僕のあまのじゃく#30

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:「気晴らし」

色々と考えて行動しているが故に五里霧中暗中模索の迷宮に迷い込んでしまうことがある。
そんな時、これ以上は考えるとマズいと脳がメーデーを出す。
けど、思考の中で救難信号を出してもどうにもならない。
こうなったら最後、一度気晴らしをするしか無い。

考えすぎて破滅してしまいそうなこんな時は、解決策を模索するよりも、とりあえず自分を守るために気を紛らわせるしかない。
私の気晴らしは、もっぱらゲームにある。

家に帰って時間がある時、事務所の先輩の富澤さんと一緒にオンラインゲームをやって気晴らしをする。
話を聞くと、富澤さんの気晴らしも同様にゲームにあるらしい。
どおりで昔から気が合う訳だ。

日常のことをああだこうだ話しながら、同じチームになって銃を持って撃ち合い、非日常に没頭する。
鬱屈とした感情を忘れられて、楽しい。
オンラインゲームだと、各々がゲームをいじるというタスクがありながら、会話ができるので、ワイワイと知らない人たちと戦い合える。

ただ、我々はすこぶる弱い。
殲滅させてやろうと意気込み、敵に突っ込んで行って、毎度毎度返り討ちに遭う。
あくまで気晴らしだから、そんなに上手くなるほど練習できるほどの熱量もない。
ただ、たかがゲームだとはいえ、毎度毎度負けて、撃ち殺され続けるとストレスも溜まってくる。
本当にムカつく。

ヘッドセットをつけて富澤さんと会話をしながらゲームをしていると、「ああ!やられた!」と富澤さんの断末魔が聞こえ、助太刀に行く。
結果、「やられたあ!」と同じように私も断末魔をあげる。
もういっちょ!と挑んでも、次は先に断末魔を上げるのが私になるというだけ。
敵を倒せずにいると、気は晴れないけど、倒す技術がそこまでない。

最終的には、戦いに生き抜くために、敵と遭遇しないように建物に二人で籠る始末。
これは果たして、息抜きとして成立しているのだろうか。
恥ずかしいことではない、とお互い声を掛け合う。
その時の情けなさったるや。

敵と戦って倒し気分爽快になるはずのゲームのはずが、いざプレイしてみると、ゲームの中でもコソコソと隠れてやり過ごそうとしている。
結局、爽快にプレイができない。
どうしたらいいんだよ!

美酒を味わうためなら致し方ない

それなら、と思い学生時代のゲームの上手い友人を誘って、その友人の力で勝ちを味わおうと閃いた。
富澤さんとは勝利の美酒は味わえないのだ。
すみません、富澤さん。

早速友人に連絡して、一緒にチームを組んでプレイしてみる。
すると、面白いくらいに容易く勝てた。
今まで瞬殺されていたゲームの中で、何度もチャンピオンっていう文字が画面に映り、やったやった!と気持ちい思いをすることができた。

ある日、その友人が「自分の知り合いで一緒にゲームをやりたいと思っている人がいる、その人を加えて3人でチームを組まないか」と提案してきた。
私は、その友人に勝者になる喜びを経験させてもらっている身。

その人がもう一人加えたいというのなら、構わないと許可したのだけれど、いざ3人でゲームをしてみたのだけれど、その新しく参加した人が、ゴリゴリにお笑い好きの女性だった。
ゲームをしているのだけれど「前田さん○○の番組を見ましたよ」と褒めてくれたりする。
これが辛かった。

ご存知の通り、私は自分に自信がない。
「面白かったです」と褒められても、それは番組を作っている人の力であって、私が獲得したものではないと思っている。
私のやっている仕事なんて、別に誰だっていいのだ。
そんなふうに思っている人間にいくら褒めようが、本人が素直に受け入れられるはずがない。

「スタッフさん達さすがですよ」と素直にありがとうも言えない。
「○○さん面白いですよね」と他の芸人の名を言われても、芸人としてのプライドが邪魔する。
大人だから、その場ではプライドを捨てて明るく楽しく話をするけれど、結果としてゲームを終えた後にため息を吐くことになってしまう。

自分でも、なんて厄介な人間なんだと思う。
頭の中でメーデーを発する。
気晴らしなはずだけれど、気を遣ってしんどくなってどうするのだ。
誰とやっても楽しくできる精神を育まねばならない。
とりあえずは、今日も富澤さんとチームになって、敗北していこうと思う。

ー完ー

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