僕のあまのじゃく#51
ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。
ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡
前田裕太(まえだ・ゆうた)
PROFILE:1992年8月25日、神奈川出身。グレープカンパニー所属のお笑い芸人ティモンディのツッコミ、ネタ作り担当。愛媛県の済美高校野球部に所属した同級生・高岸宏行が相方で、2015年1月に結成。2人の野球経験を活かした『ティモンディベースボールTV』の登録者数は23万超え。ar web連載『僕のあまのじゃく』では、フリースタイルエッセイを毎週お届け中。
テーマ:猫
去年、猫を迎え入れた。
長年飼いたいと思っていながらも、なかなかそんな機会がなかったのだけれど、2021年12月25日に一匹目の猫を迎え入れた。
29年目の人生にして、念願の猫である。
また今年になってもう一匹、猫を迎え入れることになり、それによって生活様式がガラッと変わった。
掃除なんて小まめにするような性格ではなかったのだけれど、猫の手術をする理由の大半が誤飲であることから、何か家に猫が飲み込めてしまうようなものが落ちていては大事だと、1日に1回は掃除機をかけるようになった。
これは、私にとって大きな変化だ。
革命と言っても過言ではない。
その程度の清掃は当たり前だと思う人間もいるかもしれないけれど、以前の私であったら、週に一度掃除機なんかかけたら良い方だし、自分が使いやすいようにと、小物類なんかはテーブルに大体は出しっぱなしだった。
普通に生活していたら物で部屋が溢れかえってしまうのだ。
何故か片付けられない、というのは、自分でも理由が分かっていなくて、前田七不思議の一つとして認定していた。
それが、30歳を目前にして、使ったものは、しまっていた場所に戻す、という果てない労力のいる偉業を、その都度こなせるように成長したのだ。
通常の大人であれば然るべき対応をようやく出来るようになったという表現は妥当ではない。
苦手なものを克服した人間には、それ相応の表現をするべきなのだ。
子供でも出来ることであったとしても、私にとっては、歴史的快挙である。
偉すぎる。
凄すぎてひく。
これは、ひとえに猫が誤飲してしまうという事実のおかげである。
人は自分のためにはなかなか行動できないけれど、愛猫のためなら労力をかけることは厭わないのかもしれない。
それでも、猫達は、なんとかして仕舞ってある小物を引っ張り出してきて、オモチャにして遊んだ後に床に投げ捨ている。
あれだけ、小物類は棚や引き出しにしまっていたのに。
特に私のお気に入りの万年筆には熱心に執着していて、私が書き物をしていると、ジャーキーのような味がするかの如く、キャップの部分を噛んだり舐めたりしてこようとする。
邪魔で仕方ないのだけれど、猫達はなんだか嬉しそうなので、ノートを書き進められず、ペン先を乾かしてしまったことが幾度あったことか。
ここ最近は、お気に入りの万年筆を持ってくるだけで、オモチャを持ってきてくれたと勘違いする始末になってしまったので、別の万年筆を使うようになってしまった。
少し日常に弊害が出ているけれど、まあこれくらいなら良しとしよう。
僕には家に帰る理由ができた
特に癒しがあるのが夜だ。
基本的に、寝る体制を整えて、ベッドルームへ行くと、二匹ともついてくる。
長女のノエルは、私の横の枕を使って寝て、次男のリオンは、自由気ままに私の胸の上に腰を降ろしたり、私の喉をふみふみして苦しめたり、私の腕を枕にして寝ているかと思えば、ベッドから降りて、窓際で寝ていたりもする。
その度に、家に帰る理由が出来て良かった、と思う。
今までは、仕事をして、カフェで作業をして、寝るために家に帰る、という流れだったから、究極のところ、ホテル暮らしで、次のロケ先の近くのホテルに泊まり続けても別に弊害はなくて、わざわざ同じ場所を借りて、そこに帰る意味がなかった。
けれど、家で作業をしたり、家の中で時間を過ごす理由が、猫のおかげで出来た。
家に帰りたい、と思うようになったのだ。
一緒にベッドの上で時間を過ごしていると、我が家には自分以外の生き物が存在していて、彼らは、私の庇護の下にあり、責任を持って彼らの健やかな日々を守らねばならないと感じる。
出したものをしまう、という私生活にも良い影響を与えるし、家に帰る理由にもなる。
まだ半年ちょっとの共同生活だけれど、きっと、まだまだこれから先、猫は私に影響を与え続けるのだろう。
あと何年一緒に過ごせるか分からないけれど、彼らに影響を与えられて変化していく自分が楽しみだ。
ー完ー
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