ドラマ『いちばんすきな花』第6話を考察!
放送中のドラマ『いちばんすきな花』(フジテレビ系、木曜よる10時~)。誰もが一度は考えたことのあるテーマ”男女の友情”を題材にした本作について、コラムニスト・DJあおいさんに見どころや登場人物の心情について、考察してもらいました。
(こちらもチェック)【ドラマ・いちばんすきな花を考察】「必要だから好かれるわけではなく、好きだから必要とされるのが友情」優しさに罪悪感を持つ紅葉(神尾楓珠)へのアンサーが深い【DJあおい】
恋愛の多様性は尊重できるのに、友情の多様性を尊重できる人は少ない
ゴミ袋の袋はゴミ袋になるのか
『ゴミ袋の袋はゴミだよ』と諫める椿(松下洸平)
『じゃあゴミの中にゴミ袋が売られているってこと?』と夜々(今田美桜)が問う
『逆転現象だ…』と思わぬ禅問答に困惑する紅葉(神尾楓珠)
『ゴミ袋の袋にも袋としてのアイデンティティがある』とゴミ袋の袋をゴミ袋として使用するゆくえ(多部未華子)
結果的に家主である椿の価値観が優先され、ゆくえの案は却下されてしまうが、この冒頭のシーンにゆくえの性格がよく表現されているように思える
第二話のちびっこ相撲のエピソード
小さい子が一生懸命に頑張り体格の大きい子に勝ち観客が感動する場面で、ゆくえだけが大きい子の気持ちを案じ、『悔しいっていう気持ちだけで泣けているのだろうか、恥ずかしいって気持ちに邪魔されていないだろうか、自分が期待されて負けたことで、みんなが感動しているって、どれだけ辛いだろう』と『じゃない方』にまで共感力が働いてしまう、厄介なほど優しい性格
もしかしたらゴミ袋の袋にも『じゃない方』の身を案じてしまったのかもしれない
#いちばんすきな花
— 「いちばんすきな花」木10ドラマ公式💐<フジテレビ> (@sukihana_fujitv) November 18, 2023
💐** ┈┈┈┈
二人にはなれないし。
だったら、4人のままがいいから
┈┈┈┈**💐 #すき花 #神尾楓珠 pic.twitter.com/XpgTA7jPTs
そんな共感力の強過ぎるゆくえが紅葉の気持ちを分かっていないはずがない
紅葉の恋心くらいはすでにお見通しで、それを承知の上でゆくえはなんのアクションもしなかったという
なぜなら誰よりもそれを望んでいるのは紅葉自身だから
今のままの関係でいようとしている人を突き放すのも、思わせぶりな態度をするのも違う
行き場のない気持ちなら自分で持っているしかない、もしくはゴミ箱に捨てるしかない
潮姉妹と夜々の会話劇には友情を友情として確立するためには時として覚悟が必要になることを思い知らされた
では、このドラマの主題でもある『男女の友情は成立するのか?』という問題について、ゆくえと夜々のバスのシーンが印象深い
『同性同士の恋愛は成立すると思う?』と問うと、殆どの人が『成立すると思う』と答える
当事者でもないのに、理解なんて出来ていないのに『そういう人もいる』という考え方ができる
でも『男女の友情は成立するのか?』という問いになると、途端に人は『自分は成立しないと思う』『自分は成立すると思う』というエゴを主張してくる
恋愛の多様性は尊重できるのに、友情の多様性を尊重できる人は少ない
そもそも『男である』とか『女である』とか『Lである』とか『Gである』とか『Bである』とか、そんな粗雑で大雑把な括りに分けられるほど人間は簡単な生き物ではない
ひとりひとりが異なる生き物であり、ひとつひとつの人間関係も異なる
その全てを理解することなんてできるはずがない
だから『そういう人もいる』『そういう関係もある』と、ただ受け入れるだけで、理解しようと野暮に干渉する必要はない
『みんな違ってどうでもいい』という不干渉協定が、ある意味で言えば最適解なのかもしれないと思える回でした
友情にも『好き』というエゴがある限り嫉妬は必ず存在する
『好きだった人』には幸せになってほしい
『好きな人』には自分と幸せになってほしい
今回、夜々が言った最も印象的なセリフ
夜々には小学生時代に『ムラサキちゃん(ムラヤマサキちゃん)』という憧れの女の子がいた
そのムラサキちゃんが最近結婚をしたという
その結婚相手は夜々の初恋だった男の子
好きだった人と、好きだった人が、好き同士になり、結婚に至る
これを夜々は『負け惜しみでも嫉妬でもなく、本当に嬉しかった』と言う
夜々にとってこの二人は紛れもなく『好きだった人』になったのだろう
行き場のない気持ちをゴミ箱に捨てた結果、『好きな人』から『好きだった人』になったのかもしれない
しかし今回の見所のひとつである、赤田(仲野太賀)と椿とゆくえが繰り広げる『恋愛感情が介在しない三角関係の修羅場』では、赤田はゆくえに嫉妬心を丸出しにしているし、ゆくえも赤田に剥き出しの嫉妬心を表現している
これはお互いにまだ『好きだった人』に昇華されていないことを意味している
それが友情であれ、未だ『好きな人』であるために嫉妬というエゴが出てしまう
行き場のない気持ちを持て余しゴミ箱にも捨てられない
友情にも『好き』というエゴがある限り嫉妬は必ず存在する
『好きだった人』になりきれない赤田とゆくえの関係性はこの先どうなってしまうのか…
その鍵となりそうなのが、『美鳥』というゆくえが絶対の信頼を置く存在である
話の流れからすると、紅葉が信頼していた椿家の元家主である先生とどうも同一人物っぽい
そしてここまで関連性があると、夜々に将棋を教えたいとこのお姉さんというのも美鳥ではないかと勘繰ってしまう
もしこの考察が的中すれば、椿が引っ越しをしてもまた美鳥家に四人が集まることができる気がするのだが、果たして…