隠れ貧血とは

健康診断で見逃しやすい隠れ貧血。放っておくと、どんどん症状が進行するため、要注意です。自分の気になる症状に当てはまっていないか確認しましょう。

出典:Canva

貧血と隠れ貧血の違い

隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)とは、貯蔵鉄が不足している状態のこと。貯蔵鉄は、血清フェリチンの値が指標となっており、日本女性の正常値は5~120ng/mlといわれています。鉄が不足すると、最初にフェリチンが減少しますが、貧血でフェリチンを意識している人は少ないかもしれません。健康診断の血液検査で調べるヘモグロビン(Hb)は「貧血」の指標であり、貯蔵鉄(フェリチン)が底をついた状態になったときに低下します。実は鉄不足で心身に不調が出ていても、ヘモグロビンの値が正常であることも多いので、隠れ貧血は見過ごされやすいです。隠れ貧血になるとフェリチンはひと桁にまで低下していることもあり、不調なく元気に過ごすためには、フェチリンの値は少なくとも50ng/ml以上必要だといわれています。

参考:働く女性の心とからだの応援サイト 隠れ貧血の問題

隠れ貧血の症状

隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)に陥ると、心身のさまざまな不調を引き起こします。鉄は、体に酸素を運搬する役割だけでなく、神経伝達物質やエネルギーを産生する際に必要な栄養素です。少し歩いただけでも動悸や息切れがみられる場合は、ヘモグロビンが減少した状態の貧血を疑います。下記のような症状がみられる場合は、隠れ貧血が進行しているかもしれません。

・疲れが取れない、全身がだるい
・仕事や家事に集中できない、イライラする
・頭がずんと重い、肩が凝る、腰が痛い
・爪が割れる、肌荒れが治らない、冷え性
・炭水化物が無性に食べたくなる、食欲不振
・喉の違和感、食事が飲み込みにくい

この他にも、鉄不足はうつ症状や不妊などの原因になることもあるため注意しましょう。

出典:Canva

20〜40代女性の65%は隠れ貧血

厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、月経のある20~40代の女性のうち約2割が貧血であり、隠れ貧血を持っている方は約65%を占めることが分かりました。貧血を予防するためには鉄を摂取することが必要であり、月経がある女性は、一日あたり10.5㎎の鉄を摂ることが推奨されています。しかし、女性の鉄の平均摂取量は7.3㎎であり、必要量の7割しか摂れていません。こうした背景には、偏食やダイエットなど食生活の乱れが影響していると考えられます。

参考:令和元年国民健康・栄養調査報告

貧血・隠れ貧血対策のために、バランスのよい食事を

貧血・隠れ貧血にならないためには、毎日の食事から必要な鉄を摂取することが大切です。ここでは、貧血対策におすすめの食べ物や飲み物、注意すべきポイントも紹介します。

鉄分を食事から補う

女性は、一日に約0.8mgの鉄が代謝によって失われており、生理がある日は1.3㎎の鉄を消費しています。毎日失われる鉄は、意識的に食事で摂取することが大切です。鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。ヘム鉄はレバーや魚介に多く含まれており、非ヘム鉄は大豆や野菜、ひじきなどに多く含まれます。まずは、吸収率の高いヘム鉄を含む食品から摂取してみましょう。

出典:Canva

ヘム鉄・非ヘム鉄の違い

ヘム鉄と非ヘム鉄の大きな違いは、摂取した時の吸収率です。動物性たんぱく質に多く含まれるヘム鉄の吸収率は約10~20%であり、非ヘム鉄の5~6倍も高いといわれています。これは、ヘム鉄がたんぱく質に包まれており、消化管で吸収阻害を受けにくい性質を持っているからです。3価鉄の状態の非ヘム鉄は、胃で吸収されやすい2価鉄に還元されて、十二指腸で吸収され貯蔵鉄となります。

