ドラマ『いちばんすきな花』第9話を考察!

放送中のドラマ『いちばんすきな花』(フジテレビ系、木曜よる10時~)。誰もが一度は考えたことのあるテーマ”男女の友情”を題材にした本作について、コラムニスト・DJあおいさんに見どころや登場人物の心情について、考察してもらいました。

(こちらもチェック)【ドラマ・いちばんすきな花】『置かれた場所で咲きなさいとかいい言葉だよね、でも、できれば最初から咲ける場所に置いてあげてほしい』椿(松下洸平)のセリフに重なる美鳥(田中麗奈)の過去

「人々」は残酷だが、「人」は優しい

美鳥(田中麗奈)は行く先々で『みんな』に嫌われていた
中学時代は同級生の『みんな』に
高校時代は親戚縁者の『みんな』に
塾講師時代は教え子の『みんな』に
高校教師時代は生徒の『みんな』に
何処に行っても『みんな』という存在に疎まれてしまった
そんな先々で、『みんな』にならなかったのが、椿(松下洸平)夜々(今田美桜)、そしてゆくえ(多部未華子)紅葉(神尾楓珠)の四人であった

第8話でのゆくえのセリフが思い出される
ゆくえが勤めるおのでら塾の生徒、穂積朔也(黒川想矢)から『望月(白鳥玉季)がみんなから嫌われている』と相談を受けるゆくえ
『みんながあの子のことが嫌いだからって理由で、みんなにならなかったのは凄いよ、それだけでその子は救われると思うよ』
そのゆくえの言葉を象徴するように、行く先々で美鳥は『みんな』にならなかったそれぞれの四人に救われていた
そしてそれぞれの四人も美鳥に救われていたに違いない
人々は残酷だが、人は優しい

辛い立場に置かれてもいつまでも『人』であった五人は、その優しさの代償として生き辛さを背負ってしまったのかもしれない

「二人組を作るのが苦手」「二人が好き」は相反しているようで実は同じ

椿と夜々、ゆくえと紅葉の四人が初めて出会い、最初の話題になったのが『二人組を作るのが苦手』というテーマだった
それに共鳴して徐々に四人の距離が近付き、いつしか椿ハウスは四人の部室のようになっていった
しかし美鳥は『二人が好き』と言う
自分のためだけに相手がいると思うと安心できる
だから五人にならなくてもいい、それぞれの四人とそれぞれの二人でいたい
そんな美鳥の気持ちを象徴するかのように、美鳥が『いちばんすきな花』と指を刺したファミレスの花瓶には、二本のオレンジのガーベラが活けてあった(ゆくえの回想シーン)

二人組を作るのが苦手、二人が好き
この二つの思想は相反しているようで実は同じのような気がする
事実、私も二人組を作るのは苦手だが、大人数より二人でいる方が心地良い
第1話を振り返ってみても
『三人以上の複数人というのは、一人の集合体でしかない。個々の価値は間違いなく、二人の時がいちばん強い』というセリフもある
ゆくえと赤田(仲野太賀)のような二人組の関係なら場所を選ばない
二人の行きつけのカラオケ店がなくなっても、きっと別のカラオケ店に行くだけで、その関係性は変わらないだろう
椿と夜々、ゆくえと紅葉の四人が椿ハウスを必要としているのは、もしかしたら四人だからなのかもしれない
この先四人が『それぞれの二人』になることができたのなら、きっと椿ハウスのような部室は必要なくなるだろう

各々の美鳥とのエピソードの締め括りとして、各々がいつか美鳥の帰りたい場所ができることを願っている
そんな四人が美鳥の帰りたい場所(椿ハウス)を四人の部室にするわけがない
しかし美鳥も、四人の居場所を奪ってまで自分を通すとは考えにくい
一旦北海道に帰ったが、また東京に戻ってくる絵も想像できない
どう考えても大円団のハッピーエンドにならないシナリオで頭が痛くなる
唯一の救いは、来週はまだ最終回ではないっぽい、ということだけだ

それにしても、赤田のネクタイが相変わらずダサいのがとてもいい
妻である峰子(田辺桃子)が毎日赤田のネクタイをコーデしている姿が想像できる
あのダサいネクタイには『誰に何と思われようと妻の美意識を信じる』という赤田の気概が感じられる
あれはあれで愛なのだろう
そしてゆくえの血液はきっとメロンソーダで出来ているに違いない

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