僕のあまのじゃく#70
ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。
ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡
前田裕太(まえだ・ゆうた)
PROFILE:1992年8月25日、神奈川出身。グレープカンパニー所属のお笑い芸人ティモンディのツッコミ、ネタ作り担当。愛媛県の済美高校野球部に所属した同級生・高岸宏行が相方で、2015年1月に結成。2人の野球経験を活かした『ティモンディベースボールTV』の登録者数は23万超え。ar web連載『僕のあまのじゃく』では、フリースタイルエッセイを毎週お届け中。
テーマ:思い出
昔によく聴いていた曲をふとしたタイミングで聴くと、当時の空気感と風景が強烈にフラッシュバックする。
私だけだろうか。
写真を見て当時のことを思い出すよりも、鮮明に思い出が蘇ってくる。
例えば、私はポルノグラフィティのアポロを聴くと、小学6年生の頃を思い出す。
いまだにこの曲を流すと、あの時に仲の良かった友達4人で、友人の1人の家に集まり、真夏の暑い彼の部屋の中で、クーラーもつけずにパンイチで円になって、念仏のように歌詞を頭に入れて歌っていたシーンがフラッシュバックする。
今やサブスクで曲を聴くのが当たり前になっていたけれど、当時はTSUTAYAでCDを借りてきて、返却するまでに歌詞カードを目に焼き付けるか、自分のノートに書き写したりして覚えていたのだ。
私の生まれ育った地物の相模原の夏は熊蝉が外でワシワシと五月蝿いけれど、我々も友人の部屋の中で負けじとワシワシとポルノを歌って対抗していた。
普通よりも大きめのCDコンポを持っている奴の部屋で、大音量にして曲を流していると、その友人の母親が「うるさいよ!」と叱責しに部屋に殴り込みにくる。
ただ、童子4人がパンツ姿でCDの歌詞カードを見るべく円になって座っている異様な様を見て、「何してるのあんた達」と驚きの方に注意が向いていた。
友人の母親は「クーラーあるんだから、さっさと服着なさい」と我が子たちの半裸で曲を聴くという理解のできない行動に困惑していたけれど、幼少期なんてパンツ一丁で踊っているだけで楽しいのに、この楽しさが分からないなんて、なんて感性の鈍い悲しい大人なのだろうか、と当時の私は他人の親を哀れな目で見ていた。
今になってようやく逆の立場になった時の恐ろしさが理解出来たけれど、むしろ、自分の息子達に対して「服を着なさい」程度の注意で済ませたのにも違和感がある。
私だったらそんな異様な空間を目にしてしまったら、きっと息子達は半裸の悪霊に取り憑かれ、さらなる半裸の子供達を増やすべく悪霊の力が増す儀式としてポルノグラフィティを聴いていたのではないかと考えてしまうだろう。
「悩んでいることがあったらなんでも言いな」と余計な心配をしてしまいかねない状況で、その一言で済ませた友人の母親は、肝が据わっていたか、家でよく見る当たり前の光景だったに違いない。
できれば前者であって欲しいけれど。
アポロの終奏のあたりになると、当時、ポルノグラフィティから緑と赤のリンゴがモチーフになったアルバムが出ていて、それが並んでゲームボーイの側にあったのを目にしてポケモンじゃん!とツッコんで笑いを取っていた場面を思い出す。
(当時はポケモン緑版と赤版が爆発的に流行していた。ちなみに私は緑版を死ぬほどやっていた)
例えツッコミの概念がなかった当時の私にそんな高度なことが本当にできただろうか、もしかしたら自分の脳が勝手に作り出した都合のいい妄想なのではないか、と思うけれど、その時の話の流れと、ぬるくなった麦茶の味まで同時に思い出せるので、きっと確かな記憶だろう。
アポロを聴くたびにこんな風景がフラッシュバックされるので、何してんだ幼少期の自分、と情けなくなるけれど、子供の頃なんて、誰しもが自分でも理解できないようなことばかりしていた迷える子羊だったはずなので、
大目に見てもらいたい。
さて、今日は、マキシマムザホルモンの”ぶっ生き返す”を聴いて悶々としていた大学時代をフラッシュバックさせてこようと思う。
ー完ー
ティモンディ前田裕太「恋の正体は…」【僕のあまのじゃく#69】
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