参考:厚生労働省

貧血対策におすすめな食べ物

食事から摂取する鉄の約85%が非ヘム鉄であるといわれており、ヘム鉄だけではなくどちらもバランスよく摂ることをおすすめします。鉄が多く含まれている食べ物は下記の通りです。

〇ヘム鉄(生・可食部100gの含有量)
・豚レバー 13.0mg
・牛肉 2.8mg
・砂肝 2.5mg
・かつお 2.0mg
・まぐろ(赤身) 1.8mg

〇非ヘム鉄(可食部100gの含有量)
・納豆 3.4㎎
・ひじき (鉄釜・ゆで) 2.8㎎
・厚揚げ 2.6㎎
・小松菜 (ゆで) 2.1㎎
・枝豆 2.7㎎
・サラダ菜  2.4㎎

非ヘム鉄は、単品で摂取するよりも、クエン酸やビタミンC、動物性たんぱく質と一緒に食べると吸収率が良くなります。

例えば、下記のようなメニューがおすすめです。

・厚揚げと小松菜の煮浸し
・牛肉とニラの炒め物
・ひじきとトマトのサラダ(ドレッシングに酢を加える)
・マグロ納豆・卵かけご飯

マグロには、ビタミンB群と鉄が豊富に含まれており、調理要らずの貧血対策メニューです。食事から十分に鉄を摂取することが難しい場合は、鉄サプリメントで補うことも検討しましょう。

出典:Canva

貧血対策におすすめな飲み物

忙しい朝や仕事の休憩時間には、鉄が豊富に含まれた飲み物を摂取して、こまめに貧血対策しましょう。100gあたりの鉄含有量が多い飲み物は下記の通りです。

・ピュアココア 14.0㎎
・青汁 2.9㎎
・調整豆乳 1.2㎎

これらは、商品によっても違いがあるため、詳しくはパッケージに記載されている栄養成分表示を確認してください。

この他にも、コンビニで購入できるような、鉄分入りの「飲むヨーグルト」や、トマトジュースもおすすめです。トマトジュース自体の鉄分は比較的少ないですが、ビタミンCによる鉄の吸収促進が期待できます。鉄分たっぷりの食事と一緒に飲むことで効果的に貧血対策をしましょう。

出典:Canva

貧血・隠れ貧血時に避けたほうがよい食べ物

貧血を改善したいときは、注意したい食べ物もきちんと把握しておくと安心です。カフェインやタンニンには、鉄の吸収を阻害する作用があるため、食事中は摂取を控えましょう。

〇カフェインを多く含む飲み物
・コーヒー
・玉露
・ほうじ茶
・紅茶
・高カカオチョコレート
・眠気覚ましの栄養ドリンク など

〇タンニンを多く含む飲み物
・緑茶
・ウーロン茶
・紅茶
・ワイン
・渋柿 など

特にコーヒーは、カフェインだけでなくタンニンも含まれているため飲みすぎには注意です。タンニンは鉄と結合して、消化管で吸収されにくくなるため、せっかく鉄を摂ってもそのまま排出されてしまいます。食事の前後1時間は飲むことを控えて、1日あたりマグカップ2~3杯程度にすれば、影響を受けにくいでしょう。

参考:働く女性の心とからだの応援サイト カフェイン・アルコールの影響について
参考:筑波大学体育科学系運動栄養学
参考:厚生労働省 食品に含まれるカフェインの過剰摂取について

出典:Canva

まとめ

隠れ貧血は、毎日のバランスの良い食事で、十分な鉄を摂取することで予防できます。
特に月経中は、鉄が不足しやすいため、飲み物や副菜から少しずつ補うことを意識しましょう。
また、非ヘム鉄の吸収率を高めてくれるたんぱく質やビタミンCも一緒に摂取することが大切です。
こつこつと継続して貯蔵鉄を十分に蓄えられれば、心身の健康を維持できるようになります。
もし、疲れやすいなどの症状があれば、隠れ貧血を調べるために病院でフェリチンの値を測定してもらうことをおすすめします。