今回お話を伺うのは、「TODAYFUL」デザイナー・ライフスタイルショップ「Life’s」ディレクターの吉田怜香さん。ファッションやインテリアなど、洗練されたスタイルが多くの人々から支持される、まさに女性の憧れ的存在です。そんな吉田さんは2020年7月に第一子をご出産。出産後も変わらずキャリアを重ね、キラキラと輝き続けている彼女に、キャリアと子育ての両立について聞きました。
“仕事が落ち着くタイミング”がないから、やってみるしかない
「もともと『子どもが欲しい!』という考えはあまりなかったんです。人生において一回は母親を経験してみたいな、くらいの感覚。なので、何歳頃に…とか、タイミングを考えての妊娠・出産ではありませんでした。
ただ私の場合、“仕事が落ち着くタイミング”というものが来るとも思えなかった。自分のなかで仕事を辞めるという選択肢はなかったし、かといって“落ち着いたら子どもを…”なんて言っていたら、たぶん一生その時は来ない。子どもが出来たら出来たでやってみるしかないと思っていました。
妊娠後は、結果的に産休・育休はほぼなし。幸い本当に元気な妊婦で、計画無痛分娩であらかじめ入院日が決まっていたこともあって、入院当日まで働いていました。さすがに当日はもともと予定は入れていなかったけど、入院前に洋服のサンプルが上がってきたという連絡が来たから『じゃあ、一回オフィス寄ってから病院行くわ』って(笑)。産後も、子供を外に出せない1ヶ月間は自宅で出来る業務をしていました。
休まないことを推奨しているわけでは全くありません。しんどかったらもちろん無理はせず、ただ、妊娠や出産に対して、ハードルを上げすぎないようにしていました。
私の場合は性格的に家でぼーっとするのが向いていなくて、妊娠中も産後も仕事をしている方が楽だった、というだけ。一般的なイメージや周りに左右されることなく、自分自身にとって最善の判断ができれば良いのかなと思います」
仕事よりも子ども優先。子育ては旦那さんとの協力プレイで
「もちろんどちらも大事だけど、今は仕事よりも子育て優先。これまで19時頃まで仕事をしていたのが17時には家に帰らないといけないし、帰宅後も子どもがいる場で仕事をするのは難しいから、家での時間は基本的にはオフ。物理的に仕事にさける時間が短くなった分、やる時はやる、と効率的に動くようになりました。
それでもどうしても外せない大事な撮影などがある時は、旦那さんやシッターさんに頼るという選択肢も。今までと同じようにはいかないから、誰かに任せられることはお願いして、甘えています。
変わらず仕事を続けるためには、なにより旦那さんの協力が必要不可欠。今は保育園に通っていますが、産後すぐは昼に働いている私と、飲食業で夜から仕事に出る旦那さんとで、それぞれワンオペのような生活をしていました。『旦那さんに赤ちゃんを任せるのは怖くない?』と質問されることもあるけど、むしろ私より頼もしいくらい。だって実際、母乳以外、女性に出来て男性に出来ないことなんてないですからね!(笑)
ただ、女性は子どもを自分のお腹で育てたという絆がある分、男性の立場になることも大事かなと思います。生まれてすぐの宇宙人のような赤ちゃんを、いきなり我が子だと言われても難しいだろうな…と思うので、母親、父親として、同じペースで歩んでいくことを意識しています」
子どもを“自分の所有物”と考えず、一個人として接する
「育児は、最低限のことはするけど基本的には見守り型。周りからは『子育て、5人目ですか?』と言われるくらい、ゆるゆるなタイプです(笑)。『哺乳瓶、毎回消毒しなくても大丈夫か』って、軽く洗って次のミルクを入れちゃってたくらいにはズボラです(笑)。
子育てで大切にしてるのは、“自分の所有物”という考え方をしないこと。2歳9ヶ月になる娘には、危ないことや人に迷惑をかけること以外は『これしちゃダメ』とはあまり言わず、好きなものを食べて、好きな時間に寝てね、という感じ。
だってもし私なら、全然眠くないのに『9時だから寝なさい!』って言われても無理な話だよって思うから(笑)。まず子どもの立場になって考えて、親の都合で育てないようにしています」
怒ったのは3回だけ。娘のためにも、自分時間で心の余裕を
「2歳9ヶ月の娘に対して、声を大きくして怒ったのはこれまで3回だけ。その3回はすべて、娘が悪いというより、自分に余裕がないことが原因でした。
例えば、仕事に追われてバタバタしている時に娘が飴ちゃんをぶち撒けて、イラッとして怒ってしまったことがありました。でもそれって、私が仕事が終わってスッキリしている時だったら、そこまで怒っていなかったと思うんです。
子どもの問題というよりは、自分の心の状態の問題。なので日頃から仕事のスケジュールを調整したり、周囲に頼ったりして、なるべくいっぱいいっぱいにならないよう気をつけています。
娘が保育園に通い始めてからは一人の時間が増えて、今は仕事前に好きな音楽を流しながら家の掃除をしたり、お香を焚いたり、ゆっくりメイクをしたりする朝のひと時がささやかな贅沢に。ほんの少しでも自分の時間があるだけで、心に余裕が生まれます」
仕事も子育ても我慢はしない。自分が幸せでいることが最優先
「仕事でも子育てでも、共通しているのは“我慢をしない”ということ。誰かのためではなく、自分が可愛いと思うもの、良いものを作れたって言えるように日々仕事を頑張っているし、基本的には自分本位。自分のご機嫌を保って良い状態に整えておくことが、結果的に良い仕事に繋がると思っています。
子育ても同じで、娘に対して『◯◯してあげたのに』『あなたのために』とは言いたくないから、例えば遊びに行く時も公園ではなくカラオケなど、自分も楽しいと思える場所を選んだり。自分自身が幸せな状態で娘と向き合えるように、仕事も子育ても我慢せず、ある程度“自分優先”で生きることが大切だと思います」
母になって広がった仕事の幅。育児中の方の気持ちに寄り添えるように
「『TODAYFUL』のお客様は主婦層の方も多く、私自身が妊娠、出産をしたことで、そういった方々の気持ちや悩みがよりわかるようになりました。
育児中の方の『キレイなお母さんでいたい』『母親だけど女の自分もなくしたくない』といった気持ちにもすごく共感できるので、諦めずに一緒に頑張ろう!という想いで、これからもファッションやインテリアなどを提案していけたらと思っています。
また、2年前に立ち上げたオンラインコミュニティ『Ours.』では育児日記も公開していて、読んでくださった方から『励まされました』という声をすごくたくさんいただくんです。子育てをする上で、一番の敵は孤独だと思っていて。なので、母親として今までとはまた違った側面を発信をすることで、お客様やコミュニティの参加者さんと繋がれるようになったのは、出産や育児を経験してよかったことのひとつだなと思っています」
Photo:Hanamura Katsuhiko
Text:Hikasa Reina
Composition:Suemura Mana