「35歳」。将来子供が欲しいと考えたことのある人は聞いたことのある年齢かもしれません。
女性は35歳を皮切りに妊娠できる力は衰えるというのです。

なんとなく聞いたことがるけど、本当なの?いつから妊活を始めたら間に合うの?
男性にも不妊症って存在するの?

今回は産婦人科医・岡田先生に教えてもらいました。

左岡田有香先生、右吉田怜香さん

吉田 35歳になった今、同世代の友達とは不妊治療の話題になる機会が増えました。
人生100年時代と言われていますが、女性の身体にとって妊娠の適齢期や不妊のリスクは変わらないのでしょうか?

岡田 はい。35歳を皮切りに妊娠できる力は顕著に衰えます。
妊娠の確率は1回の月経周期で30歳で約30%ありますが、35歳になると約18%に。40歳では5%ほどに下がるんです。

吉田 それは知らなかった…。もしかして30代になってから妊活を意識するのでは遅いのですか⁉

岡田 お子さんを何人欲しいのか、その人のライフプランにもよります。もし子供は1人がよければ32歳くらいまでに自然妊娠を目指していただく妊活もいいと思います。ただ2人以上を考えるなら、20代から妊活を始めて早いことはありません。将来の妊娠の可能性を広げるためにも、まずは不妊症について知っていただくことが大事。詳しく説明しますね!

不妊症とは?

岡田 定期的に避妊せず性交を行っているにも関わらず、1年間妊娠しなければ“不妊”とされています。
35歳以上の女性の場合、6ヶ月経っても妊娠しなければその段階で一度検査してみてください。
また、以下の症状がある場合は不妊や子宮の病気が考えられるのですぐに婦人科で受診を!

・生理が39日以上あく、または24日以内にくる月経周期の異常
・月経の量が極端に多いor少ない、または極端に長いor短い場合
・生理痛が年々強くなっている
・セックス時に痛みが出てきた
・以前に性感染症、骨盤腹膜炎の経験がある、または子宮筋腫、子宮内膜症を指摘されている

不妊は年齢による卵子の“在庫数”と“質”の低下が大きく影響する

岡田 女性の身体の中にある一生分の卵子は産まれる前にすべて作られています。
お母さんのお腹にいる胎児期が一番多くて700万個ありますが、そこから減り続けて思春期には20万~30万まで減少。
毎月、生理がきて卵子が1個排卵されると同時に400~500個は自然消滅します。

吉田 卵子は産まれ持ったものなんですね。少しでも残っていれば妊娠の可能性はありそうだけど…。

岡田 産まれる前から卵巣にあり続けている卵子は年齢とともに老化するので、少ない数と質の低下により妊娠する力は衰えてしまいます。
女性が妊娠できる期間とされているのは閉経の10年前まで。閉経は平均50歳で迎えるので半数は40歳代と考えると、多くの人は30歳代が妊娠に適したデッドラインということです。また、30歳代で閉経する人も100人に2-3人いると言われています。

不妊の原因は男性が半分を占める

同世代と発覚し、話が盛り上がる岡田先生と吉田さん

岡田 不妊症の原因は女性が65%、男性が48%であるという調査結果(2017年・世界保健機関(WHO))があるように、妊娠は女性だけじゃなく2人の問題。
精子の力は、35歳を過ぎて緩やかに衰えていき45歳以上で急下降します。
さらに、卵子と違って日々つくられている精子は本人の生活習慣も関与。睡眠不足や運動不足、不規則な食事や過度なストレスなどは悪影響を及ぼすので注意が必要です。

吉田 パートナーが不妊治療に協力してくれないという悩みをよく聞きます。男性を検査に誘うコツはありますか?
岡田 当クリニックにいらっしゃる方も、男性は自然妊娠への気持ちが強い印象です。万が一不妊の原因が自分にあると女性以上に傷ついてしまう恐れもあるので、まずは抵抗感を和らげるのが第一歩。
そこで私は、「“不妊治療”という言葉を使わず、“妊活”の方法を知るための来院だとパートナーに伝えて連れてきてください」とアドバイスしています。
性交をもつベストなタイミングや、今後の妊活のステップアップをお伝えする中で、男性不妊や検査について段階的に説明すると意欲を見せてくださるケースがほとんど。

吉田 不妊治療の“不”って文字がマイナスなイメージを持たせる気がします。まとめて“妊活”と呼ぶといいですね!

岡田 さらに東京都では、夫婦で一緒に検査結果を提出すると上限5万円の助成金を出す事業が行われています。金銭的なメリットも検査に誘うきっかけにできますね。

不妊症の知識をつけて自分の身体を知ることから始めよう!


吉田 たぶんみんな、結婚生活を何年か送ってから妊活を始めたり、“年齢的にそろそろやばいかも?”と思って病院に行くパターンが多いと思います。でも今回のテーマについて知識があれば行動は変わってくるはず。

岡田 不妊予防をサポートする医師の立場からすると、「あと2年早く来院してくれたら、もっと妊娠の可能性が広がったのに…」と思わずにはいられないときがあります。少しでも気になることがあれば婦人科にぜひ相談していただきたいです。

吉田 男女ともに自分の身体を知ることが大事だと改めて感じました。不妊症になる前にできること、もっと教えてください!

Photo:Hanamura Katsuhiko
Text:Iida Honoka
Composition:Suemura Mana