僕のあまのじゃく#20

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

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ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくブリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

テーマ:「冬休み」

この業界だと正月あたりまでガッツリと働いて正月の周辺に冬休みを貰ってハワイに行く人がいるらしい。
なんか、いかにもって感じがする。
昔は空港で芸能人がキャリーケースひいている所にカメラが寄って行って、今年もハワイで過ごされるんですか?とキャスターに聞かれている姿がテレビで流れていた。

私は、うわぁさぞかし浮世離れした華やかなプライベートなんだろうな、と画面を見て口にした。
絶対私のような有象無象とは無縁の世界だし、そのキラキラした芸能人の姿を見て羨望よりも嫌悪に近い感情を抱いていたのを覚えている。

ただ、そのイメージはここ数年で覆されることになった。
実際にテレビの仕事が増えてきて、共演者の人と話したりしながら、その実態を垣間見てみると、どうやら派手な私生活をしている人はそこまで多い訳ではないようだった。
どうやらハワイに行くのは、味気ない毎日でプライベートの時間もなかなか無いので、一年頑張った自分へのご褒美らしい。

「前田、ハワイは良いぞ。パラダイスだ。」
なんて、ある先輩が浮かれて言うもんだから、一体何処が天国なのか述べよと可愛げもなく問い詰めた。
食事が美味い、と言うので、それなら国内でも美味しいところがあるし、ハワイのみが天国になる理由にならないと意見を認めず、景色が綺麗だ、と言ったので、国内でも素敵なビーチはあるから特筆する特徴ではないと却下した。

先輩は楽しそうに話していたけれど、こうやって文字にすると、なんて鬱陶しい後輩だろうと思う。
それが自分だというから恐ろしい。
でへへ、そうなんすね、最高っすね、と軽く流せる人間でありたかった。

そんなハワイのいいところを聞き続けていたら、「結局、他人の目を気にせずのんびり過ごせるから最高だよ」と教えてくれた。
海外に行く大きな理由はそこにあるらしい。
とりあえずはその場はそれで納得したけれど、それならば街中で声をかけられない私は、十分国内でも目を気にせず過ごせる。
指を刺して声をかけられるような一部の人間以外には、やはり無縁の話だった。

結局、先輩と深い時間まで話をしても国境を越えるメリットを感じることはなかった。
今の私には国内旅行で十分。
と言いながらも、行けるのであれば行ってみたいから厄介な奴だ。
散々詰め寄った後、先輩から「じゃあ、もし冬休みを貰えたらどこに行くの?」と問われた。
これが非常に困った。

休みの日があっても、ネタ作りや執筆などの仕事に着手してなんだかんだちゃんとした休日というものがない。
その作業の隙間の時間で本を読んだり映画を見たり油絵を書いたりとプライベートを充実させようとしているけれど、例えば、しっかり仕事のない4日間を貰ったら私はどうしたいのだろうか。
現実的ではなかったので考えたこともなかった。

ブツブツと言いながら長考していると、「人は休まないとダメになっちゃうからね、休むことも念頭に入れた方がいいよ」と言われた。
「前田君の場合は、もう手遅れな気もするけれど」と最終ステージである旨の診断を受けたけれど、それは冗談として受け流した。

確かに、仕事を貰えるだけでありがたいと思って働いていたけれど、どんな業種であっても休む必要があるし、冬休み、という概念が自分の中から失われていたことがわかった。

売れる前の人生が長い長い冬休みのようなものだったので、休むという選択肢がなかったけれど、来年あたりには、冬休みなんかが貰えるといいなあ。
そして有象無象から脱却して、ハワイじゃないと羽を伸ばせないよおと愚痴をこぼせるような、そんな男になっていることを願う。

ー完ー

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