真似メイク第一人者・かじえりが語る、山あり谷ありの10年間。

幅広い世代から支持されている、発信型メイクアップアーティスト・かじえりさん。
高校時代に書いていたブログ、芸能人の”真似メイク”の記事で一躍有名に。

山あり谷ありの10年を経て、今ではYouTube配信やコスメブランド「Enamor(エナモル)」立ち上げと更に活躍の幅を広げています。
仕事に対する思いや育児との両立など、これまでのヒストリーをお聞きしました。

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かじえりさん

転機は高校3年生!"バズる"を体験「最初は日記みたいな感覚だった」

「中学生の頃(14歳)、プリクラがとても流行っていて、仲良しの友達とよく撮っていたのですが、みんなから『一人だけ盛れてる!』ってよく言われてて(笑)。友達から『メイクを教えてほしい』『メイクをしてほしい』って頼まれるようになって、メイクをすることになったんです。そうしたらすっごく喜んでくれて。それが嬉しくて、その頃から"メイクを仕事にしたい"と思うようになりました。

高校生の時からブログでメイク記事を投稿していたのですが、最初は完全なる趣味でした。周りで流行っていたのもあって、誰かに見てほしいというわけではなく、日記みたいな感覚。

そんなふうに自分の記録として、"今日のメイク"や"使ったコスメ"を載せていると、どんどんレビュー数が伸びていったので、これは誰かの参考になっているのかも?と思いはじめたころ、真似メイクの記事で、今でいう"バズる"を人生で初めて経験しました! ブログのランキング上位の方が"この子すごい!"って私のことを紹介してくれて、それからどんどんPV数が伸びたんです。40万を超えた時はびっくりしちゃいました。いつも2、3万PVでもすごい見られているな、という感覚だったので…。そのことが大きなキッカケとなって、"日記ではなく誰かに向けて発信する"ということを意識するようになりました。

"発信型"メイクアップアーティストの道へ「これは自分にしかできない」

「ブログを続けながら、高校を卒業してメイクの専門学校に通っていたのですが、ブログのPV数が安定していたこともあり、モデルさんに綺麗なメイクをするだけでなく、自分自身にメイクをして発信する方が、より沢山の人のためになれるんじゃないかと思ったんです。

私自身、雑誌のメイクは参考にしていたけれど、モデルさんは素が可愛いから…とマイナスな気持ちになることもあって…。だったら、ノーマルな自分の顔にメイクすることで"こんなに可愛くなれるよ!"って提案した方が、たくさんの方の参考になるなって感じたんです。これは自分にしかできないんじゃないかな、と。

その思いは今も持ち続けていて、だからこそ”発信型メイクアップティースト”として活動しています。」

有名になったけれど…「似てる・似てないだけにフォーカスされメイクが嫌いに」

「2014年、2015年あたりから、私の真似メイクがテレビや雑誌で取り上げてもらえるようになったのですが、いつの間にか私が発信したかった"自分の顔に芸能人のメイクをプラスすることで、ワンランク上の女性になれる"という想いではなく、真似メイク自体がエンタメ化し、​似てる・似てないだけにフォーカスされてしまうように。

自分の中で、伝えたいことと、注目される方向性がちょっと違うなって葛藤が生まれました。それで一時期メイクが嫌いになってしまって、1年半ぐらいメイクから離れたこともあります。当時所属していた事務所を辞めて、旅行にたくさん行ったりして休息期間を設けたり…。

当時お付き合いしていた彼に「もう夢は諦めて、地元の大阪に帰ろうかな〜」なんて弱音を吐いたことも。そしたら『怪我をしているわけでもない、まだプレーができる状態のスポーツ選手が、ただいつもよりちょっとパフォーマンスが落ちているだけという理由で競技を辞めようって言い出したらどう思う?それと一緒やで』と言われて…。たしかにうまくいっていないからという理由だけで諦めるのはまだ早いかもと気付かされました。100%自分の力を出せていないなって。そこで、できることから始めようと気持ちを切り替えました。」

気持ちを切り替えYouTubeに挑戦!撮影・編集も全て1人で行うかじえりさん

心機一転!YouTube配信やコスメブランドの立ち上げも

「気持ちを切り替えてからまず始めたことはYouTubeの配信。自分の実力に自信をなくすこともありますが、友人からのエールや視聴者さんがくれるコメントがいつも本当に励みになっています。みなさんからの声がなかったら、すぐに辞めていたかも(笑)。私の動画を観て『自信が持てるようになった』『救われた』という声を聞けたから、ここまで続けられています。
真似メイクをしていた経験があるからこそ、自分の良いところを活かすようなメイク術だったり、逆にカバーしたい時のテクニックも編み出せたのではないかと、今では思います。

