こんにちは、アナイスです。
春ファッションといえば、私自身手放せないのがトレンチコート。トレンチコートって丈の長さやシルエットの大きさ、生地やカラーなど沢山の種類がありますよね。着こなし方も十人十色。
特に映画の中に登場するオシャレな人物が、これまたオシャレに着ているんですよね。ちなみに私は今、ハンフリー・ボガードから借りたようなビッグシルエットのものをブカブカ着るのが好きです。そんな今日は、映画史に残るアイコニックなトレンチコートとそれを着こなすヒロインをご紹介します。
『シェルブールの雨傘』カトリーヌ・ドヌーヴ
鮮やかな色彩と、セリフ含め全編ミュージカルの作品として知られている『シェルブールの雨傘』。三部構成になっており、前半はヒロインのジュヌヴィエーヴの視点で、後半は彼女と結婚を誓ったギイの視点で描かれる切ない恋物語となっています。アルジェリア戦争中の1957年のフランスは港町、シェルブール。いつも雨の降る町で、雨傘店を母と営む美しい娘と心優しい青年が愛を囁き合う。しかし、彼に召集令状が届いてしまい二年間離れ離れいなってしまうのです。その間に、ジュヌヴィエーヴに一目惚れする殿方が現れて……。
何がすごいって若い時の浮き足立った恋愛から、大人の感覚の恋愛までを一作品の中で時間の経過とともに描いて、それが実はとても現実的なことなのにカラフルな色彩とポップなミシェル・ルグランの曲のおかげで明るいものになっているんですよね。
そんな本作の素敵トレンチは、ギイに令状が届いた後のデートで着ていたジュヌヴィエーヴが着ていたもの。箱入り娘なので、まだ若さ溢れるブルーのギンガムチェックのワンピースに合わせて、青いショールを合わせています。
しかし面白いのが、彼女がバーバリーのトレンチを着ているシーンは、全てジュヌヴィエーヴが悲しい気持ちの時なんですよ。彼との最後のデート、列車に乗る直前のカフェで彼の胸で泣くとき、そのまま駅で彼を見送る時。実はそれ以外のシーンで、彼女はトレンチを着ていない。カラフルなコートを着ているんです。そういったファッションと感情とのリンクが面白いのも、本作の魅力。
『ティファニーで朝食を』オードリー・ヘプバーン
映画史に残る名作、トルーマン・カポーティ原作の『ティファニーで朝食を』。今で言うパパ活女子なホリーが、同じアパートに引っ越してきた作家ポールと仲良くなります。チャーミングでモテるホリーはまさに孤独を愛し、孤独を嫌うタイプ。お金持ちの殿方以外とは滅多にお近づきにならない彼女が、ジリ貧のポールには心を開いていく。自分の飼い猫にも名前をつけず、何にも執着しないように怯える彼女のありのままの姿をポールが抱きしめていくのが素敵な恋愛作品です。本作もとにかく映画全編を通してファッショナブルで、主演のオードリー・ヘプバーンの可愛さに眩暈がしそう!
そんな本作のトレンチコートは、それこそ映画史に残るトレンチ。
クライマックスのタクシー社内で、愛を告げるポール。しかし、ホリーは「人は人のものじゃない」と言って彼を拒絶すると車を降りてしまいます。土砂降りのNYで傘もささない彼女の綺麗な装いが濡れていく。ここも先ほど紹介した『シェルブールの雨傘に』のようにヒロインが悲しんでいる、泣いているシーンですね。もしかしたら、3年前に公開された本作をジャック・デュミがオマージュしたのかなと思います。(彼はそういった引用が得意な監督ですから)。ぐしょぐしょになってしまったホリーのトレンチ、これもバーバリーのもの。キュッと前を締めて彼女の体の線の細さを強調した、フェミニンなスタイルなのが印象的です。
『クレイマー、クレイマー』メリル・ストリープ
上記2作品とは違い、フェミニンさではなくトレンチのマスキュリンさを強調している映画が『クレイマー、クレイマー』。アカデミー賞作品賞を取った、名作中の名作です。主人公は会社人間のニューヨーカー、ダスティン・ホフマン。彼には幼い子供と妻がいましたが、昇進も決まって仕事が楽しい時。家庭を顧みないでいたせいで、突然妻のジョアンナが一方的に家を出ていき、離婚するところから物語が始まります。
このジョアンナを演じているのが、オスカー女優の若きメリル・ストリープ。今でも十分お綺麗ですが、この頃の彼女はとにかく美人で演技力も素晴らしい!家に残されて家事が一才できない主人公テッドが息子の育児をし始めることで、徐々に父親としての自覚を取り戻し、あたたかい人間になっていく成長に心打たれます。
このジョアンナとテッドが着ているトレンチコートも、バーバリーのもの。
テッドにとっては仕事を始めた新人のとき、少しでもお金が入ったらまずはバーバリーのコートを買えと言われたと映画の冒頭で話していて、それが“一人前の社会人の男”の象徴なのです。
一方、専業主婦になることが嫌で自分もバリキャリとして働いてた頃に戻りたかったジョアンナにとって、このトレンチコートは“ジェンダーロールへの抵抗”の象徴でもあります。本作が公開された79年頃は女性の社会進出が起き始めた頃で、この映画自体そういった男女の役目をテーマにしたものでもある。現代よりももっと男性優位の社会で、キャリアウーマンとして自由を得ようとするジョアンナのトレンチのカッチリとした着こなしも、やはり女性性というよりは男性性を想起させるんですよね。
『恋をしましょう』マリリン・モンロー
最後に紹介するのは、上のジョアンナとは正反対のキャラクターのトレンチの着こなし。『恋をしましょう』で主演を務めたマリリン・モンロー演じるアマンダのものです。
本作の主人公プレイボーイの億万長者であるジャンが、自分のことを悪い意味で題材にしている舞台があると知り、そのリハーサルを覗きにいきます。その舞台で華麗に歌い、踊っていたのが紛れもない、モンロー演じるアマンダ。彼女の色気たっぷりの魅力に囚われたジャンは、それから役者のふりをして彼女に近づき猛アプローチをかける。彼もモテ男です。しかし、アマンダはジャンに一切興味を持たず余計に燃えてしまう、というようなストーリー。
この映画の中でのモンローのトレンチの着こなしは、とにかくセクシー。他3作とは打ってかわり、ビッグシルエットのものをチョイス。
ベルト部分の絞りでくびれを強調しながら、胸元は大きく開けています。下に何か着ているのか、ちょっと不安にさせる程度の雌感たっぷりなスタイル。男の人から借りたような感じに見えるのも、色気を感じさせますね。
トレンチコートは、自分のステイトメント
紹介した着こなしを改めて振り返ると、キャラクターの感情や、意志、どんな風に見られたいか、ということがトレンチコートで体現されていました。やはりファッションって、自分のステイトメントだなと思うわけです。トレンチって同じような着こなしをしがちなアイテムでもありますが、その一着をどういう風に着るか、どんな気持ちで着るかで印象はガラッと変わりそう。そのヒントが欲しい方は、是非紹介した映画をご覧になってみてください。
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