坂東龍汰、舞台となった岐阜県の感想は?「飛騨が第二の故郷みたいに」
――映画『君の忘れ方』で坂東さんが演じるのは、婚約者を突然失ってしまう主人公の昴。西野七瀬さん演じる亡き恋人の美紀が昴の目の前に現れますが、彼女は幻影なのか…本作を観ていて不思議な感覚になりました。
演じる側がそれを把握しておくことは結構大事なポイントで。美紀の意思で出てきているのか、昴の意思で呼んでいる幻影なのか、(作道雄)監督と西野(七瀬)さんが話し合っているのをそばで見ていました。
――坂東さんはその話し合いの答えを聞きましたか?
いや、僕は曖昧にして演じていました。昴は知る必要のない立場だと思ったので。映画を観ている人も、なんだろうって迷いながら楽しんでもらえると嬉しいです。
――生前の美紀と過ごしたシーンが少ない中で、恋人への気持ちをどのように構築しましたか?
ふたりの思い出写真が劇中に出てくるんですけど、その撮影で初めて西野さんにお会いしました。とてもフランクな方で接しやすい印象でしたね。僕は美紀と過ごした実感を得るために、その日の写真を撮影期間中はお守りのようにずっと持っていたんです。僕の中に愛おしい人としての美紀を存在させるのに、これがとても効果的でした。
――大事な人を失うというテーマは、いわゆる“お涙ちょうだい”な作風にもなり得ますが、本作は涙というより、じんわり心に響くものがあるように思えます。
劇的なシーンがあるわけではないんですよね。昴が人との出会い、お母さんとの出来事を経て、本当にすこーしずつ気持ちが変化していくのを淡々と、丁寧に追っている映画なので、観ているとじわじわと心に染みてくる。
――淡々としながらも、昴の感情の機微が痛いほど伝わってきました。演じる点で意識したことは?
この映画にとって何が必要なのかを考えた時に、足し算でも引き算でもなくて、そこに昴として居ること以外にやりようがないという感じでした。監督から「客観的な見方を一回捨てて昴の主観で演じてほしい」と言われていたので、主観を大事にしながら自由に表現できました。
――舞台となる岐阜県・飛騨高山のロケはいかがでしたか?
まず食事がおいしかったです! 名物の飛騨牛を目当てに、みんなで毎日のようにいろんな焼肉屋さんに行って食を満喫しまくりました。あと安峰山の上から眺める雲海がめちゃくちゃきれいで。ご来光がパーンッと眩しくて、幻想的な場所でした。なんだか、飛騨が第二の故郷みたいになっちゃって。また行ったらスタッフのみんなに会えるような気持ちになるのは、このチームで過ごしたからなんだろうと思います。
――そのくらい一致団結して出来上がった本作。見どころを教えてください。
ずっと寄り添ってきたパートナーが亡くなってしまった方の中にはそれぞれに思い出があるので、この映画から受け取る感情は十人十色だと思います。まだそういう経験をしてない方も、今後の心構えというか、昴が参加したグリーフケア(大切な人を失った悲しみのケア)をひとつの選択肢として知るいい機会になると嬉しいです。
――坂東さんは映画の公式サイトに、この作品は「自分の過去の経験と向き合うきっかけになる」とコメントされていますね。
小さい頃に身内を亡くした過去があるので、この脚本を読んで他人事とは思えないところがありました。
――実際に演じて向き合うことはできましたか?
そうですね。自分のそういう部分に感情が触れてくる瞬間はあったので、演じてよかったと思います。最初は混乱したし、辛いと感じることもあったんですけど、後半につれて心が浄化されていくような気がしました。大事な人を忘れないこと、思い出すことの大切さを前向きに捉えて、過去にあった出来事すらひっくるめて肯定してもらえる。そういう気持ちになったのは、この作品が優しく寄り添ってくれる物語だからだと思います。1ヶ月の撮影期間、昴と過ごした時間はすごく濃かったです。
人に興味を持つことがコミュニケーションの原動力
――映画『シサㇺ』ではアイヌの青年の顔を見せてくれ、ドラマ『ライオンの隠れ家』では自閉スペクトラム症の青年を演じていました。坂東さんの演技力がネットニュースになるほど魅了される視聴者が増えています。仕事において、スキルアップのコツがあれば教えてください!
うーん。前からやっていることは変わらないです。でも、“出会い”は必要かなと思います。どれだけ出たい作品があっても、それを作る人と出会わなければチャンスはないので。
TBS金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』でご一緒した松本(友香)プロデューサーは、『この初恋はフィクションです』から始まり『ユニコーンに乗って』、そして今回『ライオンの隠れ家』と続いて、すごくご縁を感じています。
だから計画的にスキルアップするというよりは、出会った人、ひとりひとりを大切にして、目の前の仕事にしっかり向き合っていくことが大事なのかなと思います。
――arに登場するのは本誌を含めて4回目になりますが、いつも気さくにお話をしてくださるので、坂東さんのコミュ力の高さもご縁に恵まれる理由だと感じます。
僕にも気持ちの浮き沈みはありますが、それでもやっぱり、人への興味が根本にあるんだと思います。ひとりとして同じ人はいないし、その人の歩んできた人生を僕には知り得ない領域なので、少しでも会話してその領域を“知る”ことに興味があるんですよ。その探求心を常に持ち続けるというのは大事にしています。人や物に対して興味がなければ、何かを演じることも難しくなってしまうので。
――でもさすがに、現場で出会った全員とは仲良くはならないですよね??
例えば作品もいろんなジャンルや色があって、その中で好きな映画とかドラマ、好きな芝居のタイプは個々に持っているものですよね。そこに共通言語がある人とはおのずと仲良くなるし、プライベートでも会うようになるのかな。要は自分の好みが合うとか、趣味が同じ人とは自然と友達になる感覚。
――自分の使う言葉によって人間関係がつくられるのは納得です。ポジティブな坂東さんの習慣も参考にしたいのですが、朝のルーティンをひとつ教えてください!
最近、調香できるお店でオリジナルのルームフレグランスをいくつか作ったんですよ。とくにお気に入りはひのきの香り。で、朝起きてからベッドメイキングをして、そのあとプシュプシュッと部屋にルームフレグランスを吹きかけるのが日課です。現場に香水をつけていかないぶん、目覚めてから家を出るまでの時間をいい匂いで過ごしています。
――香りがお好きなんですね。
うん、大好き。香りフェチです。ルームフレグランスはシュッシュって吹きかけるだけだからラクですよ。朝時間が心地よくなります!
【服クレジット】
シャツ¥33,000、ニット¥50,600/URU(ENKEL ☏03-6812-9897) パンツ¥68,200/THOUSANDS(ELIGHT Inc. ☏03-6712-7034) シューズ¥63,800/Paraboot(Paraboot青山店 ☏03-5766-6688) その他/スタイリスト私物
Styling: Lee Yasuka
Hair Makeup:Goto Yasushi(OLTA)
Text:Iida Honoka
Composition:Kamakura Hiyoko
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