僕の極上の湯メモリーズ

心ほぐれる自宅のお風呂、非日常感を味わえる温泉や銭湯、心身ともに整うサウナ…。

その日の汚れを落として身体が温まるのはもちろん、癒されたり、リフレッシュしたり、〝湯〟には計り知れない魅力がある!!

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僕には物語とサウナしかない

「誤解を恐れずに書くが、僕には物語とサウナしかない。

他には何もない。それぐらい、サウナが好きだ。風呂場が好きだ。

映画監督として、おそらく日本で一番好きな監督だと自負している。好きが高じて『ネッパ』『サウネ』という短編を撮ったし、いつも浴場で物語を考えている。近年の僕の映画はほぼ風呂場で生まれたと言って過言ではないだろう。

基本的に3日行かないともうダメになるので、週2~3は必ず風呂場に行っている。無理してでも行く。寝る時間を削ってでも、〆切を延ばしてでも。なぜなら僕には物語とサウナしかないからだ。

サウナと言っても、風呂場がないサウナはサウナではない。個室サウナは風呂がないから好きじゃない。風呂があるサウナが好きだ。静かな風呂場が好きだ。陽キャと子供がいない風呂場が好きだ。

特に、炭酸泉が好きだ。炭酸泉が好きという意味では、映像業界では、おそらく世界一だと自負している。いちいち一番を自称する意味がわからないし誰とも競っていないのだが、炭酸の泡で視野が狭くなっているのかもしれない。

炭酸泉と一言で言っても、奥が深いのだ(炭酸泉の深さは浅い方がいいけれど)。基本的には、体温にほど近い温度の36~38℃。いわゆる交感神経を刺激する熱いお湯とは違って、ぬる湯、と言われる風呂だ。そこでは、副交感神経を優位にして、とにかくリラックスすることを目的とする。普段スマホを手放せなくて仕事のことをすぐ考えてしまう君にとっては、デジタルデトックスも含めてうってつけだろう。わかりやすくシュワシュワする炭酸泉もあれば、炭酸が溶け込んでいるから炭酸泉だけれどシュワシュワしない、という風呂もある(その点においては『綱島源泉 湯けむりの庄』が有名だ)。

炭酸泉でマストの1位は、川崎の『朝日湯源泉ゆいる』だ。ここで書くのははばかられるのは、あまりみんなに行ってほしくないからだ。混んでほしくない。ただでさえアウフグースとして有名な場所だから、これ以上人気になってほしくないが、ここの炭酸泉は僕の中で日本一だと思う。半日あると、ゆいるに行きたい。ゆいるに行きたいなと思うと気分が高揚する。書いてる今だって行きたい。体温よりちょっと低いぬるさで、どこよりもシュワシュワしていて、時折生レモンとかラベンダーとか入れちゃうんだから。毎時間やるアウフグースも有名で、僕の推しはラブリー中野と蒸しリーマン笹森だ(わからない人は調べてほしいし、調べなくてもいい)。もちろん炭酸泉以外の風呂も、温泉である。

続いて炭酸泉2位は安定の「新宿テルマー湯」。歌舞伎町の真ん中で24時間営業はもちろんのこと、どこよりも広い炭酸泉と、あの繁華街で黙浴を徹底している愛おしさ。愛おしすぎて、テルマー湯の裏で映画を撮影してしまったぐらいだ。テルマー湯関係者が、松居映画のファンでいたおかげで快くOKしてくれた。テルマー湯が好きでよかった。じゃあ1位だ。テルマー湯炭酸泉のシュワシュワ具合はもちろんのこと、温度もついウトウトしてしまうぐらいのぬるさだ。ただ、陽キャに当たってしまう恐れもある。その場合は『南麻布テルマー湯』に行けば、あそこはいつも炭酸泉がすいているので大丈夫であろう。余談だが、広さだと池袋の「タイムズ スパ・レスタ」もいい。

炭酸泉3位は、悩んだのだが、同率で『溝口温泉 喜楽里』と『湯どんぶり栄湯』を推したい。喜楽里はなんと言っても、安くて静かで、地元民とサウナを愛する人しかいない。露天温泉もあるし、寝湯の深さが何より素晴らしいのである(寝湯といえば『THESPA成城』の浅さも推したい)。湯どんぶり栄湯に関しては、特筆すべきは炭酸水風呂だろう。他には類を見ない、炭酸水風呂。水風呂が炭酸って! まるで自分のために作られたみたいだ。そして、まるで自分のために作られたみたいだ、という顔をしてみんな入ってるのだ。もちろん露天もある。心配するな。」