せなくなる。
症状は人それぞれだけど、身近な誰かに迷惑をかけてしまう可能性は、きっと誰にでもある。
今のご時世、他人の生理に口を出すタチの悪い人間に出くわすことは、そう無いとは思う。
でも、もし運悪く遭遇してしまった場合は、積極的に避けて通りたい。

今日は乙女休みます。/青戸しの

生理で辛い時、傷ついてまで理解してもらう必要はない

私の体を理解出来るのは私だけ。

大きな声をあげて、傷ついてまで、誰かに理解してもらう必要は無い。
自分の機嫌は自分でとるし、症状にあった対処法や休み方がある。
そう割り切って生きていく上で、信頼できる人にだけ、どんな風に生理を乗り切っているのか、丁寧に説明したらいい。
彼らが優しさを分けてくれたのなら、残りの三週間、存分に優しさで返せばいい。
不安にならなくても大丈夫、あなたの日頃の努力は、そう簡単に失われないから。

今日は乙女休みます。/青戸しの

Text:青戸しの(Instagram:@aotoshino_02)