僕のあまのじゃく#32

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:「春」

奴らがやってきた。
花粉の襲来である。
春と花粉は私にとって同義であって、芽吹きと新学期へのときめきに胸躍る季節であるとか言われるけれど、重度の花粉症である私からすると、毎年来る大殺界。

世の中の花粉よ滅せよ、と願うけれど、きっと花粉症の薬を製造している製薬会社とかが困るんだろうな。
自分の悩みが解決されると、また別の人が困るのであれば、と遠慮気味になる人もいるけれど、私は自分の悩みが解決されればいい。

製薬会社の人たちには悪いけれど、世の中の花粉が滅せられることを神社で願うことにする。
そうしたら自然がどうなってしまうか分からないけれど、知ったこっちゃない。
それだけ奴らには苦しめられてきているのだ。

花粉症の私は、薬漬けと言っていいほど、アレルギーの薬を毎日飲み続けている。
この副作用としていつも悩まされるのが、眠気と頭がぼーっとしてしまう。
体液が出なくなるので、目だって喉だってすぐ乾く。
これが本当に辛いのだ。

だから、花粉症じゃない人を見ると、本当に信じられない気持ちになる。
「花粉症って、しんどそうだね」
なんて軽く言われた日には、そいつとは分かり合えない大きな壁が一枚隔たっているように感じてしまう。
もはや別の生き物。
感覚を共有できない別の人種。
私にとっては、この辛さを経験していない人間は、どこまで行っても仲良くできないとまで感じてしまう。

仲間の中に紛れ込んでいたのは…

先日、ロケでくしゃみをしていると
「花粉症ですか?」
と声をかけてくれたディレクターさんがいた。

はい、と答えると、大変ですよね、僕もなんですよ、と言ってきた。
人間なんて単純なもんで、お互い同じ苦痛を感じている事実から、その後の収録は彼と強いつながりを感じた。
我々は仲間なのだ。
共通の敵を持っている人は、例外なく味方。
嫌な担任の先生に対してクラスが一致団結する、あれと同じ現象が起きた。

それにより、良い効果が起きる。
スタッフと精神的に共通項があると認識してからは、より一層カメラの前でのパフォーマンスが上がったように感じた。
チームの一体感というのは、パフォーマンスに影響を与えるのだ。
強固な絆で進むロケだったのだけれど、問題は起きる。

休憩中、目が痒いとかいていたら、ADさんが近づいてきて「花粉症辛そうですねえ」と他人事のように言ってきた。
様子がおかしいな、と思って話を聞くと、彼は「気の毒ですね」だなんて、能天気に言いやがった。
こっち側の人間ではない伏兵がいたのだ。
まさか、このチームの中に、裏切り者がいるとは。

1人でも、向こう側の人間がいるのだとするならば、話が変わってくる。
そこからというもの、ロケで盛り上がっても、けどあいつ花粉症じゃないからなあ、とどこか冷静に考えてしまっている自分がいた。
結果としてロケは無事に終わったけれど、これは仕事に対する姿勢としては褒められたものではない。
如何にかして、花粉をこの世から抹消するか、もしくは、この世の人間全て漏れなく花粉症になってもらうしかない。
どうか、その願いは後者で叶うことを祈りたいと思う。

ー完ー

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