フェリチンとは

フェリチンとは、鉄分を貯蔵するたんぱく質のこと。生理や妊娠で貧血になりやすい女性にとって、特に重要な栄養素です。

フェリチンは鉄を貯蔵するタンパク質

フェリチンは、普段は鉄分を肝臓や脾臓に「貯蔵鉄」として蓄えています。貯蔵鉄の量が反映される血清フェチリン値は、鉄欠乏性貧血の指標です。人間が生きていく上で欠かせない鉄ですが、月経のある女性の多くが鉄不足だといわれています。

一般的に、貧血というと血液中のヘモグロビンの値をイメージする人が多いのではないでしょうか?体内の約7割の鉄が、赤血球中のヘモグロビンに「ヘム鉄」として存在していますが、鉄不足になると、まず貯蔵鉄のフェリチンから消費されます。つまり、ヘモグロビンの値が正常であっても、実は体内のフェチリンが不足しており鉄欠乏性貧血になっていることがあるのです。

・朝だるくて起きられない
・肩こりや頭痛で仕事に集中できない
・些細なことでイライラしてしまう
・便秘がち
・無性に氷が食べたくなる

こうした症状に悩まされている場合は、フェリチンが足りていないことが原因かもしれません。

参考:鉄欠乏性貧血の治療指針(PDF)

出典:Canva

鉄分は体内で合成できない栄養素

鉄分は必須ミネラルの一つであり、免疫機能や妊娠・出産の過程でも重要な栄養素です。

1日の中で消費する鉄分は、成人男性で約1.0mg、成人女性は約0.8mg。さらに、夏の暑い季節やスポーツなどで汗をかいて代謝が上がると、その分鉄の消費量も増えます。また、女性の場合は、生理がくると1日あたり約0.5mgも鉄を消費しているといわれています。

鉄は、体内で合成することができないため、食事によって補わなければなりません。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、18~49歳の男性は7.5mg/日、女性は6.5mg/日が推奨されており、月経のある女性は1日あたり10.5mg摂ることが望ましいとされています。

参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

出典:Canva

フェリチンの増やし方

フェリチンを増やすには、鉄分を意識的にしっかり摂取することが重要です。身体に取り込まれた鉄分は、まず血液中のヘモグロビンと結合して、身体中に酸素を運びます。血清フェリチン値を上げるためには、ヘモグロビン濃度が正常であり、鉄が貯蔵できるほど十分に余る状況を作らないといけません。ここでは、具体的にどのように鉄分をとれば良いのか紹介します。

バランスのよい食事で鉄分を摂取

食事から摂れる鉄分には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の二種類があり、ヘム鉄は、非ヘム鉄と比較して、吸収率が15〜35%と高めです。日本人が食事から摂取する鉄分のうち約8割以上が非ヘム鉄であるとされており、どちらもバランスよく食べることが大切です。

ヘム鉄は、肉や魚などの赤身の部分に多く含まれています。

<肉類>    鉄含有量
豚レバー:生50g 6.5mg
鶏レバー:生50g 4.5mg
牛レバー:生50g 2.0mg

<魚介類>   鉄含有量
かつお:生50g  1.0mg
めざし(焼1尾15g) 0.6mg
きはだまぐろ:80g 1.6mg

簡単にヘム鉄がとれるおすすめの食材は、ビーフジャーキー。100gあたりの鉄含有量は6.4gであり、たんぱく質やビタミンB2・葉酸も豊富です。ただし、牛肉の赤身が多いものを選ぶことや、塩分過多にならないよう食べ過ぎには注意しましょう。

非ヘム鉄は、大豆や野菜、海藻類から摂取できます。

<野菜>    鉄含有量
小松菜(ゆで75g)  2.0mg
春菊(ゆで75g)   0.9mg
ほうれん草(ゆで75g)0.7mg

<その他>        鉄含有量
ひじき(ステンレス釜,ゆで50g)0.2mg
ひじき(鉄釜,ゆで50g)    1.5mg
調整豆乳:200g       2.4mg
糸引き納豆:50g      1.7mg
大豆(ゆで30g)       0.7mg

非ヘム鉄は吸収率が5%と低めですが、動物性たんぱく質と合わせると一気に吸収率アップ。豚肉と小松菜の野菜炒めなどは、単品で食べるよりも効果的に鉄をとりやすいです。

手軽に効率よく鉄を摂るためには、調理器具を鉄鍋に変えてみるのもおすすめ。調理中に溶出した鉄は、吸収されやすい二価鉄で、加熱時間が長いほど多く溶け出します。酸味のあるケチャップや食酢を使うことでも鉄の溶出量が増えるので、あさりなど魚介入りのミネストローネを作れば、効率よく簡単に鉄分がとれるでしょう。また、オレンジやレモンなどの酸味のある果物に含まれるビタミンCも、鉄の吸収を高めてくれます。

参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「栄養・食生活」
参考:調理中に鉄鍋から溶出する鉄量の変化(PDF)

出典:Canva

サプリメントも効果的

毎日3食、バランスの良い食事をとるのはハードルが高い・・という方は、鉄のサプリメントで効果的に栄養を補うことがおすすめです。鉄のサプリにもヘム鉄・非ヘム鉄の2種類がありますが、最近ではフェリチンに包まれた「フェリチン鉄」サプリも選べるようです。

サプリメントの場合、手軽に摂取できることから、過剰摂取になる人も少なくありません。急激にサプリで鉄分を摂取すると、胃のムカつきや便秘、腹痛などの症状が出ることもあります。あくまでも食事で足りない分を補うことが目的なので、まずは食事内容から必要な鉄分量を確認しましょう。ビタミン系のサプリメントを既に服用している方は、鉄サプリに含まれている鉄以外の栄養素の含有量もチェックしてください。

参考:厚生労働省:鉄

出典:Canva

飲み物から鉄分を摂取

鉄分不足を補うには、飲み物からこまめに摂取することも手軽な方法です。鉄分が含まれる飲み物なら、ココアや豆乳がおすすめ。ココア1杯(6g当たり)には、鉄分が約0.8g含まれています。また、ココアに含まれるカカオポリフェノールは、手足の体表温度の維持作用があると知られており、冷え性対策としても良いでしょう。

100gあたり1.2mgも鉄が含まれる豆乳は、鉄の吸収率を高めてくれるカボチャと合わせてブレンダーで混ぜれば、あっという間に鉄分豊富なスープが完成します。

参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/56/12/56_12_628/_article/-char/ja/

出典:Canva

鉄分の吸収を妨げる飲み物に注意

鉄分を効果的に摂取するためには、相性の悪い飲み物に注意しなければなりません。緑茶やウーロン茶に含まれる「タンニン」は、非ヘム鉄と結合して、鉄の吸収を阻害してしまいます。

また、紅茶やコーヒーにもタンニンは豊富なので、食直後に飲むのは控えて30分〜1時間は時間をあけましょう。食事中の飲み物は、タンニンが含まれていない麦茶や、薄めに作った緑茶がおすすめです。

参考:https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/nutrition_management/info/seminar/recipe/recipe216.pdf

出典:Canva

まとめ

鉄欠乏性貧血を引き起こすフェリチン不足は、疲労感や落ち込みの原因のもと。体調改善のためには、毎日の食事を見直し、しっかり鉄を摂取することが重要です。ちょっとした調理の工夫や、鉄サプリでの補給も上手に活用して、フェリチンを増やしましょう。