東洋哲学で女子の悩みに寄り添いたい!
「すっと読めて、心が軽くなった」――そんな感想が殺到している哲学エッセイ『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』(2024年・サンクチュアリ出版刊)。著者であるしんめいPさんは、東大卒の元こじらせニートだったとか!?
めっちゃ頭いいのに、めっちゃダメな人の気持ちも分かってくれる...そんな救世主(?)がarwebに登場です!
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第5回のお悩みは「集団の中で喋れなくなる…どうすればいい?」。
【お悩み】一対一では話せるのに(何なら饒舌)、集団になると一気に話せなくなってしまいます。なぜでしょうか。どうすれば上手く対応できるか知りたいです。(PCさん、23歳)

シンプルかつ深いご質問だなと思いました。すごく共感しますし、僕自身かなり思い当たる部分があるんですよ。僕、集団で喋るときは”サイコパスモード”みたいな感じですから。もう37歳なのでおそらくそんな違和感なく喋れてはいると思うんですけど、自分としては”接待モード”というか。
えっ。そうなんですか?


集団で喋る時のモードスイッチオンみたいな感じで、その場が円滑になることだけを考えて、自分が気持ちよくなることは別に考えないんです。”自分の感情無視モード”とも言えますね。
そのモードは、習得されたんですか?


しんめいP
そうですね。最初はやっぱり会社に入ったのが大きかったです。僕としてはキーワードは『怒られる』なんですよ。社会人になると気を遣わないといけない相手、怒らせちゃいけない相手に出会うことが増えるので、なんだか本音で喋ったら怒られちゃいそうな気がしてたんですよね。20代の頃はどんな発言が誰の地雷なのか、まったくわからなかった。ようやく最近になって、『このあたりまでは喋っても大丈夫なラインだな』っていう感覚がわかってきたから、大人数でも喋れるようになってきました。
ar編集部
なるほど、社会経験とともに温度感や距離感の目安がつかめてくるんですね!


とはいえ、今の時代って僕が20代だった頃以上に、たとえばSNSでふいに発言したことが全然知らない人にめちゃめちゃ叩かれる…みたいなことが日常的にありますよね。だから、そりゃ喋れなくもなるよなぁと思います。
ar編集部
この質問者さんも『怒られる』ことを無意識に避けている結果、防御心が働いて、集団で喋れなくなっている可能性が高いのでしょうか?


そうですね。それに加えて、”本音で喋れない”っていうジレンマもあると思います。質問者さんはお若いですが、若い時って『その場をいい感じにする方法』とか、わからないですよね。何を言ったら誰がどう喜ぶか、全然わからない。その不安もあるんだと思います。
ar編集部
たしかに…。耳あたりのいい内容をいい感じに喋れるほどネタもないし、かといって本音は言えない。それで黙ってしまうのかもしれません。


本音っていう部分を少し深堀りすると、僕自身はどっちかというと、自分のことを変か普通かというと、"変寄り"だと思ってたんですよ。つまり本音で喋った時に共感されにくいとか、そんなこと考えてるのは自分だけ、こんなことが好きなのは自分だけ…みたいなことが人より多いタイプの人間だったと、少なくとも若い頃は思っていて。
ar編集部
なるほど、自分は理解されにくいタイプの人間だ、と。


一対一なら、仮に本音で喋るとしても、相手のテンションとかタイミングを探りながら喋れるけど、大人数となるともう、誰にどう思われるかわからない。だから本音を出しにくいんだと思います。そう考えるとある意味、自分の独自の感性を持っている人ほど、この悩みを持ちやすくなるだろうなと思いました。
変な自覚がある人でも、変だと思われることは怖いんですね(笑)。


ar編集部
それはつらいです…。


僕で言ったら、東洋哲学を深掘ってる人ってやっぱり少数派で、少なくてもメジャーではないので、安易に話題に出すと引かれちゃったりもするんですよ。東洋哲学に限らず、僕は人があまり好きにならないようなものを好きになることが多かったんですけど。それで社会に出て、自分と違う感性の人たちとも多く触れ合ってくる中で、『ここまでのラインだったらこの人には届くかな』みたいな塩梅が少しずつつかめてきた感じがします。わかってもらえない痛みと戦いながら、少しずつここまでやってきた感覚なんですよね。
ar編集部
すごい! 本音の出し方のコツをつかんだんですね。


しんめいP
だから僕が去年書かせてもらった本も、20代のときだったら書けなかったと思うんです。おそらく人との交流が足りてなかった。30代半ばのタイミングでやっと、自分の感性を多くの人と共有できそうだなって思えたところがあります。
ar編集部
人との交流が足りてなかった、ですか。深いなぁ。


なので、ご質問に戻ると、このお悩みって実は素晴らしいことだと思うんですよ。一対一で話せることがそんなにあるっていうのは。それだけ本音で深く、熱く話し合えることがあるからってことですよね。
ar編集部
たしかに! むしろ逆で『集団なら軽いノリで喋れるけど、一対一だと話すことがない』っていうお悩みだって、あり得ますもんね。


しんめいP
はい。だから僕が20代の自分に伝えるなら、『しんどいと思うけど、一対一の会話を続けていくんだぞ』っていうことですね。理解されないような内容も、思い切って人に話してみると、否定されたり肯定されたり、いろんな経験をすると思います。そうやって閉じこもりすぎずに続けていくと、いつか集団の中でも本音に近く話せるようになって、自分の感性を多くの人に届けられるようになる日が来るんじゃないかな、と思ったりしました。
ar編集部
なんか、感動的です…!


その人だけの感性を持ってる人は特に、理解されないという試練は必ず起こると思います。最初はちょっとつらいけど、そこで折れずに、自分の中の特殊な感性を保ち続けてほしいです。そしてその集団のことも、『わかってくれない』みたいにネガティブに捉えすぎずに、いつか共有できる日が来ると思いながら過ごしてほしいですね。
ar編集部
はい。勇気を出してボールを投げたら、響く相手が見つかるかもしれませんね! 質問者さん、応援しています!


ちなみに東洋哲学では、道元(どうげん)というお坊さんがいまして。道元は禅僧で、『大事なことは言葉じゃねえんだ』みたいなスタンスでとにかくただ座っていなさいという教えを説いてた人なんです。なんですけど、道元自身は、悟りの境地について95巻ぐらいの本を書いてるんですよ(笑)。
ar編集部
やっぱり、めちゃくちゃ言葉だった!(笑)


どれだけ言葉を尽くしても、足りないような内容なのかもしれないですね。
~本日のまとめ~
自分だけの感性が理解されないことは怖いけれど、いつか共有できる日が来る。いろんな経験を積んで、少しずつ集団の中でも話せる塩梅を身につけよう!
Text: Shinoda Sae
Illustration:おがわらあや

