僕のあまのじゃく#71

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:大掃除

私は掃除が苦手だ。

特に誰かを家に招待することもないから、
そうなると汚いからといって誰かに迷惑をかけることもないし、別に良いでしょう。

他人に迷惑をかけなければいい、という、
まあ日本人らしい理屈からすると、
一人暮らしの部屋が汚くとも誰からも咎められる謂れは無い。

お片付けしなさい!と子供の頃によく言われて、
仕方なくレゴブロックやポケモンの指人形を箱にしまっていたけれど、
同居する人がいなければ、こんな手間も省けるのになあ、と、
幼心ながら思っていた。

普段使うものが手に取りやすい状態にあって、またすぐに使うのに、
わざわざまた取り出すのに一手間かかる引き出しの中に収納する必要性ってあるのかい。

こんな自分の性格の欠落に対して正当化し続けた結果、
案の定、今までの私の家は、物で溢れかえってしまっていた。

散らかった部屋で小さくなって、一人であれやこれや思考を巡らせながら甘い物を食べているときは、
自分がDEATH NOTEのLになったような気さえして、むしろ整理整頓されている部屋で過ごすよりも良かった。

家でのチョコレートの食べ方などはLの食べ方を真似したりしたこともあったし。

その状態でネタを書いたり物事を考えている時は、
俺はLだ、天才だ、と根拠のない自信に満ち溢れることができたのだけれど、
Lは途中で殺されてしまうキャラクターだったと気付いてからは、
自分とLを重ねるのを途中でやめたけれど。

そんな玩具箱をひっくり返したような部屋の中での生活も、猫を飼うことで終止符が打たれる。

猫が病院にお世話になる大半の理由が、異物の誤飲であって、
その異物は飼い主の過失によって、猫の手に届く場所に落ちていたりすることが多いらしかった。

我が子達には、自分の過失で苦しい思いはして欲しくない。

猫側は、そんな私の思いに関係なく、
植木鉢を倒したり、出汁を取り終わったパックをゴミ箱から漁り出して中身をベッドの上にぶちまけたりして
散々散らかしたりするけれど、
飼い主サイドとしては、猫には安全に生活してもらうため、
限りなく自分のできる限界値の頻度で掃除をするようになった。

その程度のことは当たり前だという輩もいるかもしれないが、
苦手とかの次元ではなく、やる必要性すら感じなかったことを
定期的にやるようになった、という努力と変化を誉めてもらいたい。

お片付けできるようになった私に、惜しみない拍手を。

みんな、ありがとう。

そして、猫を二匹迎え入れて、
こまめに隅々まで掃除をするようになってから、
この年の瀬が近づいてきて、あることに気づく。

年末恒例の、大掃除をする必要が、もうほとんどないのだ。

掃除機は一日二回は必ずかけるし、これに加えてコロコロも部屋中する。
洗濯機もこまめに回すし、食器も溜めずに洗う。
水回りだって、猫が万が一舐めてもなるべく平気なように清潔に保っている。

今までは、一年に一度、大掃除をして、
なんなら、まともな掃除はその一回しかしていなかったくらいなのだけれど、
綺麗になった部屋で新年を迎える、という大イベントだったのに、
もう常に新年を迎える準備ができている状態になっている。

これでは、もうすぐ年を越すなあ、と実感できるイベントが無くなってしまったのではないか。

綺麗な部屋になって、ようやく年の瀬を感じていたのに。

大問題だ。

年に数回しかないから神宮の花火大会には人が集まるわけで、
年中四六時中打ち上がってる花火を見続けていたら、もはや風情を感じもしなくなってしまうだろう。
花火の場合だと騒音で渋谷区の住民が誰一人いなくなるだろうけれど。

私の場合は、猫のためだとはいえ、あまりにも徹底的に毎日大掃除に近い掃除をやりすぎてしまい、年末感を喪失してしまったのだ。

まあ掃除をするのは悪いことではないのだけれど。

でも、部屋の大掃除はきちんとできているけれど、
仕事やなんだ、でごちゃごちゃに散らかった、心の大掃除はまるで出来ていない。

ゴミ屋敷だ。

腐ったゴミから使わなくなった廃品など、もう心の中は有象無象の坩堝。

その悍ましさは目を向けられないほどだったけれど、
物理的に部屋は綺麗になっているので、
今年の年末は、少し心の大掃除にも取り掛かってみたいと思う。

年越しまでには心の大掃除は終わりそうにないなあ。

ー完ー

ティモンディ前田裕太「音楽と記憶」【僕のあまのじゃく#70】

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