東洋哲学的で女子の悩みに寄り添いたい!
「すっと読めて、心が軽くなった」――そんな感想が殺到している哲学エッセイ『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』(2024年・サンクチュアリ出版刊)。著者であるしんめいPさんは、東大卒の元こじらせニートだったとか!?
めっちゃ頭いいのに、めっちゃダメな人の気持ちも分かってくれる...そんな救世主(?)がarwebに登場です!
記念すべき第1回のお悩みは…「絶対浮気されない方法を教えてほしい」。
【お悩み】信じきって自由にさせていたら、気がついたら浮気されていました。「絶対に浮気されない方法」ってあるんでしょうか?(ar大好きさん/29歳・女性)

残念ですが、そんなものはないです!質問者さんも、ないと分かりながら相談されているんじゃないでしょうか。
そんなぁ…初回の一言目から冷たいですね!東洋哲学で女子を救ってくれるんじゃなかったんですか?(泣)


ただ、僕から言えることがひとつあって。質問者さんは浮気されて、すごくむかついて頭にきて、おそらく”黒い気持ち”が湧き上がってきていると思うんですけど、それって言ってしまえば、排泄物みたいなものなんですよ。つまり、出すしかないもの。もし受け止めてくれる知り合いがいるんだったら話をして、泣いたり悲しんだりして、そうこうするうちにどこかで底打ちしたときに初めて、ちょっと客観的になれると思うんですよね。
なるほど。でも日本人って、そういうの苦手じゃないですか?“黒い気持ち”を外に出すことってカッコ悪い、というか。


たしかに、感情を外に出すのはあまりよくないことだと考えてる人も一定数いますよね。
辛いから泣くとか、むかついたから悪口を言うってことをせずに、ひたすら隠して溜め込む人、多いと思います。むしろそっちのほうが大人、みたいな風潮すらありますけど、でも感情を外に出すというのは、東洋哲学的にはいいことなんですか?


仏教では、怒りの感情はよくないものだとされていて、よく"火"に例えられるんですよ。火ってはじめは小さく燃えているだけでも、放っておくと山火事みたいに手が付けられないくらい、大きくなってしまいます。だから小さいうちに消しておくことが大切だ、とよく言われるんです。
もし”火”、つまり悪い感情を見つけても、『これは”火”じゃない』と認めずにいると、どんどん燃え広がって危ない。『あ、いま”火”が広がりつつあるな』という現実を、まずは直視すること。その上で、燃え広がってしまう前に気分転換したり、お坊さんだったら瞑想したりするのがよいとされているんです。
悪い感情をなかったことする――自分が浮気なんかで怒るような人間だと認めたくない!となってしまうと、その火はどんどん大きくなって、取り返しがつかない状況になってしまうんですよ。

悪い感情は”火”なんですね!早く気づいて早く消さなきゃ、というのは納得です。


僕も以前は、マイナスの気持ちを外に出せずに、内に溜め込むほうでした。自分の心の中には、仕事で理不尽なことを言われた怒りとか、人間関係のストレスとかで、”火”みたいなものがあったはずなのに、見ないようにしていたんです。だって、そんなことでイラついている自分はカッコ悪いし、嫌だから。そうして気持ちを外に出さずにいるとどうなるかというと、たとえばファーストフードをバカ食いしたり、徹夜して働きまくったりとかして、わざと自分の身体を壊すような行為をしてしまうんですよね。自分の心の中の”火”を無視するために、自分でも無自覚なまま、自分を壊し続けていたんです。
マイルドな自傷行為ですね。やり場のない怒りを自分にぶつけてしまっていたんですね。


そうならないために、とにかくまずはそこに”火”があると認識することですね。そして”火”を直視することが大切だと思います。それって難しいことだし、プライドが傷つくことでもあると思うんですけど、怒っている自分を認めることが第一歩、だと思います。
自分の中の”火”を認める、ですね。質問者さんへの回答としては『絶対に浮気されない方法はない』ということでしたけど、”火”を認めたら質問者さんは救われるんでしょうか?


この方の気持ちを察するに、浮気されたことに怒っている自分を認めたくなかったんだと思うんですよ。だから、何らかの『方法』で解決できたらいいのに!……そう思って私に質問してくださったんじゃないですかね。もしそういう方法があるんだったら、浮気されて怒る自分を見なくて済むから。
なるほど! “火”を見ない方法を無意識に探していたんですね。


あのー……おならってあるじゃないですか。
突然ですね。女性が見るWebサイトからもっとも縁遠いワードが出てきました(笑)。


全員がおならをするわけじゃないですか。当然していいのに、なんだか社会的には、しちゃダメみたいな感じになってる。でも、おならをしてる自分を認めないで我慢すればするほど、やっとおならしたあとにはクサい空気が残るじゃないですか。 それと一緒です。
たしかに!溜めれば溜めるだけつらいし、クサいし…いいことがない!


そうです。街中でもおならできちゃう人は、一発一発があんまりクサくない(笑)。うんちはもっとそうで、出すのを我慢してるってことは、身体にめちゃ溜まってるってことですからね。それは当然、身体にもよくない。……っていうのは例え話ですけど、でもやっぱり怒っている自分を認めて、外に吐き出すことは大切だな、と僕は考えています。
~本日のまとめ~
『絶対に浮気されない方法』はないが、浮気をされて怒る感情をまずは認め、その感情を外に出すことで、見えてくるものがある。
illustration:おがわらあや