僕のあまのじゃく#40

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:失恋

29年も生きてりゃ失恋の1つや2つある。
そもそも傷つきたくない私は、当たって砕けるなんてもっての外で、砕けないように当たらない、を気をつけて自分が傷つかないように生きてきた。
だから、他人に語れるほどの大失恋を経験したことがないのだけれど、学生の頃には気になる異性なんてのもいたことがあった。
結局仲良くなることもできないまま疎遠になったのだが、こういう小さな好意の喪失も、失恋と呼べるだろう。

ああ、いいなと思っていたのに、と告白をした訳でもないのに好意に見切りをつけてしまう。
もっと積極的に交友しようとすれば、もしかしたらデートくらいできたのかもしれないけれど、当時の私は、きっとその程度の熱量しか相手に対して持ってなかったのだろう。

幼少期の時に遠足で動物園に行った時、
「今からいく動物園は、オカピっていう珍しい動物がいるんだよ」と先生に教えてもらった時、心躍らせて目を輝かせていたのに、実際に動物園に行って会ったオカピは、なんだか思っていたよりも小さくて全く感動しなかった感覚に似ている。
「なんか、そうでもないなあ」って、独りよがりに自分の中で盛り上がってしまっていたので、想像と現実の差に勝手に冷めてしまう。
キリン科に属する珍しい生き物なんていうから、首が長くてデッカい生き物を想像していたのに、ぱっと見はシマウマの親戚っぽい。
幻滅してしまった私は、オカピの前で数分しか足を止めず、結局、象の前でキャッキャ騒いでしまい、オカピ目当てのはずだったのに、鼻で笑って一蹴した後、ろくに見ることをしなかった。
当時のオカピには悪いことをしたなと思う。
けれど、そもそも私の想いを寄せていたオカピは既にこの世にはいなかったのだ。

そんな恋まではいかない好意を自分で冷めさせて、一人で勝手に小さな失恋にしてしまうことがあった。
素敵なご令嬢と、ちょっと話が出来たとしても、たいして話も盛り上がらず、相手を知ることもなければ、私を知ってもらうこともない状態のままそこまで好きに至るまでもなく疎遠になる。

この人なら、なんだか仲良くなれるかもしれない、と思ったのに、蓋を開けてみたら、テニスサークルに所属していて飲み会に日々明け暮れているタイプの人間で、それだけで人間性を決めつけるのは早いのに、なんか、違うな。とオカピのように勝手に幻滅してしまう。
なんだ、この人もオカピじゃねぇか、って。

当時は、そんなことがあると、ああ、自分には精神的欠損があって、他者を遠ざけてしまうばかりに、ご令嬢と懇ろな関係にはなかなか至れないのだと失恋に至った理由を自分に見つけていた。
私がハッピーウェイウェイ学生であれば、きっと突破口も見つけられたのかもしれない。
その点、他者と壁を隔てて、鎖国政策を実施している私には、他者との外交なんて不必要に色々と考えてしまうので、そりゃ上手くいく訳もない。

きっと私が余裕のあって寛容で魅力的な紳士であれば、オカピに勝手に期待しないように、相手に対しても期待もしないし、求めるものも少なければ、きっと真っ直ぐ恋愛できて、真っ直ぐ交際できるのだろう。
オカピに対して勝手に幻滅するような自分には、そんな器ではないと思っていた。
けれど、そんな当時の私に言いたい。

苦手なタイプの人が多くて、勝手に自分で失恋にしていたこともあるだろうけれど、それは君が悪い訳じゃないのだよ。
仲良くなれなかった、というのは、別に私自身が相手に幻滅していただけではなくて、相手だって自分に幻滅していて、嫌いなタイプだわ、と思われていた可能性だってあるし、相手が自分に興味を持っていないのは、相手の男を見る目の場合だってある。

自分にだけ落ち度が100%あることなんて、世の中にはない。
要は、相性が単に悪いだけだったのだ。
いくら私の内面を磨いて、自分がいくら努力したところで結ばれることはないこともあると伝えたい。
そんな自分の欠損を直してでもお付き合いしたい、と熱を上げて相手を追ったこともないのだけれど。
では、私と相性が良い相手とは、となるとまた難しい問題ではあるものの、読者諸兄姉も、失恋した際には、単に相性が悪かったから、くらいに思っておくのが良いだろう。

ー完ー

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