最近はコスメブランド『Enamor(エナモル)』も立ち上げ、大忙しの毎日です。製造会社と交渉したり、撮影のディレクター、コールセンターの問い合わせ先確保など、事業に関することは全て自分で行っています。1からこだわった商品を作るために、アイテムの粉質や発色、配色のバランス、パッケージの見た目やサイズ感など隅々まで、何度も打ち合わせを繰り返しています。

妊娠中。コスメプランドのプロデューサーとして、撮影に挑んでいるところ

2020年に結婚、翌々年には出産も経験「この背中を見て育ってほしい」

「2020年に3年お付き合いしていた彼と結婚。全体的な雰囲気がタイプで、最初は私からぐいぐいアピールしました(笑)。彼はとにかく優しくて、結婚した後も家事分担できたり、私の仕事に対して理解があるところや、話し合いができるところに、とても救われています。この人と結婚できて本当によかったなと思います。

2022年には女の子を出産したのですが、しっかりした産休は2週間しかありませんでした。仕事がいい方向に進んでいる時期だったので、休むという選択肢は自分の中にありませんでした。実は出産してからYouTubeを一回もお休みしていないんです。出産するときまでに動画を撮り溜めして、入院中に編集したり。」

旦那様とは、共通の知り合いを通じて出会ったとか♡

「仕事と育児の両立は思っていた以上に大変でした。子どもとは常に一緒にいて、お世話というよりは命の責任を感じる。なにかあったら怖いから目が離せないし、YouTubeの撮影にも声が入ったりもするし…。

今、保育園を探しているのですが、今までずっと一緒にいたので預けることを不安に思うことも正直あります。でも、子どものせいで仕事ができなかったって後悔するのは避けたい。子どもを理由にできないことを増やすのではなく、私の背中を見て育って欲しいと言う気持ちがあります。

以前、仕事と育児の両立についての悩みを私のインスタで発信したのですが、同じ悩みを抱える方や共感してくださる方が多くて驚きました! パートナーである旦那さんへの不満というより、どちらかというと国や会社の制度に対してモヤっとしているのかなと感じる意見が多かったです。旦那さんは協力的だけど、仕事が休めないから必然的に奥さんの負担が多くなってしまう…という印象でした。

私たち夫婦も、お互いの気持ちを100%理解できないからこそ、きちんと話し合います。彼は仕事がハードだし、男性の育休制度がない職場で、さらに夜勤もあるため週に2、3日は私のワンオペ。しんどいってハッキリ伝えることもあります。とはいえ仕事を休むことはできないので、励ましの言葉しかもらえないのですが、『本当にお疲れ様』『早く寝ていいよ』と毎日労いの言葉をかけてくれるから頑張れています。」

家族写真。月に一度の旅行が幸せのひととき

自信が持てない女の子に伝えたい"自分の好きなところを見つけること"の大切さ

「イエベ・ブルベというパーソナルカラーなどの情報に囚われすぎていたり、メイクが上手くできない…と悩むことってありますよね。そんなときは、まず自分の好きなところを見つけること。パーツや、こういう雰囲気が好きなど、気に入っている箇所を一つでも見つけてみてください。そこを伸ばしていくことを意識しながらメイクを研究すると、自分に合ったメイクができるようになると思います!

これは、私がメイクをするうえでとても大切にしていることで、書籍『メイクの教科書』の中でも語っているのですが、やっぱり人ってないものねだりだな、と思うことが度々あるんですよね。それは真似メイクをやっていたときにすごく実感したことでもあります。だけど、ないところを足していくより、持っているものを生かしていくほうが、確実に自分に似合うメイクができる。カバーするとかは考えずに、自分の中でここを伸ばしたいと思う箇所を強調するメイクにした方が素敵だな、と私は思います。」

かじえり著書:「知りたいこと全部知ってかわいくなるメイクの教科書」
発行:株式会社KADOKAWA

30代はブランドを知ってもらうこと。そして働く女性のロールモデルになりたい

「YouTubeに限らず、多方面から、メイクについての情報を発信していきたいです。それからこれは私の、というよりEnamorの展望なんですけど、ブランドがすごい有名になって、” Enamorのプロデューサーってかじえりなんだよ”みたいな、ブランドをまずは知ってもらって、その先に私がいるっていう流れができるのが理想です。Enamorが大きくなっていくことは私の夢でもあります。今は認知度を上げるために日々頑張っています。

怒涛の10年間だった20代を終えて、これから30代に突入しますが、やっぱり仕事と育児の両立も大きな課題だと思います。私と同様に、両立に悩まれている方も多いと思いますし、独立して会社を持っている人や、個人事業主として活動している人には、育休制度がなかったりもします。この環境が難しいと考える人が多い中で、私もその一人。大袈裟かもしれないけれど、働く女性のロールモデルになりたいなって思っています。今後のブランドの行方は、自分が頑張る原動力になるはず。娘の成長も同時に楽しみですね。娘はすでにコスメに興味津々(笑)。30代も、楽しみがいっぱいです!」

Text:Yukari Shibamiya
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