乳がん検診=40代以降に受けるもの、は間違い!

――乳がん検診といえば、”40代以降に受けるもの”というイメージが比較的定着しています。でも実はこれ、鵜呑みにするのは危険なんだとか。それって本当ですか?

林先生

はい、事実です。25歳以降、1、2年に一回は定期検診を受けることを推奨します。乳がんは、若いほど、症状に気づかないことが多い病気です。アメリカでは既に、リスクの高い女性は、乳房の検査を”25歳から受けましょう”と言われているんですよ。

20代、30代は仕事に妊娠出産授乳…と、ライフスタイルが激変する年代。また、近年は女性も働き続ける方が増えたり、生活スタイルがグローバル化するなど環境が大きく変化しています。この世代の患者が増えたのは、その影響も少なからずあります。

遺伝で乳がんになりやすい人が一定数いる、というのも事実です。母、祖母…と、家族や親戚に乳癌を患った方がいる方は、注意しておきましょう。顔が似るのと一緒です。一方、家系に男性が多く遺伝が分からない場合も、検査は受けておきましょう。若い方に最も多い癌が乳がんですので。

一般的に、乳がん検診=40歳以上というイメージがありますよね。これは確固たるエビデンスが40歳以上のものしかないことが理由です。つまり、国として裏付けの少ない若い方の検診を推奨することが難しいという実情があります。検査方法についても然り。胸を機械に挟み、放射線を使用するマンモグラフィという検査方法が推奨されているのは、実はデータ数が関係しています。

とにかく重要なのは【早期発見】

――しこりが段々と大きくなって自分でわかる頃には、すでに症状が進行してしまっていることも。やはり早期発見に越したことはないですよね?

林先生

乳がんは検査と治療が日々進歩しています。進行している状態で見つかった場合でも、複数の治療法を組み合わせることで治すことができるようになってきています。ただ、早期に見つかっていれば乳房をきれいに温存する手術が可能であったり、抗がん剤が不要であったり、治療期間も短期間で済むなど、心身や社会経済的負担は大幅に軽くなります。

当院で無症状で見つかった方の乳がんの平均サイズは0.7cm(2cmまでが早期)であり、早期診断・早期治療に努めることで、ほとんどの方が乳房温存手術を受けています。遠方からの患者さんも多く、痛み緩和や美容外科的手技により、1〜2泊での退院も可能です。

大体”しこり”が自分でわかるのが2cm前後。ただ、若い方は元々胸が張りやすい場合が多く、2cmだと分かりにくかったり、”いつもの痛みかな”ぐらいに軽く考えてしまう方が非常に多いんです。だから、病気が進んでいる状態で発見されることが少なくない。若い方が自分でしこりが気になると来院した場合、大きさが3cm、4cmだったりします。

この1年間で当院で乳がんが見つかった20代、30代の方は、乳房のしこりと乳頭分泌が気になって来院した方が最も多く、病状が進んでいる状態で発覚した方も。一方、3割の方は無症状で、みなさん定期検査で早期乳がんとして見つかりました。

他のがんは症状があるけれど、乳がんは症状があまりないこともあります。検診で見つかるということが多く、自覚症状のない怖い病気です。若ければ免疫力もあるし…というのは通用しません。乳がんにはさまざまな種類がありますが、若い方の乳がんは、そのものが悪いものであることも多く、さらに早く見つからないというダブル要因で治りにくいことが、世界中で問題になっています。


命を守るため、治療の負担を減らすために、定期的な検診と症状があったときには待たずに受診することが大切です。