僕のあまのじゃく#82

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:失敗

買い物でよく失敗をする。

漫画に関して言えば「あれ、新刊出てるじゃん」と言いながら既に買っていた巻を果てしなく買い続けている。
今まで何回、あ、買ってたわ、と家に帰って頭を抱えてきただろか。

今や我が本棚の一角に、間違えて重複して買った漫画たちが肩を寄せて集まっているスペースができてしまっている。
アオアシやヒロアカは既に何冊もダブっているものが手元にある。
買ったものくらい覚えておけよ、という話なのだけれど、なかなか治らない。

ただ、これだけ懲りないのも理由がある。
間違えて何冊も同じ本を購入してしまう度に。
その購入した金銭は、出版社と作者の身銭になるとを考えてしまうのだ。
普段から楽しませてもらっている出版業界に対して少しでも貢献できているのであれば、自身にとっての無用な出費だとしても、結果として意味があったのではないかと思い、単なる失敗なのに、なんなら良いことをしたとまで考えるに至ってしまう。

本を多く買うということは、どんどん本屋さんが少なくなってきている現状にストップをかける、尊き行動ではないだろうか。
本に関わる人たちが少しでも潤うように、今後も積極的に重複してでも本を買っていかなければならない。
この買ったことを忘れて同じものを買ってしまう病は、今度も治りそうにないな。

インターネットで衣服を買った時にも、多く失敗をしてしまう。
私の身長は175センチなのだけれど、身体のサイズ感は一般的な175センチの人間の横幅と異なる。
高校時代に不必要なまでに鍛えた筋肉が、今やお洒落をしようとした時にシルエットを崩す負の遺産と化しているのだ。

我が肉体は、平成初期の箱物事業がよろしく、不必要になってしまった。
だから、175センチの人はLサイズが目安ですと表記してあっても、それを安直に信じて購入してしまうと、肩が入らないなんてことが多くある。
入ったとしても、肩だけパツパツ。
お前はまともな175センチではないんだよ、と毎回悲しい現実を突きつけられてしまう。

鍛えすぎなければよかった。
肉体の錬磨をしすぎると、のちにお洒落ができなくなることを、義務教育で教えるべきだ。
パツパツなのであれば、肩に合わせて服を1サイズ大きいものにすれば良いではないか、という意見もあるだろう。
安直な考えすぎてため息が出る。
確かに、LLサイズのものにすれば、肩回りは楽になり余裕ができる。
ただ、球を投げることに特化した肩を育んでしまった肩を持つと、サイズを上げれば解決とはいかないのだ。
LLサイズになると、身長も180〜85センチの人たちを対象にしている服が多い。
そうなると、肩はサイズ感がちょうど良くても、次は腕の長さが足りなくなってしまうのだ。
この肩の大きさの人間であれば、腕の長さはもっとなければ不自然なのだろう。

不自然な身体なのか、私は。
だが、おかしなことに胴体の長さは然程違和感がない。
どうやら、胴の長さは180センチあって然るべきサイズの肉体をしているらしい。
これに関しては、筋トレをし過ぎてしまったことと何も因果関係がないので、一人で夜な夜な枕を涙で濡らしたいと思う。
兎に角、私の身体は不自然なサイズなのだ。
脚の太さに合わせれば185センチは身長がなければ辻褄が合わないし、脚の長さだけで言えば、不自然極まる脚周りの太さがある。
もうこの肉体を持ち合わせている以上、買い物をした時点で、失敗の確率が多くなるのは想像に難くないだろう。

大体の失敗というのは、その経験を経て、次は同じ轍を踏むまいと努力することで、より良い生活が送れるものだと聞いたことがある。
けれど、性格にも肉体的にも根本的に問題がある人間というのは、ひたすらに同じ過ちを繰り返すのだ。
そうして、失敗をすることが日常化し、失敗することに何も感じなくなる。

まさに今私が陥っている状態がそれであって、インターネットの衣服の買い物も、サイズ感が合ってラッキー、合わない前提で買い物をしている。
こうなると、もはや失敗は失敗ではないのではないだろうか。
間違えて当然。
失敗して当たり前。
だから、もはや落ち込みもしない。

果たして、それが幸せな人間の思考なのかと言われると疑問を抱かざるを得ないのだけれど、もう治らない自分の欠落した人間性は、付き合っていくしか方法はない。
これからも同じような失敗を続け、そして、失敗とは思わないように誤魔化しながら生きていこうと思う。

ー完ー

ティモンディ前田裕太「電車は社会の集合体」【僕のあまのじゃく#81】

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