6月13日に最終回を迎えた『PRODUCE101 JAPAN SEASON2』や、SKY-HIさん主催で盛り上がりを見せる『THE FIRST』など冷めやらぬオーディション番組の熱。

INI(アイエヌアイ)©LAPONE ENTERTAINMENT

なぜ今こんなにも見る人の心を熱くさせるのか。オーディション番組を愛してやまないしずるの村上純さんと、映像プロデューサーの森平 晶さんにその理由を深堀りしました。

国プも注目する“成長率”。人間性がキーワードに

森平
『PRODUCE101 JAPAN』のシーズン2は、1に比べて国民プロデューサー(以下国プ)の投票基準が変わったと思います。デビュー後のグループの将来性を考えて票を入れているというか。「INI」として活躍してほしいという気持ちがあって選んでいる感じがしますね。
村上
国プも投票のシステムも分かっているから、顔とか、パフォーマンス以外にも“どれくらい成長するか”という成長率や、人間性をめちゃめちゃ見ていると思いますね。何かに挫折した時、仲間意識が芽生えた時に「この子はいい子」「負けず嫌い」「仲間想い」など彼らの素が垣間見えるんです。そういう意味でも、1位になった木村柾哉くんはとんでもないツワモノ。
INI・木村柾哉
森平
木村くんは生まれながらのリーダー! カッコよさとカリスマ性があるうえに、親しみやすさもあり、ダンスが苦手な子たちにも教えて…。ずっとトップを争っているのに、みんなに慕われるっていうのは、人間性がとても高いからじゃないかと思います。
村上
ずっと安定したポジションにいるのに、まったく嫌味がないんですよね。出会った仲間たちみんなでレベルアップしていこうという意識があるから、国プも票を入れたくなるんだと思います。


視聴者の心も震えるトレーナー陣の言葉

村上
人間性の指摘も、トレーナーさんたちからガンガンされるんです。KENZOさんとか、心を鬼にして、ぼろ泣きしながら彼らを指導します。
森平
「俺は蹴落とさせるために教えているんじゃない、全員をデビューさせるつもりでやってるんだ」ってね。あれは名言だったねー!
村上
努力すれば理想的な人間に近づくことができる、それを体現しているトレーナーさんたちばかりだから説得力もありますね。“キレイごと”と言われてしまうようなことだって、本気で言っていることが伝わってくるから「自分もそう生きなきゃ!」と見ている人の心に響くんです。
森平
仲宗根さんももう最高。自分達の練習不足が原因で“らしさ”が出せていない練習生たちに「あんたたち、そんなんじゃないでしょ、悔しくて泣けてきた」って自分で泣いちゃうんです。
村上
トレーナー陣も「全員デビューさせる!」って気持ちがあるから、誰の順位が上がっても下がっても泣くんです。オーディション番組って甲子園みたいなところがあるんですよね。絶対優勝するチームはあるけれど、負けたチームと勝ったチームは称え合うし、終わった後に負けても監督が「お前たちとやれてよかった」と言える。そのシーンに僕たちもアツくなるんです。

推しを思う気持ちが「国プ」たちの気持ちを一つに

村上
僕の推しは松田 迅くん。最初の順位は47位だったんですが、そこから這い上がってきて最終は7位。自分の思い通りにいかないことがたくさんあって挫折することがあっても、笑顔を絶やさない。涙を見せない。絶対苦しいのにいつも明るいから、その姿に心打たれてしまって…。
最後のグループ決めの時に、順位が下の人からセンターやボーカルを選ぶのですが、それを順位が高い人は埋まっている役割があっても外せるんです。松田くんは一番移動させられちゃうんですよ。
INI・松田迅
森平
分かる! 毎回「あら~そっちいくか~!まあそっちはそっちで頑張る!!」みたいな感じでね。健気で可愛らしいよね。ステージではとっても妖艶な姿で、そのギャップがまた魅力的。
私は古瀬直輝くん推しだったので、最終回で彼がスタジオに来ていたのを見て胸がアツくなりました。古瀬くんはコロナで途中棄権にならざるを得なくて…田島将吾くんと仲が良かったのですが、彼が3位で名前を呼ばれた時に泣いている姿が目に入ってグッときましたね。
村上
古瀬くんはデビューしてもおかしくないくらいの実力を持っていたから、もしかしたら違うカタチで活躍するかもしれないですよね。デビューが叶わなかった子たちの魅力を挙げるとキリがないんです。魅力・スキル・タイミング色んなものが重なって産まれる、オーディション番組はまさに奇跡の瞬間、ドキュメンタリーなんです
森平

だから一回も見逃せないんだよね。
私は、わりと推す人が落ちることがこれまでも多くて…古瀬くんが戻ってこないと分かった時ショックで西 洸人くんにすがりつきました(笑) また推しが落ちてしまったら、もう3は見れないと思って…。


