前回の記事で、妊娠は歳を重ねるほど可能性が下がるということが分かりました。
でも仕事やパートナー探しの関係で、ベストなタイミングでみんなが妊娠できるとは限りません。

そんな時に私たちができることはあるのでしょうか?
産婦人科医・岡田先生に有効な手段「プレコンセプションケア」と「卵子凍結」について教えてもらいました。

前編:「あと2年早く来院してくれていたら…」を防ぎたい!不妊症と妊活について知ろう

女性やカップルが健康に向き合うプレコンセプションケア

左岡田有香先生、右吉田怜香さん

吉田 みんながみんな20代で子供を産める社会じゃないからこそ、将来のためにやっておくべきケアはありますか?

岡田 カップルはもちろん未婚の方にも推奨されているのがプレコンセプションケアです。
これは産婦人科に来ていただき、検診から性感染症予防、栄養や運動などの生活指導などを行うヘルスケアの一環です。

吉田 ブライダルチェックに似ていますね。私は結婚前にやったんですけど、たしかAMH検査をした記憶が…。

岡田 まさにそうです!卵子の在庫数を採血で知ることができるAMH検査は、今後のライフプランを組む材料として受けていただきたい検査のひとつ。吉田さんはなぜ受けようと思ったのですか?

吉田 当時は子供がほしいとか考えていなかったけど、雑誌かなにかで見つけて“自分の身体のこと把握しておきたいな~”と思ったのがきっかけです。
夫には精子の動きを観察できるキット(テンガ メンズ ルーペ)をアマゾンで買って、興味本位でやってもらいました(笑)。スマホで精子が動いているのを見ることができて新鮮でした!

岡田 素晴らしい!ご夫婦でプレコンセプションケアをされていたんですね。実は10代から対象となっているケアなので、早くから健康意識を持っていただくことをおすすめします。


年齢別にどんなプレコンセプションケアをすればいい?

「もっと婦人科に行こう」と決意する吉田さん

10代
・生理がきたら産婦人科を受診
生理の状態や性感染症をチェック。また将来必要となる女性の身体の知識を教えてもらう。

20代
・かかりつけの産婦人科を作る
生理不順や子宮・卵巣の病気など、自覚症状のない問題を早期に発見できるように年1回の受診。
・子宮頸がん検診とエコー検査
子宮頸がん検診は自治体から配布されるクーポンを活用して2年に1回。エコー検査は毎年行い、会社などの健康診断では見つけにくい初期段階の病気を発見。
・AMH検査
血液検査で卵子の在庫数がわかる。25歳以降に1回行い、妊娠できる期間の目安を知る。

30代
・子宮頸がん検診とエコー検査
・AMH検査
100人に2~3人は30代で閉経するため、数年に1度は測定して排卵できる期間や卵子の在庫数を確認。

岡田 アメリカではフェムケアが進んでいて、13~15歳で産婦人科を受診するように勧められています。
特に変わった症状がなくても “相談”という感覚でぜひ気軽にいらしてください。

吉田 小さい頃からかかりつけのある歯科や眼科みたいに、産婦人科も相談しに行っていいんですね。
娘が10代になったら連れて行ってあげたいです!


「いずれ子供がほしい」という人は“卵子凍結”も視野に入れる

卵子凍結という選択肢が身近になってほしいと願う岡田先生

岡田 卵子の老化は止められませんが、若い頃に卵子を凍結保存することで将来の妊娠に備えることができます。
妊娠する時期が決まったら、凍結していた卵子とパートナーの精子を合わせた受精卵として子宮に移植する治療です。

吉田 何年前からある方法なんですか?

岡田 40~50年前です。もともとがんの治療で生殖機能が失われてしまう場合に卵子を事前に保存しておく目的で行われていました。

吉田 患者さんにとって希望の治療なんですね。でも、いざ卵子を解凍しても妊娠できるかどうかはわからないですよね…?

