中学生くらいの恋愛感情で〝好き〟って思える尊さ
赤坂 アイドルの魅力っていうと、中学生くらいの恋愛観に近い感情を持てるところなのかな。大人になると打算的な考えを判断基準にすることもあると思うんです。でもアイドルは可愛い、性格がいい、とか頭悪く好きになれる。
横槍 言いたいことすごくわかる。隣のクラスの誰々が好き、くらいの感覚だよね。
赤坂 足が速いから好きっていう、その頃の恋愛ができるというか(笑)。ピュアな推し方ができるのが、すごくいいなって思います。
横槍 私は、激烈に歌がうまい歌手の方や演技のうまい女優さんとアイドル、何が違うのかなって考えた時に、本人のキャラクター性や人間性、魅力、いちばん言葉にならない部分で勝負しているのがアイドルなのかなって、なんとなく思います。
赤坂 タイトルにも使っている〝推し〟っていう言葉も改めて考えてみると。こういう〝好き〟を表す言葉は、今までいくつかあったと思うんです。例えば〝萌え〟とか。でも〝推し〟は、そこに恋愛感情や下心を混ぜたくないっていうファン意識を感じるんですよね。純粋にその人を肯定したい、応援したいっていう価値観が〝推し〟という言葉を作ったのかなって。
横槍 そうだね。わざわざ付き合いたい対象のことを〝ガチ恋〟って表す単語があるくらい。恋愛的な目で見ることの方が特異な状況に、今はなっているのかも。
赤坂 最初にタイトル案を出した時は、推しがこんなにホットワードになると思っていなかったので、個人的には助かりました。
〝この子が世界一可愛い〟そう思いながら描いています
赤坂 【推しの子】のビジュアルに関しては、メンゴ先生に任せっきりだよね。もう全幅の信頼を置いているので。
横槍 ありがとう。衣装作画の参考にしているのは、初期のAKB48やアップフロント。あとは「縷縷夢兎(ルルムウ)」というブランドも意識しています。
赤坂 メンゴ先生のカラーイラストは、原色が気持ちいいよね。
横槍 【推しの子】は『かぐや様』を超える彩度で、さらに売り場でも目立ちたいという気持ちから、もともと派手な衣装プラス、差し色で手袋を入れる、みたいな。
赤坂 僕にはできないことなので、メンゴ先生に頼んで本当によかった。
横槍 描いている時は「この子が世界一可愛い」って思いながら描いているんですけど、漫画ってコマごとにキャラが変わるから、すごく浮気している気分になるんですよ。
赤坂 あはは(笑)。
横槍 だから推しキャラって、いないんです。みんな可愛い。
赤坂 そうだね。僕らは、何が可愛いのか、どういう人にみんなは恋をするのか。一挙一動、立ち方から研究して漫画を描いていて。
横槍 四六時中“愛され”を考えているよね。
赤坂 究極、僕が可愛くなりたいとまで思い始めましたもん(笑)。
横槍 いいと思う。その気持ち大事!
赤坂 【推しの子】ではアイドルの生々しい感情やリアルな面も描いているんですけど、「アイドルも人間なんだ」というのが裏テーマのひとつで。傷つくこともあるし、みんな頑張っている。それを伝えることで、推す側も推される側もよい環境がつくれたらいいなと思っています。
横槍 その一助になれたらうれしいですね。
【推しの子】
2020年より、週刊ヤングジャンプにて連載開始。産婦人科医として働くゴローと、彼の推しのアイドル・星野アイが"最悪"の出会いを果たし、運命が動き出す。スター作家コンビが新しい切り口で芸能界を描く衝撃作! 最新5巻までコミックス発売中。
Composition: Honda Rie
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