あの人に"可愛い"って思ってもらいたいけど…
ちょっとでもあの人に可愛い、好きって思ってもらいたいけど、想うがあまり、好きがあまりにわからなくなる…。
多くの女子が迷い込んでしまう男ゴコロラビリンスをカツセマサヒコさんが道案内してくれます。
カツセマサヒコ「心に空いた穴は、大体が元恋人の形をしている」
1986年、東京都生まれ。大学を卒業後、一般企業勤務を経て、ライターとして活動を開始。デビュー小説『明け方の若者たち』(幻冬舎)が今冬、映画化。2作目となる小説『夜行秘密』(双葉社)も話題に。他の活動に、ラジオパーソナリティやエッセイ連載など。
男にもわからぬ男ゴコロ byカツセマサヒコ
お風呂上がりに髪を乾かしていたら、スマートフォンが震えた。
ドライヤーを手放してスマホの画面を覗くと、思わず声が出る。
「好きぴ!?」
貴方が好きな人のことをわざわざ「好きぴ」と呼ぶようなハイテンション・ロマンチック・ガールでないことは大体想像がつくのですが、過去にはこんなふうに好きな人からの連絡に一喜一憂し、日常生活がままならなくなってしまったことがあるのではないでしょうか。
まあ本当に難しいですよね、恋心ってやつは。
「男に媚びるな!」「簡単には手に入らない女の方が男は燃える!」「ただし高嶺の花すぎるとビビって近づかなくなる!」
恋愛名言集のようなツイートやインスタストーリーが流れてくるたび、すかさず「いいね!」を押して賢くなった気がしてしまう自分。
恋愛強者になんかなれっこなくて、今日も4時間既読が付かないLINEにヤキモキしているわけであります。
「自分の好きな人に好かれたいだけなのに、どうしてそれがこんなにも難しいの?」
そうです、本当にその通り。
たった一人を振り向かせることがどうしてこんなに難しいのでしょうか。
「男って何考えてるかわかりません!」
そんな愚痴にも近い相談を受けるたび、男ゴコロって何なのだろう?とこちらも考える日々です。
でも、最近思ったんですけどね、たぶん「男ゴコロ」なんてもの、最初からあってないようなモノなのではないでしょうか。
ついつい方程式や公式みたいに「男ゴコロの正解」が存在していて、それを知りさえすれば男は攻略できる!と思いがちですが、実はそんなものは虚構にしかすぎなかった、という考えです。
「は? 急にムズいこと言い出すじゃん。どうしろっての?」と、怒りがグツグツと煮えたぎる音が聞こえてきますが、落ち着いてください。
僕も一応、メンズの端くれ。
よく「男性代表として意見を!」とコメントを求められることがあるのですが、その度悩んできたわけです。
例えば「初デートはどんな格好がいいですか?」という質問です。
僕はいつだって「動きやすい服と、履きなれた靴」と回答するわけですが、女性陣からは「小学校の遠足かよ」と総ツッコミを受けるわけです。辛辣~。
ただ、これはあくまでも頭の中で「下北沢の居酒屋での初デート」くらいのシチュエーションを浮かべて答えているからなんですね。
だって、初デートはそのくらいカジュアルなものがいいと思っているから。
でも、それはあくまでも「僕」の「個人的な主張」に過ぎないわけです。
貴方が好きな人は、もしかすると「初デートこそ高級レストランに行くべき」とか「初デートは必ず水族館のイルカショーを最前列で見てビショビショになりたい」とか思っているかもしれません。
前者ならワンピースでしょうし、後者ならもはやポンチョが正解でしょうか。
そうなると「男ゴコロ」なんてものがいかに多様で一つに絞りにくいか、想像がつくかと思います。
「じゃあどうすりゃいいの?」とつい愚痴ってしまう皆さん。
一旦、その「男」という大きな主語を取っ払って、目の前の好きな人をじっと観察してみるのはいかがでしょうか。
彼はどういったものが好きで、どんなものに苦手意識があるのか。
どんな連絡頻度が好ましいと思っていて、どんな話だと会話が弾むのか。
SNSの投稿やいいね欄一つに滲み出る趣味嗜好を見抜くのです。
そうすることで浮き彫りになってくる「その人らしさ」。
それを知ることができれば、気休め程度だとしても、恋も少しは前進するのではないでしょうか。
ただ。ただ、ですよ。果たしてそこまでマーケティングをゴリゴリに進めたような恋愛をすることが、正しい恋の道なのでしょうか?
「あの人の好みの人間になりたい」と思う気持ちは尊重したいです。
とてもよくわかる。
でもその一方で、どんどん失われていくであろう貴方の個性が心配になります。
あくまでも、自分は自分。
ブルベ/イエベ、骨格ストレート/ウェーブ、あらゆる情報を無視して自分の好きなものを選ぶとき、きっと今よりも貴方は貴方を好きになれる。
そんな気がしませんか。
大好きな自分こそ好きでいてもらえるように、恋や流行りに翻弄され過ぎないでいるのが一番じゃないかと、最近はそんな風に思っています。
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