伊藤千晃 × 生理
女性のカラダにとって、生理はとても大切なこと。少しでも快適に、ストレスなく過ごせたら。
「女性の生理」と真剣に向き合うアーティスト・伊藤千晃さんからのメッセージは、読者へのラブレターです。
1987年1月10日、愛知県出身。2005年、音楽グループ・AAAのメンバーとしてデビュー。美容やファッションなど多彩な才能を発揮し、同世代の女性を中心に高い支持を集める。2017年にグループを卒業。結婚、出産を経て、2018年にソロ活動を開始。アーティスト、モデル、タレントとして幅広く活躍している。
私が、ただ弱いだけ。生理中は我慢ばかりしていた
自らの出産を機に、女性のカラダについて学び、発信し続けている歌手・タレントの伊藤千晃さん。「自分を大切にすることで、巡り巡って人を大切にできる」と語るその真意とは?
最初に〝フェムテック〟という言葉を聞いた時は、単純に「何だろう?」って興味が湧きました。なんとなく女性のためになるのだろうと思って調べていくと、生理とか妊娠とか更年期とか、自分に関わってくることばかり。出産を経験していたこともあって、ホルモンバランスが身体にも心にも大きな影響を与えることを知った時には、当てはまることだらけで、「だからだったのか」と本当に驚きました。
私自身、生理の周期は安定していて、経血そのものもそれほど多くない方だと思います。それでもグループ時代、生理中にライブなどでステージに立つ時には「ナプキンがズレてしまったら?」「衣装を経血で汚してしまったら?」と常に不安でいっぱいでした。どんなにお腹が痛くても、薬によっては喉が乾燥してしまうので、とにかく我慢が当たり前。生理中はすごく精神的にストレスが溜まりましたが、その頃は低用量ピルというものがあることも知らなかったし、吸水パンツもありませんでした。今のように色々と選択肢があったら、もっと快適に過ごせたのにと思いますね。
生理前で気分が落ち込んでもいつもの私ね、と受け入れられる
自分の生理周期やタイプを知ると、もっと生きやすくなる
生理中と同様にツラかったのがPMS。といっても、20代の頃はPMSだとは気づかなかったのですが、とにかく気分が落ち込んで「全然できてない、自分はダメだ」とパフォーマンスに自信が持てなくなる時期があって。
その落ち込みの原因がわかったのは、出産後に生理周期をつけるアプリで、気分のマークをつけるようになってから。面白いくらいに、毎回生理のぴったり1週間前に〝落ち込み〟マークをつけていたんです。子育てに自信がなくなっていたのも、まさにその時期でした。
「あの落ち込みはPMSだったんだ」とわかったら、落ち込みの波が来ても「はいはい、この私ね」って思えるように(笑)。もちろん、落ち込むのは落ち込むんですけど、「今のこの私は放っておけばすぐによくなる」って思えたら、気分がとてもラクになりましたね。生理周期を把握することは、自分が生きやすくなることにもつながります。今は自己アピール、自己プロデュースの時代。それには、まず自分を知らなくては。この時期に体調を崩しやすい、精神的に落ち込みやすいと自己分析できていたら、その時期を避けて、重要な決断や人と会うタイミングを設定すればいいだけ。もっと自分がラクに生きられるようになるため、自分と向き合うための方法のひとつとしてアプリは絶対にオススメですね。
自分の生理やセックスについてもっと会話しよう
最近のフェムテックの盛り上がりを感じて思うのは、男性にも生理やセックスの話を避けないでほしいということ。なんとなく話しづらい気持ちはわかりますが、最終的にその行為に行き着くのであれば、会話なくしてそれを愛情深いものにしていくことは難しい。最初は恋からの盛り上がりで「カラダの相性がよかった」だけで解決できたとしても、大切なパートナーとして過ごしていきたいと思った時、会話を交わさず、出会った頃と変わらずに居続けることはできないと思います。だからこそ、生理やセックスのことにきちんと向き合い、話し合える環境をつくってほしいし、「話し合うことはいいこと」という感覚を両者とも持っていてほしい。男性も「むしろ知りたいよ、だって愛する君のことだもん」と、できること、すべきことを女性と一緒に探っていってほしいですね。
自分のこと、自分のカラダを誰よりも愛してあげること。それが大切な人を大切にできることにつながるから
「自分の健康を知る」ことをもっと当たり前の社会に
先日ハワイに行った時に、そこに住む女性たちにフェムテックについて聞いてみたんです。でも、その言葉自体を知っている方はほとんどいなくて。ただ、私が「フェムテックってこういうものだよ」と伝えると、皆さん口々に「それってウェルネスのこと? 自分の心と向き合うこと? それならやってる」と。彼女たちにとって「自分のことを知ることは当たり前のこと」という感覚。フェムテックというカテゴリーにおさめるまでもなく、自分の心や身体に向き合うことは日常だったんです。
対して日本の場合、「フェムテックって大事だよ、みんな関心持って!」って声を大にして言わないと、なかなか自分の健康問題に目を向けられない女性が多いという印象。周りの目を気にしたり、周りに気を使ったりして。それが日本人のよさでもあるのですが、つい自分のことを後回しにしちゃう女性がとても多いんですよね。確かに、私も母親から「他の人に迷惑をかけないようにしなさい」とか「自分がされてイヤなことは他人にしちゃいけない」という教育は受けてきたけど、「何よりもまずは自分を大切にしなさい」なんて、あまり言われたことがなかった。でも今はその頃とは違って、もっと自分を慈しんでいい時代。自分を大切にすることで、大切な人に優しくなれるし、それが回り回って「周囲を幸せにできる自分になれる」。だからまずは、女性みんなが自分に優しくなってほしいし、それが当たり前という社会になってほしいですね。フェムテックは新しすぎて、まだまだ勉強中の身。でも、支えてくれたファンの方々を含めた女性に、今の私が返せることがあるなら、これからもどんどん発信していきたいですね。
最近は吸水ショーツがお気に入り。漏れないし、思った以上ににおわないし、ゴミも出ないし。唯一の手間が洗わなきゃいけないこと。でもその時間も実は嫌いじゃなくて。手で洗っていると自分のことを「愛おしい」と思う瞬間があるんです。私の身体、頑張っているんだなって。ショーツを洗う時間は、自分に優しくなれる時間でもあるから、全然負担にならないんです。