僕のあまのじゃく#58

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:引っ越し

衣食住って言葉があるように、
どうやら人間は住む場所というのはとても重要な要素らしい。

思い返してみると、
確かに私の人生において居住地というのは、
その時の人間性を形成する大きな要因となっているように思える。

高校時代は、親元を離れて愛媛の土地に行ったけれど、
その時の寮生活というのは、自分をとても成長してくれるものだった。

自分で自分のことをしなければならないという環境は、
当時、反抗期バリバリだった中学生の私を、
少なくとも平均的な男子高校生くらいまでに精神年齢を引き上げてくれた。

その中でも何が印象的だったかといえば、
居住地を実家から寮に移し替える時に、
引越しの際に何を持って行って、何を実家においていくか、ということが挙げられる。

引越し先に持って行けるものは限りがある。

そこまで広くない、大体3畳ほどのスペースに、
自分の実家の部屋に置いてあるもの全ては持っていけない。

当時の私は、何を持って行ったら自分の生活が豊かになるのか分かっていなかったので、
家にあるものをほとんど置いて、愛媛の土地へ単身向かった。

これは、本当に愚策だった。

右も左も分からない土地に行ったのだけれど、
その時に自分を支えてくれるものは、
自分を支えたルーツの物だったり、
アイデンティティを形成してきた物だったりする。

辛い時に、その思い入れがあるものを見て、
地元や実家を思い出して、奮起する。

引越しの際に全てを置いてきた私は、
本当に辛い時、部屋には、その土地で買った新しい物ばかりで、
支えてくれるものがなくて、何度も心が折れそうになった。

それからというもの、私は引越しをする際、
断捨離をするのだけれど、
必ず、自分のルーツになるようなものだったり、
思い出ができて思い入れのある物を、
いくらかさばったとしても、
実家には送らずに次の居住地に持っていくようにしている。

例えば、ノート。
日記のように高校時代からつけている物だったり、
今はネタを書いたものだったり、
その数を数えたら数十冊になって、
正直、かさばるし、
捨てたくはないので実家に送ってしまいたいけれど、
高校時代の経験を経て、
どれだけ邪魔になろうが、次の居住地に持っていくようにしている。

ボロボロになった、高校時代のノート。

その中には、当時、絶対プロ野球選手になる!と意気込んで、
それでも夢破れた自分の思いが綴られていたりするのだけれど、
本当に心が折れそうな時、
それを見返すと、自分のルーツが見えてくる。

昔の自分、めちゃくちゃ頑張ってるじゃん!
16歳の頃の自分がこれだけ悩んで、それでも折れずに頑張ってるんだから、
30歳の自分が、何をこんなことで折れかかってるんだ。
16歳の頃の自分が今の私を見たら、幻滅するぞ!と思い、
なんとかまた頑張る熱量を取り戻すことができる。

引越しをする時には、
どうしても、必要なものを次の帰臥寝食の場に持っていき、
思い出はあって、捨てたくはないけれど、
かさばりそうなものは、実家に送りがちだけれど、
読者諸兄姉も、その自分を形作ったものは、
引越しの際に次の居住地に持っていくことをお勧めする。

本当に辛い時、自分を支えてくれるのは、
過去の出来事だったり、過去の自分の言葉だったりするのだ。