だから一回も見逃せないんだよね。
私は、わりと推す人が落ちることがこれまでも多くて…古瀬くんが戻ってこないと分かった時ショックで西 洸人くんにすがりつきました(笑) また推しが落ちてしまったら、もう3は見れないと思って…。
©LAPONE ENTERTAINMENT
村上
推しが落ちると毎日が辛いんですよね。僕はたまにTwitterのスペースで国プの人達と交流するんですが、推しが落ちてしまった子の話を聞いたりします。「自分が推し上げられなかった」という責任感を感じてしまう人がいて、「どの票も無駄じゃないし、あなたのせいじゃない。落ちた子も応援してくれた人に絶対感謝をしているから」っていう話をしたんです。そしたら、その子はファンの中でも有名な“ファンダム”だったみたいで、話した後にTwitterで「村上メンタルクリニック」ってつぶやいていました(笑)
森平
(笑)。国プのコアな人たちは、一般票を得るためにお金を出し合って街頭広告や新聞広告を打ったりするんです。それだけ労力を費やして応援するから余計アツくなっちゃうんです。

メディアの多様化が参加者&視聴者のレベルをグッとあげた

森平
パフォーマンスがとにかくアツいオーディション番組は『BMSG Audition 2021 -THE FIRST-(以下THE FIRST)。主催のSKY-HIさんが「クオリティファースト」というように、アーティストとしてのレベルの高さを求めていることが分かります。
BMSG Audition 2021 -THE FIRST- ©︎BMSG
村上
僕はダンスを見ることが好きなので、初めて見た時に参加者のレベルが高くてびっくりしました。
森平
この番組はアイドルというよりアーティストグループであるボーイズグループをつくることが目的。過去のオーディション番組でアイドルのイメージにははまれなかったけど、こっちで頑張りたいっていう人もいるんですよね。
BMSG Audition 2021 -THE FIRST- ©︎BMSG
村上
デビュー後のグループも、その人の求めているものや素質によって合う、合わないがありますよね。いわゆるアイドルグループだと、ただダンスが上手いだけでは難しいところもあったり…。『Nizi Project』から生まれた「NiziU」のRIOはとにかくダンスが上手いけど、それはあくまでダンサーのダンスで。本人も“グループメンバーとしてのダンスじゃない”っていうのは悩んでいた。NiziUになるうえでのダンスの仕方を考えていましたよね。
森平
そうなんですよね。オーディション番組では、いくらダンスや歌に光るものがあっても、デビュー後のグループの姿にはまらないだろうなっていうのが見える時があります。それでも1位を目指そうと頑張る彼らを応援したくなるんです。
『THE FIRST』で最終的に選ばれるのは5人。現在公開されている第11話の時点で残っているメンバーは15人で、ダンスが苦手でもキャラクターがよかったり、歌が特別に上手かったり、異常にスキルの高い13~14歳が3人いたりと、バラエティーに富んでいます。
※対談時の最新回は第11話(現在は12話まで配信済。15人→12人に)
BMSG Audition 2021 -THE FIRST- ©︎BMSG
村上

これを見ていても思いますが、若い子のパフォーマンスレベルが昔よりグッとあがっている。若手の芸人もそうだけど、テレビ以外でも得られる情報が圧倒的に多いことが若い子の成長にもつながっているんじゃないかと。

森平
YouTubeとかライブ配信とかね。
見る側としてもその存在はありがたいです。仮に落ちてしまっても、その後の活躍をSNSで追いかけられるのも今だからこそできること。
村上
テレビに限らず自分を発信できるコンテンツがあって、むちゃくちゃ熱いファンがいるってだけでやっていけると思うんです。夢のある時代ですよね。
森平
そもそも、昔のオーディション番組ってやっぱり“発表の場”が評価の基準だったよね。でも今のオーディション番組は、素顔や人間性をクローズアップすることでファンや視聴者を惹きつけている。それが今の時代とマッチしているんでしょうね。『Nizi Project』なんかは、シーズン1が盛り上がって『スッキリ』での放映が決まったんです。
『THE FIRST』も『スッキリ』を見て応援を始めた人もいるでしょうし。
村上
『Nizi Project』の時は、『スッキリ』で見せた、参加者たちの“素”が主婦層の心も掴みましたよね。松田聖子さんしかり、昔のアイドルはある意味“虚像”だったと思うんです。人間性を見せてほしくないというか…。そう思うと今とは真逆の楽しみ方ですね。
森平
自分の推しをプレゼンして布教していく楽しさもあるよね。
村上
それこそ森平さんは国プですよ。こっちを巻き込むプロデューサー(笑)。無償の愛で自分の推しの良さを提供し続ける。そういう人達でオーディション番組は成り立っているんです。