僕のあまのじゃく#45
ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。
ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡
前田裕太(まえだ・ゆうた)
PROFILE:1992年8月25日、神奈川出身。グレープカンパニー所属のお笑い芸人ティモンディのツッコミ、ネタ作り担当。愛媛県の済美高校野球部に所属した同級生・高岸宏行が相方で、2015年1月に結成。2人の野球経験を活かした『ティモンディベースボールTV』の登録者数は23万超え。ar web連載『僕のあまのじゃく』では、フリースタイルエッセイを毎週お届け中。
テーマ:傷口
ある番組でロケの現場に行った時に、渡された台本を確認すると、私の名前がなかったことがあった。
まあそんなこともある。
単に隙間を埋める役割を求められることもあるし、そもそも求められていない時もある。
色々と思うところはあるけれど、別に構わない。
未だ至らないところがある自分が悪いし、自分の立ち位置は自分で確立しなければならない。
ただ、その現場では、台本に私のセリフがないことに気づいたスタッフ達が、前田をどうしようか、とその場で相談されたことがある。
このロケは高岸のコメントがあれば良いんだけど、一応コンビで呼んじゃったしなあ、と気を遣う声が聞こえてきて、情けなくなってきた。
必要がないんだったら別に呼ばないでくれよ、その相談の声、聞こえているよ、と待遇に不満がある訳ではなくて、だったら無理に呼ばなくて良いよ、と思う仕事があった。
どういう経緯でコンビで呼ばれたのか分からない。
けれど、まあ現場に来たからには空気を悪くするのは良くないから、心と頭を空にして、普段通りの仕事をこなすのだけれど。
そんなことがあった。
まあ、一度くらいそういう仕事があったって、良い経験として消化できる器量は持っている。
私は大人だからね。
ただ、これに類した経験を幾度か経験したり、呼んでもらった番組では、芸人として名乗らせてもらえず、芸人としてではなくエキストラとして出演することになったり、これおかしくないか、という仕事が来るたびに、その事実が紙やすりのように心を削っていって、今となっては、擦り傷のような傷口になってしまっている。
きっと、みんなこういう心の傷を抱えて生きているのだろうけれど、傷を負うたびに、世界で一番不幸な人間であるという気になる。
思い返すと、高校生の頃に野球をやっていた時は、自尊心が傷つくようなことがあっても、何くそ!と傷口に唾をつけて、すぐさま走り出していた。
痛みもすぐひくし、治りが早かった。
それが、年齢を重ねれば重ねるほど、一回傷つくたびに傷口を確認して必要以上に痛がってしまっている気がする。
治りがどんどんと遅くなっている。
割り切るには時間もエネルギーも必要
さて、前を向いて頑張ろう、と思うまでの期間がどんどん伸びてきていて、どうせまた同じようなことは起きるのだから、気にしないようになればいいのだけれど、そう割り切るには時間とエネルギーを要するようになった。
最近は、その対策をとるようにしている。
傷口をかさぶたにして、前に進むための対策として、
①絶対許さないノートを制作し記入して記録しておくことと、
②一度書いたら、前に記入した怒りの記録を見直して、意識をそっちに向ける
ということをしている。
文字に起こせば、紙に向かって怒りをぶつけることができるし、別の怒りを思い返すことで、今持っている怒りを散らすことができるようになるからだ。
あとは、結局、今の立ち位置にいる限りは似たような仕事がきたり、同じような傷つきかたをする道を走っているのだから、自らの努力で歩く道を変えるしかない。
何かで結果を残すか、そもそも職種を変えるか、人によって選ぶ選択肢は様々だろうけれど、嫌な気持ちになったから職種を変える、は、今の職種で結果を出す努力を100%やり切った上で選択しても遅くはないし、何をやっても長続きしない人間になってしまうので、できれば後に残しておくのをオススメするけれど、心にその選択肢がある、という事実だけで楽になる瞬間もある。
年を取ればとるほど、傷には敏感になってしまうから、これからも多様な対策をとっていきたいと思う。
ー完ー
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