女性の3~4人に1人が抱える排尿トラブル
はじめまして。泌尿器科医の平本有希子です。
女性の排尿障害(頻尿や尿失禁)や骨盤臓器脱などの診療を主にしています。
フェムテックや腟ケアなどの情報が浸透し、最近は若い女性の受診も増えているように感じます。
実際、妊娠中の尿失禁は約36.5%、出産後女性の尿失禁は約38.6%、20~40代で出産経験のない女性の尿失禁は約23.6%との報告もあります。つまり、排尿トラブルを抱えている女性は3~4人に1人はいるということになりますので、意外と多いことがわかります。
余談ですが、男女60歳以上の約78%に排尿トラブルを認めているというデータもあります。
今回は「産後の排尿トラブル」について。排尿トラブルの原因や治療法をご紹介します。
排尿トラブルの種類と原因
女性の排尿トラブルは「骨盤底筋」と密接に関わっています。
膀胱や子宮、直腸を支えるハンモックのような筋肉で複数の筋肉が集まって形成されている骨盤底筋が、妊娠・出産で損傷を受けて緩むことで、尿漏れや頻尿などの排尿トラブルや、腟から臓器(子宮や膀胱、直腸、小腸)が下がってくる骨盤臓器脱という症状が起こりやすくなります。
排尿トラブルの種類
ここで女性に多い排尿トラブルにはどのような種類があるか説明したいと思います。
①頻尿・・・尿が近い、尿の回数が多いという症状で、一般的には朝起きてから就寝までの排尿回数が8回以上の場合をいいます。しかし、排尿回数は個人差があるため自分自身で排尿回数が多いと感じる場合は頻尿といいます。
②腹圧性尿失禁・・・くしゃみや咳、縄跳び、走っている時の漏れ。産後の漏れに多い
③切迫性尿失禁・・・尿意を感じると我慢できずに漏れてしまう。
④混合性尿失禁・・・腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方の症状
尿漏れのタイプの割合は、腹圧性尿失禁:混合性尿失禁:切迫性尿失禁が5:3:2の割合と言われています。子育て世代の女性は子供と縄跳びやトランポリン、追いかけっこしている時に漏れてしまうという悩みが本当に多いです!
出産経験がある場合の排尿トラブルの原因
どうして尿漏れが起きてしまうかというと、女性は尿道が4cm程度と短く、妊娠・出産で尿道を支えている靭帯や骨盤底筋が傷ついてしまうと、尿道を支えられずに負荷がかかった時に漏れてしまいます。帝王切開の方は経腟分娩の方より排尿トラブルのリスクは少ないですが、妊娠期間は変わらないので、骨盤底筋のダメージは同様に受けており、排尿トラブルを起こすことがあります。
出産経験がない場合の排尿トラブルの原因
出産経験がない場合も排尿トラブルは起きます。原因は腹圧のかかる生活(肥満、重労働、喘息で咳き込むことが多い)やアトピー性疾患がある方、過去に排尿でトラウマがあった方などがあります。アトピー性疾患は細胞レベルで全身の組織が弱いので尿道を支えている靭帯も同様に弱く排尿トラブルなど起こしてしまうと言われています。
排尿トラブルの治療法
生活改善や骨盤底筋体操、病院での治療法についてご説明します。
生活改善
・肥満の方は減量する
・重いものは極力持たないようにする
・水分をとりすぎない
などが有効です。
骨盤底筋体操
最近は動画配信サービスや本などで自分で学べますが、骨盤底筋は動かし方ががあります。
動かし方を誤ると症状が悪化する可能性もあるので、泌尿器科で個別に骨盤底筋体操指導をおすすめします。個別だとしっかり骨盤底筋を触り動かし方を見てくれるところが多いからです。
女性泌尿器科や婦人科だと、実施しているところがあるので、HPで個別の骨盤底筋体操をしている病院を検索してみてください!
病院に行くのはハードルが高いという方のために、簡単にできる体操をご紹介します。
内服治療
尿失禁のタイプによって内服薬を使い分けますが、内服治療はあくまでも症状を緩和させてくれるもので、根治治療にはなりません。
手術療法
それでも改善のない場合は、膀胱内にボトックスを注射する治療(難治性過活動膀胱に保険適応)や手術療法もあります(腹圧性尿失禁のみの適応です)。
レーザー治療や座るだけで頻尿が治る椅子
最近ではレーザー治療や洋服を着たまま座るだけで改善する椅子などもあります。
レーザーは腟にレーザーデバイスを挿入し、粘膜層を温めることでコラーゲンの再生が促進され腟のゆるみや尿漏れが改善します。
椅子は磁気や電流を骨盤底筋に流すことで、骨盤底筋が鍛えられ頻尿や産後の骨盤底筋障害の改善に効果があります。
今までお話した治療のなかで内服治療、ボトックス治療、手術は保険適応、
個別骨盤底筋体操、レーザー、椅子は自費治療で、クリニックによって値段設定が異なります。
まとめ
私自身も2人の子供を出産しているため、同じような悩みを抱えていますから本当に辛さがわかります。
排尿トラブルで悩んでいる女性は多くいるため、自分ひとりで悩む必要はありません。
気になったら病院やクリニックを受診してほしいと思っています。
次回、「座るだけで頻尿が治る椅子」について詳しくご解説いたします!お楽しみに。