僕のあまのじゃく#94

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:アッパレ

私はPEOPLE1という音楽グループが好きだ。

2020年の夏、YouTubeでいつものように無作為に色んな曲を流していたら気を引く曲が流れてきたのがきっかけだった。

作業をしながら音楽を流しているとビビっとくる曲が流れてきたので画面に目を移すと、可愛らしい女の子のアニメーションがポップでメロディアスな曲に合わせてずっと踊っていた。
曲名には「常夜燈」と記されているけれど、ミュージックビデオには歌詞の字幕なんて一切ない。
曲と共にワンカット撮りのように色々なアングルで躍る女の子の映像が続いていた。
作業をしなければならないのに気がつくと手を止めてスマホから流れるオフィシャルビデオを魅入ってしまっていた。
優しいメロディの中に、息苦しい日常をそっと手で後ろから支えてくれるような歌詞。
最後には、今までと変わって、それまで踊っていた女の子の色彩が抜けてサビの歌詞が画面に映る。
その歌詞がまた余計に力強く、身に沁みる。
温かいお風呂に入った時に「あれ、こんなところに擦り傷があったっけ」と沁みる痛みで傷ついていたことに気づくように、常夜燈という温かい湯船が自身の心に無意識に負っていた傷を気づかせてくれたのだ。

それから毎日のように常夜燈を聴くようになる。
ネタを作っていたり執筆をしていたりすると、行き場のない閉塞した辛い夜がやってきたりする。
その度にPEOPLE1とcoalowlという才能のタッグが私の人の心の夜を常夜燈で灯してくれるのだ。
こんな曲を歌う人達、他にも良い曲を作っているに決まっている、と他にも既にアップされている曲を聴く。
そうしているうちに、私はPEOPLE1のファンになった。

そうとなったら、ライブに足を運ぶしかない。
サブスクで今や音楽は聴けるし、YouTubeで彼らの勇姿を見ることはできるけれど、応援をしている行動として一番分かりやすいのはライブに行くことだ。
人は何に、誰にお金を使うかで、人間性が分かるという持論がある。
自分の労働の対価であって有限であるお金を、人は無意識に、また意識的に、自分の大切にしているものに使うからだ。
私は、自分が好きなもの、好きな人にお金を使う人間でありたい。
楽しい思いをありがとう、苦しい思いから救ってくれてありがとう、という気持ちで、彼らのグッズを購入してライブのチケットを買う。
いつまでも自分の好きなものが存在し続けるなんて、そんな都合のいい世の中ではないのだ。
漫画も買わなければ連載は終わるし、ライブに行かなければ、CDを買わなければ解散するバンドもある。
AqoursTimezの解散ライブの時に大勢のお客さんが詰め寄って「お前ら今までどこにいたんだよ」と口にしていた。
それは、こんなに応援してくれる人がいたなら辞めていなかったのに、とも捉えることができるメッセージであって、私は好きなグループに同様の思いをして欲しくない、と強く思った。
集客がなく日の目を見ないまま辞めていった実力のある芸人も数多く見てきた。
だから、いつまで彼らが活動するか分からないけれど、その活動の活力になるように、少しでも頑張ってもらえるように、自分の好きな音楽を世の中に発信し続けてもらうように、願いを込めて、ライブに足を運ぶ。
結果、パフォーマンスに圧倒されて、来て良かった、最高だった、と自分が満足して帰ることになるのだけれど。

2021年、ベッドルーム大衆音楽というライブを見に行った。
まだ数回しかライブをやったことがない、と客前で口にしていた彼らのクオリティは、言葉のそれとは裏腹に群を抜いていた。圧巻とは、きっとこういう現象に対して言うのだろう。
同じ人間でも、ここまで差がつくものなのかあ、と感嘆してしまったのを覚えている。
私たちが誰かを圧巻させられる日が来るのだろうか。
いや、彼らくらい人を圧巻させるほどのものを与えることは流石に難しいかもしれない。けれど、身の丈にあったミニサイズの圧巻を、せめて小巻くらいを与えていきたいな、と思う次第だった。

そんな彼らはCMやアニメのタイアップもあり、今や飛ぶ鳥を落としまくって、鳥類全てを撃ち落とし切って生態系を壊すのではないかという快進撃を見せている。
この間、時間ができたので大阪までライブを見に行かせてもらったのだけれど、彼らのもつ音楽の力に圧倒されて涙を流してしまった。
2023年の彼らのライブは、ただでさえ2年前からクオリティが高かったのに、よりパワーを得て、もはや暴力的なパフォーマンスだった。彼らの勢いは今後も増す一方だろう。

お笑いはなかなかそうはいかない。
集客、動員の力は音楽の方が足を運ばせる力もある。
コンテンツの違いはあるから比べるものではないのかもしれないけれど、音楽ライブに行くたびに、音楽というエンターテインメントの力の凄さを感じるのだ。
今はまだ、私たちは新宿の小さなライブハウスでネタをやるので精一杯だけれど、お客さんを集める力をつけて、少しだけ大きい劇場でネタをやれるよう頑張りたいと思う。
兎にも角にも、彼らの活躍にはあっぱれである。
違う分野の人達の活躍が、良い刺激になる。今後も自分の生きる上でのエネルギーを充填するために注視し続けたいと思う。

ー完ー

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