僕のあまのじゃく#90

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:乙女

生まれながらに性根が捻くれていたのか毛質は今日の今までクリクリの天然パーマだった。
それに加えて幼稚園生の頃の私が興味を示したのがハロキティやバツ丸などのサンリオのキャラクターだったこともあり、よくキティちゃんの傘を愛用していた。

だからかアニーのような髪型でサンリオを身に纏っていた幼少期に「女の子みたい」と言われる機会が多かったのだけれど、これが本当に嫌だった。
そもそも女の子じゃないし。自分のアイデンティティを違うもので上からラベリングされていくような気持ち悪さを感じていたのだ。

だから、幼い子が言われがちな「かわいい」という言葉は私には何も響かない言葉だったし、なんなら避けたいワードであった。

そんな私が生まれたのが8月25日。
最悪なことに、乙女座として生まれてしまったのだ。
生を受けた瞬間に、私の構成要素として乙女座を背負わなければならない人生になったのは災難でしかない。
女の子と言われるのも嫌なのに、自分が乙女と自称しなければならない私の内心は如何なるもんか察してもらいたい。
小学生になる頃には”男らしい”や”かっこいい”とは正反対に位置するであろう乙女座という言葉が自身の属性にあることが嫌で仕方なくて、獅子座と名乗っていたこともあった。
ちょっと生まれるのが早ければ、獅子だなんてかっこいい生き物を背負っていけたのに、とカレンダーと星座を作った人間を呪ったものだった。

中学生になると、百歩譲って乙女座があるのは許そうという寛容な心を持つことができた。
ただ、であるならば、漢座が存在しないことに憤りを覚えていた。
平等じゃねえだろ!
私が中学生の頃には、男女共同参画社会だの男女平等だのを社会に反映させていこう、という風潮だったのに、誰も乙女座があるのに漢座の存在を指摘しないのに一人だけ怒っていて、周囲から変な視線を向けられていたのを覚えている。

この生まれながらに「お前はこの星座だ」と知らない決まりで乙女座であると決めつけられるのも遺憾だけれど、挙句の果てにはその星座で朝っぱらから占いをされるのも不快でならない。
「ごめんなさい〜。最下位は、乙女座のアナタです」だなんてテレビから声がした日には、謝罪をするくらいなら星座に順位をつけるな!と額に皺を寄せてアナウンサーを恨む日々だった。
勝手に占って勝手に謝ってんじゃねぇ!頼んでねぇ!
怒りすぎか。

ってか誰が星座なんて無粋なものを考えたんだか。
星は空を眺めて愛でるだけで充分だろう。
無数の点を無理やり線で結んで、無理のある形に仕上げて、これが水瓶だ、これが双子だ、と暴論を振りかざす。
きっと碌な奴ではないだろう。
調べてみると、その暴論者の名前は古代ギリシャの天文学者プトレマイオスという天文学者。
彼が48個の星座を作って、それが今の星座の基礎になっているらしい。
他にも緯度経度を使って地図を作ったり、天動説を唱えたり、歴史的に偉業をたくさん残している人だったようだ。
沢山の星を見て、地球のはどんな星なのかを考察する第一人者。
舐めていたけれど、とんでもない人物だった。
やるじゃん。プトレマイオス。
自分の人生で、それらの偉業を成し遂げられるとは思えない。
それを成し遂げたというリスペクトは持つべきだろう。
私は認めるべきところは認めることのできる器量のある人間なのだ。褒めてくれて構わない。
その彼がたくさん作った星座の中で、地球の赤道のような概念である黄道と呼ばれる天体の軌道があって、そこを通過する星座を一年12分割した星座を12星座というらしい。
さらに調べると、黄道にある星座は実は13星座あるのだけれど、1年12ヶ月を12分割するのに除け者になった13個目の星座があるらしい。

その13個目の星座、なんて可哀想なのだろうか。
それは蛇使い座と呼ばれる星座らしい。
なんだか、その雑な扱いをされていることに対して同情をすると共に、自分を重ねてしまう。
星座に詳しい人には認知されているかも知れないけれど、一般的には12星座しか知られていないの、苦しいよな。
世の中は知らない人が大半かも知れないけれど、私は蛇使い座のことを決して忘れないからな。
まあたまたま調べたから知っただけなのだけれど。
私の生まれは乙女座に分類されるのだけれど、もう今の私は蛇使い座を放っておくことはできない。
今後は私は私自身を蛇使い座ということにしようと思う。

ー完ー

ティモンディ前田裕太「私の溢れんばかりの才能。それは…」【僕のあまのじゃく#89】

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