僕のあまのじゃく#80

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:告白

私は告白するのが苦手だ。

それは意中の相手に好意を伝えるのが恥ずかしいというだけでなく、自分の内面を外に晒すという行為に抵抗があるからだ。
自分の気持ちって自分だけのものだし、それを誰かにああだこうだ言われるのって癪じゃない。
だったら言わない方がいい、という結論になってしまうのだ。
拗らせているなあ、とは言われ慣れているので、読者諸兄姉は心の中に留めておいてもらいたい。

意中の相手に、今日こそ告白するぞと意気込んで会っても、
結局思いを告げられないまま解散してしまうのがほとんど。
意気地が無いといえばそれまでだけれど、傷心するよりは保身に走るのが人間というものだろう。

逢瀬を重ねて、相手が自分に対して好意を持ってくれていると分かっていても、
自分の気持ちを外に発信することを躊躇ってしまう。

数年前、意中の相手に思いを告げるつもりでカフェでお茶をしたことがあった。

その日は、今日こそ思いを伝えるぞ、という気概で会ったのだけれど、
なんだかんだいつも通り話をするだけで、なかなか告白ができなかったのだ。

もしここで断れたら帰り道も気まずくなってしまう。
だったら、帰り際に伝えた方がいいかなあ。
いや、そんなこと言ってたらいつまで経ってもできないまま終わってしまうではないか、だなんて考えていたら解散の時間まで来てしまった。

カフェを出て、駅に向かって歩き始める。
もう帰路につき始めているのだ、早く告げなければならない。

ただ、こういうのは、切り出すのが難しい。
「あのさ」と口を開いても、どうしても勇気が出ずに違う話題を話してしまう。

情けない。
今も充分に情けない性格をしているのだけれど、昔は輪をかけて目も当てられない男だった。

うにうに言いたいことも言えないまま歩を進める。

けれど、流石にそんな私も、ここままではいかん、と意を決した。
新宿駅まで歩いて構内に入った時に「ちょっと伝えたいことがあるんだけど」となんとか振り絞るように言って、ご令嬢の足を止めることに成功したのだ。

よくやったぞ、前田。
あとは思いを伝えるだけだ。

ただ、そこからが難儀だった。

私が「あの、僕は貴女に好意を持っていまして」と口にしたものの、その後の言葉が出てこなかったのだ。
フリーズした私を相手は心配そうに見つめている。

その間にも、私の頭の中では色々な思考がぐるぐる巡る。
そもそも、私は自分の思いを相手に伝えることに躊躇していて、
そのご令嬢とどうこうなりたいという欲から思いを伝えている訳ではない。

だとするならば「好意を持っていまして」の時点で、私の目的は達しているのだ。
これ以上、何を求めると言うのだろうか。

付き合いたい?お前は、自分が相手に好意があるというだけで、付き合うことを相手に要求するのか?なんて自分本位な奴なんだ。
気持ちを伝えて満足しろ!
「好意を持っています。では!」と言うのがベストだろ!
と精神世界の活動で一杯一杯になってしまった。

もう、その沈黙から、御令嬢も何を私が切り出そうとしているのか察していた。
精神世界で手一杯になってモジモジしていると「頑張って」と応援までされてしまった。

なんて情けないのだろうか。
私は、ろくに告白もできない男だという認識を既に持たれてしまっているではないか。

そこから更に5分以上モジモジし続けて、ようやく告白することができた。

そこから懇ろな関係になるに至ったのだけれど、
自分の情けない性格に、嫌気がさしてしまった。
背中を押されても尚、自分の気持ちを口にするのにモジモジしてしまうなんて。
これが10代なら初々しくて可愛らしいのだけれど、その時はもう20代。
成人男性の照れ方としては気持ち悪過ぎた。

結局、私の欠落した人間性のせいで別れてしまったのだけれど、
もし今後、人生で誰かと付き合う流れになった時には、
快活にスパッと思いを伝えられるようになりたい。

ー完ー

ティモンディ前田裕太「私を変えたのはハグリッド」【僕のあまのじゃく#79】

ティモンディ・前田裕太「売れても変わらないようにするにはどうすれば?」クレバーすぎる頭のナカ