PMSの症状がひどくなる/月によって違う要因

「30代になってから生理前の症状がひどくなった気がする・・」「普段は楽なのに、今月は仕事に支障が出るくらい辛い」など、PMSの症状の現れ方は、年齢や周期によって波がある人も多いです。ここでは、PMSの症状が悪化する要因や、月によって症状が異なる理由について解説します。

出典:Canva

ホルモンバランス

PMSを引き起こす要因は、はっきりとは分かっていません。しかし、月経周期に伴う女性ホルモンの急激な低下や、GABA・セロトニンなど精神安定の役割を持つ神経伝達物質の異常が関与しているのではないかといわれています。卵胞が成熟すると、下垂体からLH(黄体形成ホルモン)が大量に分泌され、排卵を誘発します。排卵後は卵胞からプロゲステロンが分泌されて、子宮内膜を厚くしますが、月経直前になるとエストロゲン・プロゲステロンの分泌は一気に低下します。

これらのホルモンバランスの変動は、脳の視床下部や下垂体と、子宮・卵巣の相互作用が複雑に影響しあっているため、生理周期ごとに微妙な違いが生まれると考えられます。そのため、PMSの症状が異なったり、症状の程度にも違いが生じたりするようです。

参考:日本産科婦人科学会 月経前症候群 
参考:日本産婦人科医会 月経周期と女性ホルモンのメカニズム

睡眠、運動、ストレス

月経のある18歳〜25歳の女性を対象とした調査によると、PMSの症状の程度と、睡眠・運動・ストレスなどの生活習慣は少なからず影響しているといいます。睡眠時間の長さは、むくみや胸の張りなどの症状の程度と関連があり、定期的な運動習慣があると回答した人は、「食欲が増す」などの消化器症状が少ないことが分かりました。

また、起床時の疲労感の有無は、下記に示すようなPMSの複数の症状と関連があるという結果が得られています。
・下腹部痛
・イライラ、不安などの精神症状
・仕事などに対する意欲低下
・対人関係の変化、トラブル

大学生を対象とした調査では、十分な睡眠や適度な運動、気分転換などのセルフケアを行うことでPMSが改善する場合もあるとの結果も。心身がしんどくて何もしたくない生理前は、ゆっくりと家でストレッチをしたり仮眠をとったりと自分を労りましょう。

参考:若年女性の月経前期および月経期症状に影響を及ぼす要因(PDF)
参考:大学生の月経前症候群(PMS)と日常生活習慣及びセルフケア実態

出典:Canva

アルコール、たばこ

飲酒や喫煙の習慣は、PMSの症状がひどくなる原因だといわれています。たばこに含まれる有害物質のニコチンは、血管収縮作用があるため、骨盤周囲の血流停滞を招き、PMSの症状に影響することも。

また、過度な飲酒はPMSのリスクが79%高まったという研究結果もあるので、適度な飲酒にとどめることが望ましいでしょう。
寝る直前にお酒を飲む行為も、睡眠の質・量を悪化させる原因です。寝酒による一時的な入眠効果はあるものの、中途覚醒や起床時の疲労感につながってしまいます。

参考:厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針2014(PDF)
参考:お酒を飲むとPMSのリスクが高まる?(English)

PMSの症状がある人、ない人の違い

PMSの症状の種類は200種類以上といわれており、人によって症状の種類や程度が異なります。生活習慣や年齢、妊娠・出産などライフステージの変化の影響を受けやすいといわれていますが、PMSの症状があまり出ない人も少なからずいるようです。

アスリート女性と、非アスリートのPMS・月経困難症の程度を調査した筑波大学の研究によると、運動習慣のない女性はPMSの症状が強く、月経困難症の有病率・重症度が高いという結果が示されました。

PMSの原因は、あらゆる環境・ストレスなどが組み合わさっていることが多いため、一つに絞ることは難しいものです。突然PMSが辛くなった場合は、仕事や子育てなど役割の変化の有無や、ストレスや疲労で生活習慣が乱れていないか振り返ってみましょう。

参考:運動と月経随伴症状の関係~アスリートと非アスリートを対象とした検討~(PDF)

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PMS対策

生理前のイライラや下腹部痛などのPMSの症状は、規則正しい生活や食事の見直しで改善が期待できます。自分の生活を見直して、無理のない範囲で少しずつ取り入れてみましょう。

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PMSを緩和する食事を意識する

PMSの症状緩和のためには、食事内容を意識して変えることが大切です。

PMS対策として、積極的に摂取したい栄養素と豊富に含まれる食品はこちら。
・イソフラボン・・豆乳、納豆
・カルシウム・・牛乳、小魚
・鉄分・・ほうれん草、牛肉
・ビタミンB群・・じゃがいも、牛レバー、ひよこ豆
・ビタミンE・・卵、アーモンド、アボカド
・カリウム・・バナナ、昆布
・マグネシウム・・かぼちゃの種、わかめ
・ポリフェノール・・ココア、玄米 など

神経の興奮を抑える働きがあるカルシウムは、継続的に補給することでPMSの症状が軽減につながるといいます。また、ビタミンB6が気分のムラや不安感など多くのPMS症状の緩和に関連があるといった統計も。しかし、「この栄養素をとれば安心!」という食品はなく、偏った食生活を控えてバランスのとれた食事を心掛けることが大切。特に、卵や肉といった動物性たんぱく質が不足していると、セロトニンやエストロゲンの産生が減少し、PMSの症状を強める可能性もあるようです。

また、「朝食の摂取」の有無は、PMSの精神症状と関連がみられ、意識的に朝食を摂ることは症状改善に効果が期待できるといいます。ビタミンや鉄など栄養強化されたオートミールやシリアルなど、まずは手軽な食材から試してみてはいかがでしょうか。

参考:カルシウム補給が月経前緊張症に及ぼす影響(PDF)
参考:厚生労働省 ビタミンB6

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健康的な生活習慣を心掛ける

PMSの症状改善のためには、食事の見直しだけでなく、適度な運動習慣や質の良い睡眠も重要です。月経前の辛い症状は、休養時間の短さや強いストレスが影響しているという研究結果も得られています。仕事、家事など多忙を極めると、つい自分を犠牲にして頑張りすぎてしまう人も多いのではないでしょうか?まずは、自分がリラックスできる環境づくりや、好きなことでストレス発散することが大切です。

しかし、飲酒やたばこなどの生活習慣は、PMSの症状を強める要因となることがあるので、控えた方が良いでしょう。健康的な生活習慣を取り入れても、生理前の症状が辛くて毎日に支障が出る場合は、婦人科を受診して適切な治療を受ける必要があります。
もし、生理中もPMSのような症状が続くときは、月経困難症や子宮内膜症など他の婦人科疾患を疑わなければなりません。

また、PMSでメンタルの症状が特に辛い場合は、放置してしまうと、精神疾患のPMDD(月経前不快気分障害)に進行する可能性も。「生理前だけだから、そんな大したことではない」と考えずに、迷わず医療機関に相談してください。

参考:女子大学生における月経に伴う症状に影響を与える要因(PDF)

出典:Canva

まとめ

PMSの症状や程度は人それぞれ。毎日の栄養バランスのとれた食事や運動、十分な休息が症状緩和のポイントです。
それでも辛い場合は、我慢せずに婦人科を受診しましょう。