僕のあまのじゃく#13

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくブリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:「ホクロ」

大学一回生の時に、人生で初めて占いをしてもらった。
占いは苦手だ。
あの手のものは、生年月日やら数字やらそれっぽい理屈を述べて、無責任に発言している気がしてならない。

だから、それに対してお金を払う理由も見出せない。
けれどその時は、バイト先の友人達がせっかくだから行こうと言うので渋々行くことになった。

そこの占い師の人は、胡散臭い装飾に身を包み、胡散臭い音楽をかけて「待ってたよ」と我々を出迎えた。
我々をなのか、客をなのか、あえて言わないことで雰囲気を出そうとしているのだろう。
どうやらその占い師は、人相判断で占いをしている専門家のようで、お金を払うと、じっと顔を凝視されたのを覚えている。

すると唐突に、占い師の人が「お前は凄い!」と声をあげた。
“お前“とは初対面の人間に対して失礼極まる輩だ。
必要に応じた罰を与えねばならない。と思ったけれど、当たるも八卦、当たらぬも八卦だの都合の良いことを言っている占い師の言葉を1つ1つ本気で受け止めてはいけない。

その後の話を聞くと、その占い師の人相占いは、主にホクロの位置で占うホクロ占いだと言う。
私はその運勢が異様に良いらしかった。

「え、全然そんなことないんだけど」

ホクロは、その人の性格や性質を表す重要なポイントだと占い師は言う。
特に、ほうれい線の内側にほくろがある人は、日常生活において大きなトラブルに見舞われることは殆どないらしい。
それが私にはあるらしく、安泰の人生だと言っていた。

え、全然そんなことないんだけど。
弁護士を目指していた私からすると、願ったり叶ったりのホクロなのだけれど、それと比較すると、今の私は芸人になるに至ったという大きな出来事に見舞われている。
占い師にはこの未来が見えていたのだろうか。

見えていた上で安泰だと言っていたなら、一言くらい巨人からの誘いには気をつけろと助言をしてくれても良かった。

後悔をしている訳ではないけれど、安泰の人生とは対極の道を爆走してしまっている。
それと、眉間にホクロがあるのは、財政が豊かな人生を送れるのだと占い師は加えて言った。
あなたは財には困らない!と断言されたのだけれど、当時から家賃5万のげき狭物件に住んでいて、書生時代からガスなんかはちょくちょく止められていたし、今でも二年前くらいまではライフラインが全て止まっていた。

ギリギリでいつも生きていたい訳でもないのにリアルフェイス生活が8年近く続いていたけれど、どうやら占い師によれば財に困っているうちには入らないようだ。
1日カップ麺1つで生活していたのが豊かだと言うなら、占い師は戦時中だったり発展途上国出身なのだろうか。
だとしたら、ひもじいと思っている私の気持ちなど比較したら十分に豊かだと感じなければならないと思う。
絶対にそんなことはないだろうけれど。

他にも、このホクロはどうだの、このホクロがどうだの、色々と言われてあなたは凄いだの運がどうだの重ねて言われたけれど、言われれば言われるほど、それってホクロが多いだけじゃねぇか・・・?と疑問を抱くようになったり。

最後の方には、あなたは鼻の真ん中にホクロが加われば、もう最強、と強く言われ、もし最強になりたければ、鼻にペンでホクロを書くだけで、もうその効果が得られると教えられた。
書いても別にいいのかよ。

もうそれはホクロでもないし、ペンで書いただけでも運勢がよくなるのだとしたら、運なんてインクのシミ一つで容易く変えられるものとも捉えられる。
ホクロはあくまでもホクロ。

書き足しまくって顔を真っ黒にするよりも、運は自分の手で手繰り寄せるよう努力して、
ホクロはチャームポイントくらいに留めて認識しておくのが良いだろう。

ー完ー

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