自分と他人を比べて自信をなくしたり、友達に対してモヤモヤした気持ちを持ったり。

7/10に発売する「ショジョ恋。―処女のしょう子さん―」では、恋愛のときめきだけでなく、アラサー女子が持つコンプレックスや人との向き合い方にも焦点をあてています。

そこで、ショジョ恋の作者・山科ティナさんと一緒に、『命に過ぎたる愛なし 女の子のための恋愛相談』で実に32個の恋愛相談に答えている、人気エッセイスト・ものすごい愛さんにインタビューを実施。

今回は、‟対自分”がテーマ。ショジョ恋のワンシーンと一緒に、自分自身への向き合い方についてじっくりお届けします。

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「しっかりしてるよね」人からもらう言葉は自信を持つことにもなくすことにもつながる

―今回発売する山科ティナさんの漫画「ショジョ恋。」の裏テーマは‟自己肯定感”。

主人公のしょう子は、自分が処女であることから自分に自信が持てなくなり、自己肯定感が低くなってしまっています。『命に過ぎたる愛なし』の中でも、「自分に自信が持てない」という質問に答えてらっしゃいましたが、そういう方は多いのでしょうか。

ものすごい愛さん そうですね。背景や環境、個人の性格も違うので、一概にひとくくりにはできませんが、「自分に自信が持てない」「こんな自分はダメなんじゃないか」とおっしゃる方は一定数います。

以前、「男運がないのは自分がブスだからだろうか」という相談を送ってくださった方がいたんですけど、イベントで実際にお会いしたらとっても可愛い女性で。

どういった経緯でそう思うようになったのかまではお聞きすることはできなかったのですが、もしかしたら過去に誰かに言われた発言によって、それが呪いのようになってしまったのではないかなと…。

しょう子はショジョ恋の中で「しょう子はサバサバしてるし〜」とか「しっかり者だから~」という言葉をもらっています。

それって、たとえ人から言われて傷ついた言葉じゃなくて、“あなたのこういうところを素敵だと思ってる”という褒め言葉だったとしても、受け取る側の状況や精神状態によっては「そういう自分でいなきゃいけない」という呪いのようなものになってしまって、その積み重ねで身動きが取れなくなってしまう人もいるのかなって思いますね。

―本当は人に甘えたいのに‟サバサバしてるね”って言われたから、つい‟私はサバサバしているからここで誰かに甘えるわけにはいかない”と思ってしまうんでしょうか。

ものすごい愛さん そうですね。それが癖のようになっている人もいるのかもしれません。ショジョ恋を読んで感情移入される読者さんと、私に恋愛相談を送ってくださる読者さんは、共通している部分がある気がします。

言われて嫌な気持ちになった言葉はできるだけ自分の中に残さないでほしいな、と思っているのですが、褒め言葉は失敗体験ではなく成功体験と結びつけられたらな、とも思っていて。

しょう子も、たしかに恋愛は上手くいっていないかもしれませんが、「私はしっかりしている」というベクトルで進んでいるからこそ、仕事自体は成功体験に結びついていますよね。

山科ティナさん たしかにそうですね。友人でも仕事には自信があるけど、恋愛では失敗経験のほうが多いからか、なかなか自信が持てないっていう方は多くいますね。

―なるほど。成功体験と結びついているという視点はとても新しかったです。

ものすごい愛さん そうじゃなきゃ、あんなにバリバリ働いて結果を残せないですよ!ほんとうにすごい!

脱処女した先にじゃあ何があるの?

―しょう子は、脱処女したい、という気持ちがとても強く、もういっそ誰でもいいからもらってください!と嘆くシーンもありましたが、現実にも「ここまで処女ならドブに捨てたい」と悩む女性がいます。

命に過ぎたる愛なし』の中では、「恋愛したくなったときが恋愛しどき」とおっしゃっていますが、本当は処女を捨てたいのに怖くて踏み出せない、という人はどうしたらいいのでしょうか。

ものすごい愛さん 脱処女した先のことが想像できたほうがいいですよね。脱処女がゴールとは限らないじゃないですか。

もし、本当に処女を捨てることがゴールなのであれば、今は女性向け風俗とかもあるので、そこら辺のよくわからない男とヤる以外にも、きちんと正規の値段を払って、サービスを受けるという選択肢もアリだと思うんですよね。

脱処女することで今抱えているコンプレックスはなくなるのか、というのは、実際に行動に移す前にきちんと想像してみたほうがいいと思います。

たとえば「一重がずっとコンプレックスで…」という人が、二重にすることで自分の気持ちが以前よりも明るくなり、人の目を見て喋れるようになったり、おしゃれも楽しめるようになったりして、絶対に整形したほうが自分の人生にプラスになる!というビジョンを見据えたうえで行動するのはすごくいいことですよね。

それと同じで、脱処女することで前向きな気持ちになれる、恥ずかしいと思っていたものが無くなって男性としゃべれるようになるなど、プラスに進むならいいと思いますが、そこから先がまだ見えていないなら無理に捨てないほうがいいのではないでしょうか。

山科ティナさん たしかに。そこをゴールにして、脱処女したとしてもそのあとどうしたらいいかわからなくなりそうですね。

本当に嫌なことは何?分解して考えることが重要

ものすごい愛さん 経験がある人からすると、「別にしたからといって何か変わるわけじゃないよ~」って感じなのでしょうが、未経験の人からすると「いや、それがわからないんだって!」と思うはず。結果的に自分がどう感じるのかは、経験して初めてわかる部分なんですけどね。

だからといって、焦って危険な目に遭うようなことにはならないでほしいですね。

処女であること自体が嫌なのか、処女だから自分に自信が持てないのが嫌なのか、友達との話で嘘をついちゃうのが嫌なのか、一度分解して考えたほうがいいと思います

もしかしたら、別のベクトルから解決できる方法があるかもしれません。

―処女の話ではないですが、“彼氏がほしい”‟結婚したい”という悩みにしても、焦ってしまうと何が目的かわからなくなったりしますもんね。

ものすごい愛さん そうですね。それだけなら相手は誰でもいいってことになりますけど、きっと本当は誰でもいいから結婚したいわけではなくて、「こういう関係になりたい」という明確な目的があるはずです。でも、焦っているとそこを見て見ぬ振りしちゃうというか。

―というと?

結婚となると、世間一般の理想とされるのって「お互い愛し合っての結婚」をイメージする人が多いじゃないですか。

でも、幸せのかたちって人それぞれで。たとえ情熱的な感情がなくても、資産だったり社会的な地位だったり、いわゆるスペックの部分でお互いの利害関係が一致している結婚も、一つの幸せの形ですよね。

どういった結婚生活を送りたいかは本人の自由ですし、本当にそれが目的なのであればいいと思うんです。ただ、焦りから相手の目に見えるスペック的な部分が満たされていることを優先して、それ以外の部分…たとえばお互いの持つ感情や本当は理想としていた関係性などを結婚したあとに求めるようになってしまうと、のちのち辛くなるんじゃないかなぁと。

さっきもお話ししましたが、だからこそ「自分の本当の目的はどういうものなのか」を明確にしたほうがいいと思います。