【推しの子】作者が語る今のアイドルのカタチ

芸能界やアイドルの舞台裏をリアルに描いた超話題作!

『【推しの子】』作者の赤坂アカ先生、横槍メンゴ先生をお招きして、今のアイドルについてたっぷり語っていただきました。

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【人を好きになる〟という感情を描きたかったんです】

赤坂 【推しの子】は芸能界を深く、多角的に描きたいっていう思いが最初にあって。
その中でアイドルをひとつの軸にした理由は、〝人を好きになる〟っていう感情をまず柱にしたかったからかな。
そういう憧れや崇拝の象徴としては、俳優や女優よりもアイドルっていう概念が一番しっくりくると思ったんです。

横槍 アイドルものをやりたいっていう話を聞いた時は、アカ先生もともとアイドル好きなのかなって思ったら…。

赤坂 いや、全然なんですよ。
でも調べ始めたらまんまとハマった、というのはちょっとありますね。

横槍 私は10代の頃からアイドルのライブに行っていて、完全にアップフロントの者なので(笑)。
この特集にも、かみこと愛理が!♥ 

赤坂 ほら、この温度感。
僕はメンゴ先生のように詳しくないんです(笑)。

横槍 ネットを見ると「(主人公のひとり)ルビーは絶対かみこ」って言われていたりするんですよ。
愛理もすごい人。
地球上で一番可愛いんじゃないかな。

赤坂 僕はアイドルを知らない側の視点から勉強を始めて、段々と二人のすごさを知っていったというか。

横槍 でも私もめちゃくちゃ詳しいわけではなくて、ライトなハロプロ好き。
アカ先生はどちらかというと坂道好きだから、お互い対照的なものが好きっていうのが、いい感じに作品に生きているなって思います。

【リアルな取材から感じた今求められるアイドルのカタチ】

赤坂 僕らは二人とも映画やドラマといったメディア化の経験者で、タレントさんにお会いして、生の声が聞けるようになった。
そういう意味では、リアルな取材をさせてもらっているよね。

横槍 アカ先生はアイドルを勉強して、印象は変わった? 

赤坂 僕的に大きいなと思ったのはネットかな。
今のアイドルはネットと切り離せない存在になったなと。

横槍 それは私も感じる。セルフマーケティングの時代ですよね。
【推しの子】の中でもYouTubeから名前を売って、売るにしてもコラボからっていうリアルな客層の広げ方は今っぽいなと思うし。

赤坂 昔は地道に路上で「よろしくお願いします」って劇場に客を呼び込むみたいな。
そういう時代があったと思うんです。
でも今はネット発ができるからね。

横槍 それに私が想像する昔のアイドルっていうと、大きな芸能事務所が作り上げるというイメージだったから。

赤坂 そうそう。広告代理店とテレビ局と事務所がなければ成立しなかったものが、今はそうとは限らない。

横槍 あと私はソロアイドル全盛期の世代なので、ピンでもやっていけるような強烈なカリスマ性は、逆に求められていないのかなと思うこともあって。
アイドルのカタチは変わってきているなと思いますね。

【中学生くらいの恋愛感情で〝好き〟って思える尊さ】

赤坂 アイドルの魅力っていうと、中学生くらいの恋愛観に近い感情を持てるところなのかな。
大人になると打算的な考えを判断基準にすることもあると思うんです。
でもアイドルは可愛い、性格がいい、とか頭悪く好きになれる。

横槍 言いたいことすごくわかる。隣のクラスの誰々が好き、くらいの感覚だよね。

赤坂 足が速いから好きっていう、その頃の恋愛ができるというか(笑)。
ピュアな推し方ができるのが、すごくいいなって思います。

横槍 私は、激烈に歌がうまい歌手の方や演技のうまい女優さんとアイドル、何が違うのかなって考えた時に、本人のキャラクター性や人間性、魅力、いちばん言葉にならない部分で勝負しているのがアイドルなのかなって、なんとなく思います。

赤坂 タイトルにも使っている〝推し〟っていう言葉も改めて考えてみると。
こういう〝好き〟を表す言葉は、今までいくつかあったと思うんです。
例えば〝萌え〟とか。
でも〝推し〟は、そこに恋愛感情や下心を混ぜたくないっていうファン意識を感じるんですよね。
純粋にその人を肯定したい、応援したいっていう価値観が〝推し〟という言葉を作ったのかなって。

横槍 そうだね。わざわざ付き合いたい対象のことを〝ガチ恋〟って表す単語があるくらい。
恋愛的な目で見ることの方が特異な状況に、今はなっているのかも。

赤坂 最初にタイトル案を出した時は、推しがこんなにホットワードになると思っていなかったので、個人的には助かりました。

【〝この子が世界一可愛い〟そう思いながら描いています】

赤坂 【推しの子】のビジュアルに関しては、メンゴ先生に任せっきりだよね。
もう全幅の信頼を置いているので。

横槍 ありがとう。
衣装作画の参考にしているのは、初期のAKB48やアップフロント。
あとは「縷縷夢兎(ルルムウ)」というブランドも意識しています。

赤坂 メンゴ先生のカラーイラストは、原色が気持ちいいよね。

横槍 【推しの子】は『かぐや様』を超える彩度で、さらに売り場でも目立ちたいという気持ちから、もともと派手は衣装プラス、差し色で手袋を入れる、みたいな。

赤坂 僕にはできないことなので、メンゴ先生に頼んで本当によかった。

横槍 描いている時は「この子が世界一可愛い」って思いながら描いているんですけど、漫画ってコマごとにキャラが変わるから、すごく浮気している気分になるんですよ。

赤坂 あはは(笑)。

横槍 だから推しキャラって、いないんです。
みんな可愛い。

赤坂 そうだね。
僕らは、何が可愛いのか、どういう人にみんなは恋をするのか。
一挙一動、立ち方から研究して漫画を描いていて。

横槍 四六時中“愛され”を考えているよね。

赤坂 究極、僕が可愛くなりたいとまで思い始めましたもん(笑)。

横槍 いいと思う。
その気持ち大事!

赤坂 【推しの子】ではアイドルの生々しい感情やリアルな面も描いているんですけど、「アイドルも人間なんだ」というのが裏テーマのひとつで。
傷つくこともあるし、みんな頑張っている。
それを伝えることで、推す側も推される側もよい環境がつくれたらいいなと思っています。

横槍 その一助になれたらうれしいですね。

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