僕のあまのじゃく#24

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

▷▷これまでのコラムはコチラから◁◁

ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくブリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:「温泉」

温泉に入ると、よく看板に効能なんていうのがつらつらと書き並べられている。
私は、あの類いのものは全く信じていない。
よく温泉で見る効能として、冷え性や関節痛、痔や疲労回復なんて書いてあるけれど、そんなもの、一般に家の湯船でも得られるではないか。
ある種、当たり前のことを特別です!と言っている姿勢は、首を傾げざるを得ない。

「この水は、飲んだら喉が潤います!」と言われても、そりゃそうだ。となるように、温泉の効能の項目もそりゃそうだ、を声を大にして誇示しているように感じる。
場所によっては、糖尿病や痛風に効く、と書いてある温泉もあるけれど、それは流石に誇大広告すぎるだろう。

痛風に効くならば今頃かまいたちの濱家さんは温泉に入って、あん肝白子ポン酢を丼一杯に食べれるだろうに、なかなかそれが出来ないのは、きっと痛風に効くと言えるほどの効果がないからだろう。

医療が未成熟だった江戸時代には湯治なんて言って薬を出すなんかより温泉に入れと医療効果に期待して温泉に入れていたみたいだけれど、私は騙されないぞ、といつも思う。

例え効果がなかったとしても「信じる者は救われる」「プラシーボ効果」なる言葉があるように真っ直ぐ信じていた方が心にも身体にも良いのだろうけれど。
ただ、こういうと、じゃあ前田さんは温泉は好きじゃないんですね、という輩がいる。

勘違いしないでいただきたい。
私は温泉は大好きだ。
林檎が好きな人であっても、皮や芯や種は食べない人間もいるだろう。

私にとって効能は林檎の芯のようなもので、なくとも魅力は損なわない。
両手足を伸ばして温まれるのは、家の浴槽で体育座りをしてじっとしているそれとは一線を画すし、ぷかぷかと浮かんで露天では空なんか見上げられるから最高以外の何ものでもない。

そして私は出会ってしまった

大学生の頃は、川崎にある湯けむりの庄という温泉に毎日のように通い、日頃のバイト代の大半をここに突っ込んでいた。
この温泉は結構有名な場所なようで、遠方から足を運ぶお客さんもいるらしい。

ある大学2回生の頃、いつものように一人で湯けむりの庄で温泉に入っていた時のことだ。
ここの温泉の水質が真っ黒で色が濃く、底が見えない。
温泉に浸かっている人達の首が水面からいくつも浮いているように見えるのだけれど、その中で、明らかに目を引く、異様な首が浮いていた。

整った目鼻立ち、美しいフェイスライン、隠しきれないオーラ。
市原隼人だった。
あまりに芸能人オーラ満開の人間というのは、顔だけでも存在感が違かった。
その時、ふと思う。
昆布は煮出すとその成分が水に溶け出すように、市原隼人が入っている今のこの温泉の成分にも、市原隼人が溶け出ているのではないか。
その市原隼人が溶け出た温泉に浸かって、その成分を肌に吸収させれば、私の中にも市原隼人成分は染み込むのではないか。

そう考え、彼が温泉から出た後も、これでもかというくらい温泉に浸かって、可能な限り市原隼人成分を体内に取り込んだ。
そして、私は市原隼人を取り込んだ。

一日かけてこの温泉に出たり入ったりして、イケメン成分を身体に取り込んだのだ。
温泉から出て、友人達と合流し食事をした時も「なんだか肌がツヤツヤ」と言われたのも、市原隼人成分の賜物だろう。
温泉の効能を信じていなかったものの、あの国宝級の男が入った温泉ともなると、なんだか同じ湯に浸かっただけでご利益がある気がするし、それだけで効果があるのだとしたら、きっと温泉の効能なんてのも、
実際に多少は効果があるのかもしれない。

彼のおかげで、今まで信じられなかった温浴効果以外の効能も温泉にはあるんだとそう体験できた。
ありがとう、市原隼人。

ー完ー

これまでのコラムは▷コチラ◁からチェック!

ティモンディ前田裕太「売れる前の人生は、長い長い冬休み」【僕のあまのじゃく#23】

ティモンディ・前田裕太「売れても変わらないようにするにはどうすれば?」クレバーすぎる頭のナカ