僕のあまのじゃく#68

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:記念日

記念日は呪いだ。

付き合って何ヶ月記念日とかそのご令嬢と懇ろな関係になっている間はずっと覚えていなければならないでしょう。

お互い気にしないのであればいいけれど、片方が気にするのであれば、もう長い間気にし続けなければならない。

大学生の頃に懇ろな関係になったご令嬢に「今日なんの日だか覚えてる?」と問われ、幾度となく肝を冷やし、急いでその日の夜に会食をする飲食店の予約をしたことを覚えている。

本当に勘弁して欲しかった。

約束事なんて少なければ少ない方が、違えることもなくなるのに。

覚えていること自体がそもそも億劫なのに、さも”僕もこの日を大切に思ってました”というポーズをとるのに必死だった。
あの時の私は主演男優賞並みの演技を披露して、ギリギリ乗り切っていたのだけれど、何故そこまで頑張らなければいけなかったのだろうか。

相手は、月単位で祝いたいという相手だったので、仕方なくその姿勢に合わせていたのだけれど、忘れたら紛争の元になるようなものを、わざわざ自ら作り出す理由が未だに分からない。

忘れた時は普通に怒られたし。

なんだあれ。
いらねぇだろ。

世の中の記念日だからといって乳繰り合っている連中は、どうせ「付き合って○ヶ月だね、チュ」なんて目も当てられないやりとりをしたいが為に、互いに、その日は必ず相手との時間を作るという枷をつけ合ってるだけだろ。

長い安定した付き合いをしていこうとする人間の思考とは思えない。
荒波を立てる原因でしかないのに。

枷だと思っている時点で、そのご令嬢とは上手くいく訳ないし上手くいかなかったのだけれど、そんな機会がなければ浮かれたやりとりすらできないなんて、健全な関係とは言えない。
いつも乳繰り合っていろよ。

そのご令嬢から「知ってた?、出会って○○○日記念なんだよ」だなんて細かくアニバーサリーを祝ってくれという圧をかけられたこともあるけれど、こうなってくるともう信じられない。
なんなこと言い出したら、出会ってから毎日、毎秒祝う羽目になるだろう。
リヴァプールFCのサッカーじゃないんだから、そんなプレッシャーをかけられたら耐えられない。

いや、私が知らないだけで祝ってるカップルもいるのかもしれない。
ゾッとする。

そんな連中であっても、大体の結婚したパートナー達は、結婚記念日を祝うのみで、付き合った記念日をお祝いしなくなる。

私がストレスを抱えながら、しかも怒られながら祝うことを強要されていた記念日なんてものは、結婚してしまえば大切にされなくなる、その程度のものなのだ。

もう百歩譲って、祝うなら一年記念日だけでいい。

昔は、相手が望むならそれに合わせていたけれど、もうそういうことを求めない相手ではないと無理になってきてしまっている。

歳をとってしまったからなのだろうか分からないけれど、キャピキャピとした恋愛は難しいし最早記念日を楽しむ自信はない。
読者諸兄姉には万が一、自分のパートナーが記念日を忘れていたのであれば寛容であって欲しいと願う。

ー完ー

ティモンディ前田裕太「日没は1日のピリオド」【僕のあまのじゃく#67】

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