背水の陣ってご存知ですか?

背水の陣? 退路を断つことで全力になる戦法のことですよね。

ええ、その通り。現代ではそのように使われています。

現代では? 含みのある言い方ですね。

背水の陣という言葉は井陘の戦いという戦いの中で生まれました。この戦いで漢の韓信は川を背にして陣を敷き戦いに勝利したのです。

やっぱり背水の陣って強いんですね。

いえ、古今東西を見渡しても退路を断つことで勝利をした軍隊など存在しません。戦いはそんな精神論では勝てないのです。退路を断つというのは基本的にただの愚策でしかありません。

え? じゃあ韓信は何で勝ったんですか?

わざと馬鹿なことをして、敵から「あいつらは川を背にして陣を敷いてしまうようなバカだ!」と思われることに成功したからです。敵軍はそんな韓信を見て油断をし、迂闊にも突撃をしてしまいました。その隙を韓信の別働隊に討たれたのです。

全然追い詰められてないじゃないですか……。

ええ、その通りです。

退路を断つくらいで真剣になれるほど人間は真面目な生き物ではありません。それに仮に真剣になったとして、精神論で勝てるほど世の中は甘くないのです。

ですので「退路を断つ」という手段を私はおすすめ致しません。

なるほど……それでそれが今回の話と何の関係があるんですか?

退路を断つのはダメですが、相手から「あの人は退路を断った」と思われることには意味があるのです。

「じゃあ一緒に行っちゃう?笑」

まずこの言い回しは自分から誘うものではありません。また「?笑」と付けることで、失敗しても冗談で済ませたいと思っているように感じてしまいます。

なんか分かる……。

これがもし「じゃあ一緒に行かない?」だったら、完全に誘っています。ですので紗世さんからすれば「誘われた」と言うことが出来る。ここでもやはり安田さんは「誘う」という仕事を押し付けているのです。

なんか妙に逃げる人ですね。

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