僕のあまのじゃく#95

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:夢心地

「本番10秒前」とスタッフが声をかける。
次第にスタッフの指が折られて、合図が出るので、それをきっかけに企画説明などの話を始める。
そのようにいつもと同様の仕事をしていると、たまに違和感を覚える時がある。
というのも、自分の立場と自己評価が見合っていないことがあるのだ。

今、テレビ東京でLDHからデビューしたLIL LEAGUEとKID PHENOMENONというグループで番組をやっていて、その番組のMCという立ち位置で共演させてもらっている。
台本にも、僕たちが引っ張って企画を回して、彼らに挑戦してもらう立場のスタンスで書かれていることが多いのだけれど、ふと思うのだ。
何を偉そうに仕切っているのだろうか、と。

2グループとも、大勢いるLDHのパフォーマー達から熾烈なオーディションを勝ち抜き選ばれし精鋭の中の精鋭。才能の上澄み。
ダンスも上手ければ歌も上手い。オーディションを勝ち抜く力もある。
そんな彼らが上を目指して努力をしているのだ。
私のコメントが台本に「○○を知らなければ芸能界では生きてけません!なので!今回はみんなに○○を勉強してもらいます!」と書いてあるので、カメラが回っている時に、その企画説明をするのだけれど、そもそも今の私たちだってまだ若手中の若手だというのに、自身を棚に上げて、ここまで先輩面していいものなのか、と思ってしまう。

中学生や高校生がメンバーにいるので、確かに年齢と経験には差はあるけれど、言っても我々だってテレビに出られるようになったのは2019年から。
テレビ歴で言えばまだ5年目。
ひよっこもひよっこ。若手とも言えない、テレビの赤ちゃんだ。
芸歴は一丁前に重ねていっているものの、それでもまだ9年目。
まだまだ若手。
いや、でもどうだろう。
若手なのか?若手ぶって、楽なポジションに身を置きたいだけではないか?
普通に考えたら、同じ業界で8年も働いて9年目に突入していた場合、大体は中堅と呼ばれてもおかしくないポジションになっていくもんなあ。
お笑い芸人の芸歴だったり、この業界が少し異例なだけで、9年目の社会人が新人と同じような扱いを望んでいたら「おいおい、いい加減中堅としての自覚を持ってくれよ」と思うのも当然だろう。
あと半年もすれば芸歴は10年目に突入する。
では、我々は中堅芸人と呼べるだろうか。
いやいや、ないない。
そこら辺は、頭でっかちな私でも肌感で分かる。
ってことは若手、中堅という概念はきっと芸歴そのもので見るのではなくて、テレビに出だしてからの年数で換算したりするのだろう。
だとすれば、5年目の我々は若手で間違いない。

ここで分かったことは、我々は我々で、歴も経験もまだまだ未熟なのだ。
精進せねばならない。
課題は山積みだ。
たまたま会社員で働く友人と軽い話をしていた時に「芸能人と一緒に仕事できるなんて夢みたいだよな」と言われたことがある。
今をときめくアーティストや芸能人の人たちと仕事をさせてもらえることは光栄だし、任されたポジションを考えると、夢の中にいるようだと思われても仕方ない。
会社員の視点からすれば、この業界に入って9年目になる訳で、そうであるならば精神的にも十分に余裕があると思われているのだろう。
でも、私なんて高校時代までひたむきにやってきた野球は甲子園にすら行けず、プロ野球選手にもなることができず、大学で勉強しても結局はなろうと思った弁護士資格すら取ることができなかった中途半端な平凡人間。
それに加えて、まだテレビ歴5年目の若手芸人なのだ。
中学生や高校生の年齢の子たちであっても、一緒に同じ場所にいられるだけでもありがたいと思わなければならない。
要は、人生の王道を真っ直ぐに歩いてきた芸能人達を、私達のような雑草が引っ張るような仕事をしているのは、正直夢なんて見ていられる余裕もないのだ。
呑気に言ってくれるものだ、とその友人に思ったものだった。
凡人が天才、秀才たちを先導していかなければならないなんて、夢見心地で仕事なんてしていられないのだ。

私達も彼らと一緒に育っていきたいものだ。切実に。
そんな悠長なこと言っていられないけれど。
いつか自分の仕事をしている姿を客観的に見て、夢見心地でいられるような、そんな精神を持てるように励んでいきたいと思う。

ー完ー

ティモンディ前田裕太「推しは推せるうちに推せ」【僕のあまのじゃく#94】

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