岡田 男性側の精子の状態にもよりますので100%妊娠できるとは言い切れません。ただ、30代前半で20個ほどの卵子をとっておくと、約90%の出産の可能性が残されるというデータがあります。将来お子さんが持てない可能性を出来るだけ下げるためには有効な方法と言えます。もちろん、妊娠する年齢も早いほど出産時の母体へのリスクは下がりますので、出産を先延ばしにすることは良いことだけではありません。45歳未満で凍結していた卵子を使用することが推奨されています。


出産率を上げるのは“卵子の年齢”

年齢によって出産率が異なると知り、驚く吉田さん

吉田 やっぱり凍結する卵子も若いほうがよさそうですね。

岡田 そうですね。40代前半で体外受精をする場合、平均28歳に凍結した若い卵子で行うと出産率をある程度維持できます。
凍結は卵子が老化する前の35歳以下が理想ですね。

吉田 凍結するかどうかを決める判断材料はありますか?

岡田 ライフプランが大きな決め手だと思います。
30代前半で子供1人を望んでいる夫婦にはあまり必要ないですよね。
でも30代でパートナーを探し中だけど子供は2人ほしいという人は、将来子供を持てないリスクを低減するために卵子凍結の選択肢もありです。32歳で1人目を出産したけど、2人目以降で凍結しておいた卵子で妊娠するという人もいらっしゃいます。

吉田 たしかに子供を産むとセックスレスになる人も多いと聞くから、次の妊娠に備えるのも賢い使い方ですね。


卵子凍結の流れ

花村克彦さん撮影

岡田 卵子凍結は不妊治療の体外受精と同じようなスケジュールです。

吉田 生理周期で受診するのは大変そう…。

岡田 そうですね。生理が始まってから採卵まで約2週間の間に3~4回の受診が必要なので、仕事などの時間を調整していただく可能性があります。

▶採卵の3ステップ
1卵子の入っている卵胞を育てる準備
生理がきて2~4日目の間にクリニックへ。ホルモン値の採血とエコー検査を行い、問題なければこの日から卵胞を育てる飲み薬と自己注射がスタート。

2卵胞の育ち具合をチェック
1週間後にクリニックへ。ホルモン値の採血とエコー検査を行い、卵胞の数や大きさをチェックして採卵の日を決める。※成長具合は個人差があるため再度受診が必要な場合もある。

3採卵
採卵する36時間前に卵を成熟させるための自己注射と点鼻薬を投与。これを前々日の21~23時に行い、2日後の午前中にクリニックにて採卵するパターンが一般的。


卵子凍結の費用

岡田 当クリニックでは卵子凍結が440,000円で、採卵するための服薬や注射、受診などの費用が含まれています。
グレイスバンクでの冷凍した卵子の保管料は年間49,500円(卵子の数は最大15個)です。

吉田 不妊治療した場合を考えると高くはない気がします。

岡田 体外受精は保険適用されて約200,000円が相場です。30代後半で体外受精を行った場合、妊娠に至るまで平均6回とされているので合計1200,000円が見積されます。
ただ、卵子凍結も1回で目指した数が採取できない場合、追加で行うとその分の費用が上乗せされることに。
できるだけ高額にならないためには、やはり早期のプレコンセプションケアが重要になってきます。


受精卵凍結はさらに出産率が上がる

岡田 すでにパートナーがいるけど妊娠はもう少し先にしたいという方は、精子を合わせた受精卵にして凍結することもできます。
これは卵子だけを凍結するより出産確率が高まるので夫婦におすすめですが、受精卵1個につき保管料は1~3万かかるなど費用の負担も大きくなります。
2人でライフプランをしっかり話し合って決めてください。


産婦人科は女性が安心できる場所

同世代と発覚し、話の盛り上がる岡田先生と吉田さん

吉田 卵子凍結は不妊のリスクを減らすひとつの方法であり、女性にとって必要な情報だと思いました。
後悔しない人生を送るためにもフェムケアは意識しておきたいです。

岡田 クリニックには30代前半の女性が多く来院されますが、10代の方もお母さんと一緒にいらっしゃるんですよ。

吉田 病院に行くのは緊張する人もいると思うので、岡田先生に「少しでも気になることがあれば、病院に来て大丈夫」と言っていただけたのはすごく安心しました。
卵子の重要性は学校の性教育でもっと教えるべきですよ!

岡田 その通りだと思います。産婦人科医は卵巣や子宮のスペシャリストであり、女性に寄り添う立場です。定期的なヘルスチェックを兼ねていつもでいらしてくださいね!

Photo:Hanamura Katsuhiko
Text:Iida Honoka
Composition:Suemura Mana