僕のあまのじゃく#92

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:お小遣い

小学生に毎月コロコロコミックが欲しかった。
当時は一冊500円ほどする月刊漫画雑誌は、小学生の頃の私には最高の娯楽。
デンジャラスじーさんやドラベースの連載は月に1度の贅沢でありご褒美だった。
ただ、毎月のお小遣いは、欲しいもののそれに比較しては少額だった。
小学3年の頃には月300円。4年になれば400円。
1学年上がるにつれて100円上がるシステムだったので、コロコロコミックなんて手を出せば一撃でその月の予算を超えてしまう。
当時は頭を悩ませたものだった。
そこで、画期的な手法を思いつく。
同じシステムのお小遣い制度を採用されている家庭の友達を探し出し、何人か見繕った末、コロコロを買いたい人達で談合し、コロコロを買う月を皆で分けてシェアして読むことにしたのだ。
大人の入れ知恵なしの小学生にしては天才的な発想だったと思う。
こうして限られた予算の中でコロコロを皆とシェアすることで楽しむことができた。
なんでもシェアするようになった今のご時世の先駆けを、小学生の頃からやってのけていたのは、時代の先駆者だったのかもしれない。

ただ、世の中のエンタメは私を魅了し続ける。

週刊少年ジャンプではワンピースやNARUTO、BLEACHの連載も始まってしまったのだ。
こんなの、読まざるを得ないだろう。
世界的漫画がこんな同時期にスタートするなんて、ただでさえ国家予算は限られているというのに勘弁してほしい。
日本の予算は赤字が続いて借金は膨らみ続けている、というニュースを幼少期に見た思い出があるけれど、自分に置き換えた時に子供心ながら、私の財政がこうなのだから国もそりゃそうなるよな、と知識もない中で思ったものだった。
けれど国と異なって、小学生にして借金なんてできない。
収支を増やすこともできない。
悩んだ末、確実に良くないのだけれど、家の近くの本屋さんで立ち読みをするに至った。
当時の本屋さんは心が広く、私が足繁く通ってジャンプを読んでいても怒られることはなかった。
それを良いことに、刊行日の月曜日には毎週本屋さんに入り浸ることになるのだけれど、それでエンタメは終わらない。

大好きだったバーティミアスという海外の小説の続編の日本語翻訳版が販売され始める。
しかも、2作が続けて出版されるのだけれど、これが小学生にはあまりにも高価。
手に入れざるを得ない状況に身悶えすることになった。
流石にここまで財政を緊迫する状況になってしまうと、我が家の大蔵大臣に交渉するしか道はない。
お小遣い帳をつけるように言われていた身としては、やりくりしてどうにかするべきだと思っていたけれど、両親にねだる。
こうして奥の手を使ってお小遣いの範囲を超えてしまった分のエンタメであるバーティミアスは入手して楽しむことができた。

ただ、ここで私のエンタメ全盛期が訪れる。

盲点だった映画というジャンルが私に襲いかかる。
図書館で読み続けていた指輪物語が映画化されロード・オブ・ザ・リングのVHSレンタルが開始されたのだ。
当時は映画のサブスクなんて当然存在していなかったから、映画を見ようと思ったらTSUTAYAまで行ってビデオを借りるしかなかった。
TSUTAYAの映画作品は、一泊二日でいくら、二泊三日でいくら、という料金体制だ。
なんで一泊とかVHS側がお泊まりする視点で料金の表記がされているのか疑問には思っていたけれど、その料金も、ただでさえ緊迫している財布に追い込みをかける。

その時点で、私は諦めた。
自分でやりくりするのをやめて、親に頼りまくる道を選んでしまった。
ってか、世の中のエンタメに対して小学生のお小遣い制度ってバランス取れてないよなあ。
それこそ国が子供へのエンタメの経済的負担を軽くしてもらえたら良いのだけれど。
もし自分に子供が産まれて、その子供が小学生になった時、お小遣い制にしたとて財政破綻をしてしまうのは目に見えている。
まだ未来の話なのかもしれないけれど、自分の子供への懐事情をどうするか、今から考えていきたいと思う。

ー完ー

ティモンディ前田裕太「”暇”ってなんですか?」【僕のあまのじゃく#91】

ティモンディ・前田裕太「売れても変わらないようにするにはどうすれば?」クレバーすぎる頭のナカ