僕のあまのじゃく#88

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:パーティー

私は友達が少ない。
だから、誕生日パーティーなどが開催されたこともない。
8月25日という夏休みど真ん中に人生をデビューしてから、家族以外にお祝いをしてもらった経験が極端に少ないのだ。
もう30回も誕生日が訪れたというのに、誰かに誕生日パーティーを開催してもらったことは片手で数えるくらいしかない。
悲しい男だ。

けれど、そもそもパーティーなんて開催する必要があるだろうか。
負け惜しみではない。
祝福された人数が全てはないのだ。
誰かを祝福する輪に参加できたとしても、自身が愛される人間である証明になる訳でもない。
繰り返し言えば言うほど負け惜しみ感が出るけれど、負け惜しみではない。

一度、仕事でお世話になったスタッフさんが、自身の誕生日会に私を誘ってきたことがあった。
誕生日というものを自分が自身をひっそりと祝うならまだしも、他人に自身の誕生日を祝う機会を自ら作って、祝わせるという傲慢さを”自分の誕生日会”という言葉そのものに感じて、異常なまでの自尊心にゾッとしたのだけれど、一度仕事でお世話になったという事実に目を瞑り参加することにした。
まあ今回だけはいいだろう、と。

実際、出席してみると私を除くと十人ほどがその誕生日会に集まって食事をしていたのだけれど、驚愕で腰が抜けそうになるくらいクソみたいな会だった。

まず、面識のない人間と顔を合わせることになったのだけれど、会う人会う人が死ぬほど退屈な人間達だった。
退屈だというと、お前はどれだけ高尚な人間なんだと思われるかもしれないけれど、読者諸兄姉が想像を絶するほどの軽薄で中身のないノリだけで生きている人間だったのだ。
ある者は、どれだけ自分が下品な遊び方をしているのかを武勇伝のように語り、麻布辺りが自分の庭だという下劣な話に付き合わされた。
またある者は、酒で自我を失い粗相をした体験談を面白話のように嬉々として語っていた。
加えて、私が存在を知らぬその場にいない人間の失敗談を、爆笑不可避であるテンションで話してくる。
低俗な人間ばかりだな、と辟易していた。
自身の自慢話に終始する人間がいたのもキツかった。
私も他人の歪んだ人間性を指摘できるほど立派な人間ではないけれど「俺○○と飲んだことがあるんだよね」だの「普段は○○と仕事してるから」と他人の褌で相撲をとることで、自身の価値を示そうとしている目も当てられない人間を見て、まだ自分は人としてマシな方だな、と実感できるほどだった。
有名人と飲んだからといって、お前が有能な訳ではないし、立派な人間であることの担保になる訳ねえだろ、とそのパーティーの間はずっと憤っていた。
もちろんそんなことは口にしないけれど、おそらく顔には出ていたに違いない。
そんな態度で示しても、自身を誇示するので精一杯な人間達ばかりだった。

こんな連中を引き連れている人間、碌な人間ではないな、と感じた。
あ、そうだった、この会を催したのは一度お世話になったスタッフさんだった。

類は友を呼ぶというけれど、私を呼んだスタッフさんの人間性が、周囲の人間を知ることで透けて見ることができた。
まともではない人間達に囲まれて祝われている人間が、まともな訳がない。

こういう人間とは、近い距離でいると同類に思われるし、二度と参加しないでおこう、と心に決めたのだった。

知らないけれど、パーティーって本来は人脈を構築する場所なのかも知れない。
だから、社会を生き抜くのが上手い人間であれば、こういう場でも分け隔てなく接して、また人の輪を広げて仕事につなげるのだろう。

けれど、いくら稼げる仕事を持っている人間だったしても、六本木でシャンパン飲んで騒いでいる連中とは仕事であってもあまり関わりたくない。
一緒に仕事をしていて心地良い人間性を持つ人達と仕事はしていきたいと思っている。
めちゃくちゃ甘い考えなのかもしれないけれど、まだ清濁を併せ呑めるほど器量のある人間ではないから、碌でもない人間の催すパーティーなんて二度と出ないと誓ったのだった。

ってか、パーティー自体が好きではない。
多人数で集まるのが、そもそも好きではない。
そんな人間がパーティーなんて行くのが間違いだったのだけれど、私と同じようなパーティーが好きではない人間は無理して参加する必要はない。
心を許せる人間が1人でもいれば、豊かな人生が送れるからだ。
決して強がりではない。

ー完ー

ティモンディ前田裕太「私はまるで染み染みの大根のよう」【僕のあまのじゃく#87】

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